東京23区の保育園の入りにくさの実態を調べました(写真:ほんかお/PIXTA)

東京23区の待機児童数は2018年に3352人だったが、2022年は昨年比256人減って、32人と大幅に減少した(東京都福祉保健局調べ)。

ただし、行政が発表する待機児童数は鵜呑みにはできない。認可保育園に申し込んだ児童が認可に入れなくても、認可外保育園に入れていれば待機児童にはカウントされないからだ。

それに加えて、自宅から遠い認可・認可外園を自治体から勧められ、それを断ると「特定の保育所等を希望している児童」に分類され、この場合も待機児童にカウントされない。つまり、全員が認可保育園に入れるようになったわけではないのだ。

こういったノーカウント待機児童が量産され、待機児童ゼロを宣言している自治体が23区中18と大半を占めた。

「認可保育園倍率」を調査

また、区単位で見た場合と自分が住んでいる駅単位で見た場合とでは、事情が異なることも多い。そこで、筆者が代表を務めるマンション情報サイト「住まいサーフィン」では、昨年に続いて「駅単位で見た保育園への入りにくさ」のランキングを作成した。

「住まいサーフィン」では独自に「認可保育園倍率」という指標を設定。これは「各駅の0歳児人口」を「各駅の認可保育所の0歳児定員」で割って算出している。

保育園には認可と認可外があるが、行政が決めた基準にのっとり運営されている認可を望む人が多いので、ここでは認可保育園に絞っている。

本稿では23区のワーストランキングのみを公表しているが、「住まいサーフィン」では調査を行った23区内400駅の全データを公開しているので、そちらも参考にしていただきたい。

まずは、区ごとの数字を確認しておこう。各駅を区単位で集計して、認可保育園倍率を算出している。


倍率が最も悪いのは断トツで江戸川区であり、8.01倍にも及ぶ。都区部平均は3.44倍なので、その高さがうかがえる。

また、このランキングでワースト5に入った大田区・台東区・江東区・足立区は2022年に「待機児童人数1桁」となっており、行政発表のイメージとはかなり異なることがわかる。

一方、「子どもを保育園に入れやすい区」の1位は千代田区で、倍率は2.38倍となる。東京23区では、区によって若干ばらつきはあるが、小学校入学前の児童の約50%が保育園に入園する。逆にいえば、小学校前の児童の半数が保育園入園を希望しないため、千代田区の実質的な倍率はその半分の1.2倍程度となる。つまり、希望すれば認可保育園に8割ほどが入れる状況にあり、認可外まで含めると全員入れると考えられる。

ただし、それよりも重要なのは「最寄り駅」まで落とし込んで見た場合の実情だ。


ワースト1位は、江戸川区の篠崎駅で、0歳児人口は450人と都区部有数の需要があるにもかかわらず、0歳児定員は35人と少ない。結果として、認可保育園倍率は約12倍となり、東京23区で「保活最難関」の駅となった。

ファミリー層に選ばれやすく激戦区に

ワースト1位から4位までの駅(篠崎・西葛西・一之江・平井駅)はすべて江戸川区に位置している。江戸川区は都心へのアクセスが良好なわりに家賃相場が比較的落ち着いているため、3LDKなど広めの物件を好むファミリー層に選ばれやすい。その結果、保活激戦区の駅が多発しているようだ。

江戸川区はワースト15駅に7駅がランクインしており、どの駅でも認可保育園倍率は高い。独自の保育ママ制度で0歳児保育をサポートしているが、区全体の保育ママ定員は270人で、同区の推計0歳人口の4619人に対して絶対的に足らないので、十分に機能しているとは言いがたい。

ワースト2位の大田区もワースト15駅に4駅(矢口渡・池上・大森町・雑色)が入っている。このほか、世田谷区の成城学園前駅や足立区の竹ノ塚駅など、外周部のファミリー居住地で倍率が高い。中央区や江東区などのマンション建設で急増した駅も注意が必要だ。駅単位に確認することを推奨しておきたい。

ランキングデータ作成方法に関する補足説明

・2022年10月時点各行政区により公表されていた最新データを基に作成しており、 2022年11月現在の速報版となります。
・町丁目ごとの0歳児人口は、 各区役所が上記時点で公表している最新データを利用しています。
・一部、町丁目ごとの0歳児人口を公表していない自治体については、 行政区単位の0歳児人口の合計を町丁目ごとの0歳児を含む年齢別人口の値を基に按分推計し算出しています。
・駅単位の集計に関しては、 当社が独自に定めた駅(実質同一駅を一つにしたもの)を起点に垂直二等分線で各駅間を分割し生成した駅の最寄りとなるエリアごとに0歳児定員、 ならびに0歳児人口を集計し、 各指標を計算しています。
・今後新設予定の保育園情報も一部含まれます。
・認可保育園ならびに区が定める基準を満たす保育サービスを提供し、 専用施設を有する認定こども園、 独自基準施設、 地域型保育事業なども調査対象に含めています。
・各保育施設の0歳児定員については区が公表する数値がある場合はそれらを利用しておりますが、 一部未公表の施設などは当社が独自に調査したものが含まれています。
・東京23区「0歳児が保育園に入りにくい」駅ランキングは、定員超過数200人以上の駅に限定し集計しています。

*調査結果の詳細はこちら

(沖 有人 : 不動産コンサルタント)