「チアノーゼ(皮膚が暗い紫色)」になる原因はご存知ですか?医師が監修!

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チアノーゼは、皮膚や粘膜が暗い紫色のようになる症状です。見た目ですぐに分かるため、あらわれた際には落ち着いて対処することが大切です。

しかし、具体的な症状やチアノーゼを起こす病気などを知らない方も多いでしょう。そこで本記事では、チアノーゼの症状・原因についてご紹介します。

あらわれやすい部位や乳幼児・高齢者別の対処法も紹介するので参考にしてください。

チアノーゼの症状・原因

チアノーゼとはどんな症状ですか?

チアノーゼとは、血液中の酸素の量が不足することで発症する症状です。内容としては、皮膚や粘膜が暗い青紫色に変化するようになります。このように皮膚が変色する理由としては、血液中の酸素還元ヘモグロビンが大きく関係します。
血液中の酸素が少なくなると、酸素と結合するはずであった還元ヘモグロビンという物質が増加するのです。この還元ヘモグロビンの濃度が5g/dl以上になることで、皮膚が変色します。
また、メトヘモグロビン血症も大きく関係しており、メトヘモグロビン濃度が15%~20%以上に増加するとチアノーゼが生じます。

チアノーゼを観察しやすい部位はどこですか?

チアノーゼを観察しやすい部位としては、次のようなものが代表的です。

口の中の粘膜

鼻先

耳たぶ

指先

爪の下

さまざまな場所で変色がみられますが、これらの部位が観察しやすい理由は、毛細血管が大きく関係します。毛細血管が非常に多く張り巡らされている状態なので、変色がはっきりとあらわれやすいのです。
また、皮膚の薄さも関係します。上記の部位は、皮膚が比較的薄いです。メラニン色素も少ないため、チアノーゼを観察しやすいのです。

チアノーゼは何が原因ですか?

この症状は大きく3種類に分けられ、それぞれ原因は異なります。

中枢性チアノーゼ

末梢性チアノーゼ

血液性チアノーゼ

中枢性チアノーゼでは、症状が顔の中央部分・体幹・全身の皮膚・粘膜にあらわれます。その原因は、ひきつけ・気道に異物が詰まる・間質性肺炎といった呼吸機能の障害です。
また、三尖弁閉鎖・肺動脈閉鎖などの生まれつきにもっている心臓病なども原因となり、引き起こされるケースがあります。標高の高い山に登山をした場合に、酸素が少ない環境でも発症する可能性があります。末梢性チアノーゼとは、爪・指・鼻先などの末端部分に発症するタイプです。
動脈や静脈がふさがることで、末端への血流速度低下・血液循環量の減少によって引き起こされます。低血糖・赤血球増多症・静脈瘤・寒い環境にさらされたことなどが主な原因です。 血液性チアノーゼとは、ヘモグロビンの異常によって発症します。通常、血液中のヘモグロビンは酸素を運搬する役割を担っています。しかし、メトヘモグロビン血症と呼ばれる、酸素を運ばないメトヘモグロビンが増える病気を発症すると血液中の酸素が減少してしまうのです。その結果、皮膚の変色を引き起こします。

チアノーゼが起こりやすい病気を教えてください。

この症状が起こりやすい病気としては、次のようなものが挙げられます。

動脈硬化

静脈瘤

肺塞栓

肺炎

敗血症

無気肺

動脈硬化とは、加齢などによって動脈の血管が硬くなり弾力が失われることで血管が詰まりやすくなる病気です。静脈瘤とは、脚の血液が正しく心臓に送り返されず、静脈に拡張が起きる病気です。
肺塞栓とは、血液によって血栓などの異物が肺動脈まで運ばれ塞いでしまう病気で、胸の痛みや突然の息切れを引き起こします。肺炎は、細菌やウイルスなどによって肺胞に炎症が起きる病気です。
重度の場合には、さらにチアノーゼのリスクが高くなります。敗血症とは、細菌あるいは細菌が作り出した毒素が血液に混ざり、全身に広がってしまうことで起きる病気です。全身のあらゆる箇所で反応することがあり、臓器障害などを引き起こす可能性があります。無気肺とは、気管支の閉塞などにより胸の一部や全体に空気がない状態となる病気です。
また、病気ではありませんが、幼児にみられる泣き入りひきつけなどもチアノーゼを起こしやすいといわれています。

チアノーゼの対処・治療方法

チアノーゼがあらわれたときの対処方法を知りたいです。

症状があらわれた際には、次のような対処をとりましょう。

患部の保温

安静にする

酸素吸入

体温の低下に伴うチアノーゼの場合は、身体全体・患部を温めることが大切です。身体全体の血流を良くする目的があります。同時に、マッサージや手足をお湯で温めるなども効果が得られるでしょう。次に身体を落ち着かせて安静にしましょう。
身体を折り畳むようにし膝を胸につける体位をとると良いです。これにより、上半身への血流を改善させることができます。また、安静にする際には衣服や布団などによる圧迫がないようにすることも重要です。酸素吸入も効果的な対処方法のひとつです。血中酸素飽和度が上昇し、症状が改善します。

チアノーゼではどんな検査を行いますか?

主な検査方法としては、次のようなものが挙げられます。

血液検査

レントゲン検査

CT検査

超音波検査

血液検査は、血中酸素濃度を測るための方法です。チアノーゼの原因となる病気を特定するためにも必要な検査です。また、レントゲン検査CT検査も、チアノーゼの原因疾患を特定するために行います。
中でも心臓・肺の病気によって引き起こされている可能性が考えられるため、これらの病気の特定に役立つのです。超音波検査も、病気の特定目的のために行います。

チアノーゼはどのように治療しますか?

治療方法は、まず原因疾患に対しての治療を行います。気道が狭まるような病気に関連してチアノーゼが行っている場合には、気道の確保を行い酸素投与を行うといった治療です。
また、心臓疾患などによる症状の場合であれば、心臓疾患改善を行うための投薬などを行って治療します。チアノーゼは、さまざまな病気によって起こる可能性がある症状です。そのため、治療は酸素投与などによる症状を緩和するための対応を行いながら、同時に原因疾患に合わせた治療を行います。

乳幼児と高齢者のチアノーゼ

乳幼児のチアノーゼはどう対処すべきですか?

乳幼児の時期には、チアノーゼがあらわれやすい傾向があります。特に乳幼児特有の原因として、泣き入りひきつけによって発症する可能性があるのです。対処法としては、すぐに救急車を呼びましょう。
上手く呼吸を行えていない可能性があり、大変危険です。また、他の疾患によってチアノーゼを引き起こしている場合も同様です。焦らず救急車を呼んで、医師の指示に従って正しい対応を行いましょう。

高齢者のチアノーゼはどう対処すべきですか?

高齢者の方が発症した場合にも、症状の出現経過などによって救急車を呼ぶ必要があるでしょう。高齢の場合には、何かしらの原因疾患によってチアノーゼを発症している可能性もありますが、食事中の誤嚥などが原因となっているケースもあります。
その場合、呼吸ができずに顔面や唇が変色している可能性があるのです。その状態が続けば大変危険です。最悪の場合、命にかかわる可能性もあるため、救急車を呼んで医師の指示に従って対応しましょう。もちろん、病気によって症状があらわれている場合でも、先述した対処法を行いながら、医師の指示に従って対応することが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

チアノーゼは、顔面や唇の色が変色する症状です。酸素が足りない状況で起こることもあるため、酸素吸入や保温などで解決が図れます。そのため、比較的軽度な症状であると思われることも少なくありません。
しかし、乳幼児や高齢者の方の場合、呼吸ができずに発症しているケースもあります。生まれつきの病気や持病の可能性もありますが、最悪の場合は命に関わることもあるため、救急車を呼んで対処した方が良いでしょう。
決して甘くみて良い症状ではないため、正しく症状や原因を理解して対処ができるようにしましょう。

編集部まとめ


チアノーゼとは、原因疾患によって発症したり、環境の影響で酸素濃度が低下することで発症したりする症状です。

顔面・唇・末端部分など、明らかな変色がみられるため比較的気づきやすいといえます。しかし、病気が背景に隠れている可能性があるため甘くみて良い症状ではありません。

万が一、自分や家族に異変を感じた場合には自己判断での対処だけでなく、すぐに専門の医療機関に相談して治療を受けましょう。

参考文献

チアノーゼについて