イーロン・マスク氏による買収を受けてTwitterが混乱している中、Instagramを所有するMetaが「ネクストTwitter」の構築についてブレインストーミングを行っていたと、海外メディアのニューヨーク・タイムズが報じました。Meta以外にもMastodonやTumblrなどの競合サービスがシェア獲得の機会をうかがっているほか、Hive SocialやPost.といった新興企業も登場しています。

Twitter’s Rivals, Including Meta, Try to Capitalize on Musk-Induced Chaos - The New York Times

https://www.nytimes.com/2022/12/07/technology/twitter-rivals-alternative-platforms.html

ニューヨーク・タイムズによると、Twitter買収直後の2022年11月に、Metaの従業員らが「ネクストTwitter」の構築についてオンラインで議論していたことが分かったとのこと。ニューヨーク・タイムズが閲覧した会議の投稿には、Instagramでフォロワーや友人と短いメッセージをシェアする「Instagram Notes」という機能の展開や、Instagramのテクノロジーを利用したテキストベースの新アプリの開発、Instagramに新たなテキスト用フィードを加えるといった提案がありました。また、「Realtime」「Real Reels」「Instant」など、新機能の名前についても候補が挙がっていたそうです。

ブレインストーミングに参加したある従業員は、「Twitterは危機に瀕しており、Metaはその勢力を奪い返す必要があります」「Twitterの飯の種を奪いに行きましょう」と投稿していたと、ニューヨーク・タイムズは報じています。



マスク氏がTwitterを買収して以来、大量の人員解雇や凍結されていたアカウントの復活などの改革が行われ、一部の著名人はTwitterから離れることを明らかにしています。

そんな中でTwitterの代替として注目を集めたのが、分散型ソーシャルネットワークサービスのMastodonです。マスク氏の買収から1週間でユーザー数が23万人も増加し、2022年11月7日には月間アクティブユーザーが100万人を突破したことが報じられています。

Twitterでイーロン・マスクによる改革が進む中、Mastodonの月間アクティブユーザー数が100万人に到達 - GIGAZINE



2016年に設立されたMastodonはTwitterと同様に短文投稿型のSNSですが、サーバーは誰でも自由に運用することが可能であり、独立して運営される複数のサーバーが存在するという点で異なります。そのため、ネットワーク全体に適用される利用規約は存在せず、個々のサーバーごとに規約が設定されています。

また、2019年に登場したマイクロブログサービスのHive Socialも、マスク氏のTwitter買収後にユーザー数が2倍の180万人に達したとのこと。創設者であるRaluca Pop氏によると、K-POPやスターウォーズなどのファンコミュニティがTwitterから移住してきたことが、ユーザー数の急増につながったそうです。

しかし、Hive SocialはPop氏の個人ローンや個人投資家から調達した2万5000ドル(約340万円)、クラウドファンディングで調達した30万ドル(約4000万円)の資金でやりくりされており、従業員はわずか4人だとのこと。そのため、Hive Socialではユーザー名の重複やNSFWコンテンツにフラグを立てないユーザーの増加といった問題に直面し、12月にはセキュリティ問題を解決するためにサーバーを一時的にシャットダウンする事態になってしまいました。

Pop氏は、マスク氏の下でTwitterが変革を遂げると共に、多くのユーザーがHive Socialに目を向けていると指摘。今後はさらに多くのモデレーターとエンジニアを雇うことを計画しているとのことです。

さらに、2007年にサービスを開始したミニブログサービス・Tumblrも、マスク氏によるTwitter買収から1週間後に「Tumblrに参加するべき理由」について述べたスレッドをTwitterに投稿し、積極的なユーザー獲得に乗り出しています。



App StoreにおけるTumblrアプリのダウンロード数は、マスク氏がTwitterを買収した翌週に62%も増加したとのこと。また、Tumblrを運営するAutomatticは、Twitterから解雇された従業員をターゲットにした求人も行っています。

Twitterの混乱に乗じているのは既存のSNSだけでなく、新たに登場したSNSも存在感を強めています。ナビゲーションアプリ・Wazeの元CEOであるNoam Bardin氏は、11月14日に「Post.」という新たなソーシャルプラットフォームを立ち上げました。Post.はサービス立ち上げ直後にもかかわらず順番待ちリストに35万人が並んでおり、12月6日の時点で6万7000件のアカウントがアクティブになっているとのこと。

また、2014年〜2016年にTwitterのプロダクトマネージャーを務めていたGabor Cselle氏は、「T2」というシンプルなTwitterの代替プラットフォームを作成しました。記事作成時点のT2はまだプロトタイプであり、実際にサービスをリリースするには資金が足りない状況ですが、多くの元Twitter従業員がSlackチャネルに参加して支援しているとのこと。Cselle氏は、「私は確立された280文字のフォーマットから大きく逸脱するつもりはありません。それ以上のものは不必要に見えます」と述べています。

ニューヨーク大学の経営学教授でPost.への資金提供者でもあるScott Galloway氏は、「Twitterを取り巻く有害な環境と新オーナーの行動から、私は異なるビジネスモデルを持つマイクロブログプラットフォームに大きなチャンスがあると考えています。今、ソーシャルメディアプラットフォームには多くのチャンスがあり、人々はそれを感じ取っているのです」と述べました。