海外FA権を行使したソフトバンク・千賀滉大【写真:藤浦一都】

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代理人ウルフ氏「お金ではなく今勝てるチームを最重要ポイントに」

 ソフトバンクから海外FAでメジャー入りを目指す千賀滉大投手の代理人を務めるジョエル・ウルフ氏が6日(日本時間7日)、カリフォルニア州サンディエゴで開催されているウインター・ミーティングで日本メディアに対応。「8日間の滞在中に6、7都市を訪れ監督やGM、投手コーチ、動作解析担当者とも面談し多くの質問をした。お金ではなく今勝てるチームを最重要ポイントに置いている」と述べた。【サンディエゴ=木崎英夫】

 ウルフ氏によると、千賀にはこれまでに6〜12球団が獲得に興味を示し、その中の数球団の本拠地を訪問して施設を見学している。すでに5、6年の長期契約をオファーする球団もあり「移籍先は今週中にまとまるとは思わないが、年内に決まる可能性はある。交渉期限が決められたポスティング制度を利用するわけではなくFAだ。時間はある」と話し、千賀が望む長期契約でじっくりと腰を下ろして野球に専念できる“ホーム”を探し出すことへの自信をのぞかせた。

 ウルフ氏は、代理人を務めるパドレスのダルビッシュ有投手と千賀がサンディエゴで会い、住環境を含めたいくつものアドバイスを受けたことを明かしたが、千賀の希望する項目の中には「自身を向上させてくれるような好投手がいること」があり、動作解析や生体力学といった科学的な根拠からのトレーニング法はさることながら、相手打者の独自データ収集法を確立したダルビッシュは千賀にとってこの上ない心強い存在になる。

 今季、ダルビッシュは、2012年のメジャーデビュー以来となる16勝を挙げていているが、相手打者攻略の虎の巻を作り上げたことがその背景にあり、「99%の人は感覚や(チームの)スカウティングレポートを見て投げているだけ」と言い切っている。独自データを入力したiPadを携えて聖子夫人との外食に出かける徹底ぶりだった。

ダルビッシュに加え、元同僚のマルティネス、スアレスの存在も心強い

 パドレスが千賀にフィットすることを力説するのが、スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」でパドレスを担当するデニス・リン記者だ。11月の半ばに千賀がパドレスの球団関係者と面談したことをいち早くツイート。彼に今後に向けた見解を聞いた。

「パドレスが先発投手の補強を考えているのは確かです。その筆頭候補かどうかは明言できませんが、関係者の話から千賀が候補に入っていることは間違いありません」

 さらに、ソフトバンクでチームメートだったニック・マルティネス投手を引き合いに出した。

「彼は先発投手としての千賀の凄さを十分に知っています。でももし、千賀が先発で苦しんだ場合には、中継ぎの重要な役割もこなせると太鼓判を押しています。マルティネスはメルビン監督の意向でシーズン序盤からブルペンに回りました。お手本となる投手がいることは大きいと思いますし、千賀の能力が十分に発揮できる受け皿がこのチームには準備できているんです」

 ソフトバンクから今季にパドレスに移籍したマルティネスは、メルビン監督が勝利の方程式に組み入れる安定感を誇った。夏場には史上初となる「10先発&4ホールド&8セーブ」を記録。まさに大車輪の活躍で、24年ぶりのリーグ優勝決定シリーズ進出に貢献している。そしてリン記者は、日本で3年間同僚だったロベルト・スアレス投手の存在も付言した。

 ウルフ代理人は、千賀が訪れたチームはノーコメントとしたが、後に行われた監督会見でメッツのショーウォルター監督が球団関係者とともに千賀と会ったことを公にするハプニングが起きた。メッツは、ウインター・ミーティングが始まった5日(同6日)に、自身3度目のサイ・ヤング賞を獲得したジャスティン・バーランダー投手を獲得。千賀は「サイ・ヤング賞&世界一」を目標とするだけに、今季のワールドシリーズでアストロズの優勝を支えた右腕の加入は、千賀にとって魅力的なことであろう。

 今オフのFA市場の超目玉だった、バーランダーとデグロムの2大先発投手が早々に移籍先を決めたことで「センガ獲りへチームの興味度のペースが加速するのは必至」とウルフ氏は見ている。

 近々に再渡米を予定する千賀滉大のメジャー移籍には、順風が吹いている。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)