これから成長する会社を見抜く目を養うには?(写真:metamorworks/PIXTA)

日本で上場する全企業の情報を網羅する投資情報誌『会社四季報』(以下、四季報)。2000ページを優に超える辞書以上の重量感に、“わかる人にしか読みこなせないのでは?”と感じる人もいるだろう。

しかし、「四季報は正しい読み方さえ理解すれば、誰にでも読める『宝の書』」と語るのは、累計100冊の四季報完全読破を遂げた「会社四季報の達人」、渡部清二氏。

同氏による最新刊、『会社四季報の達人が全力で選んだ 10倍・100倍になる! 超優良株ベスト30』から有力銘柄に共通するキーワードの新法則をご紹介する。

※本記事は投資による利益を保証するものではありません。投資に関する最終決定はご自身の判断で行ってください。

こんなキーワードが含まれている銘柄は大化けする!

皆さんは、会社四季報の実際の誌面をご覧になったことがあるでしょうか?

四季報は1ページにつき、2社分の業績・展望などに関する情報が掲載されています。会社ごとに区切られた四角い枠の中に、数値と文字、両方の情報がぎっしりと並んでいます。


(出所)『会社四季報の達人が全力で選んだ 10倍・100倍になる! 超優良株ベスト30』

その中には12個の要素が入っています。この部分は、A〜Nのブロックに分けることができます。私はよくセミナーなどで、これを「幕の内弁当」に例えてご説明します。

なぜなら、いろいろな要素がつまっていて、さまざまな方向からその銘柄を見ることができるからです。それでは、どんな言葉が誌面に含まれていれば、大きな成長が期待できる銘柄と言えるのかについて、順にお話ししていきましょう。

まずは、私にとって印象深かった会社プロフィールの例をいくつかご紹介します。

宇野澤組(うのざわぐみ)鐵工所(てっこうしょ)(6396)

●会社プロフィール:

「【特色】工業用ポンプ、送風機中堅。自社開発のドライ式真空ポンプは独占」

◎ここに注目:

「独占」というのはいいワードですね。独占とは、競合がいないということですので、顧客は当該企業から購入するしかなく、また価格競争にもさらされないため、商品やサービスをより高く売ることができます。

寿スピリッツ(2222)

●会社プロフィール:

「【特色】菓子大手。土産やギフト用軸に地域限定菓子製販会社多数」

◎ここに注目!:

地方観光のお土産用の地域限定菓子を製造販売している会社です。空港やデパートの催事場で売っている北海道の洋菓子ルタオ、東京・表参道のフランセ(リブランディング前は「横濱フランセ」)、長崎の九十九島(くじゅうくしま)せんぺいなどもこの会社の商品です。

新型コロナ感染拡大前のインバウンド需要が高かったときに、最安値から約26倍になりました。コロナが収束してインバウンド需要が戻ってきたら、間違いなく再評価されるでしょう。四季報にはその予兆をとらえた前向きなコメントが見られました。

「【回復】新規ブランド投入も継続。コロナ影響弱まり土産求め客数回復基調。(中略)営業益大きく回復」

「【EC】他社サイトでもデジタルギフト強化など需要掘り起こしに力点」

「独占」「大手」は要チェック

これらの例に見るように、まずは「独占」や「大手」という言葉が出てきたら要チェックです。

他にも、「世界首位」「国内首位」「業界首位」「シェア首位」「シェア○割(特に5割以上は注目)」「シェア高い」「独自技術」など、「ナンバー1」、あるいはそれに類する意味合いの言葉もいいですね。他社よりも優位に立っていると言えます。

さらに、「最高益」「大量出店」「躍進」「拡大」「二桁以上の伸び」「回復」などのポジティブなワードからも、会社が発展していく様子がうかがえますよね。そんなビビッとくるキーワードを、四季報の誌面上で難なく見つけられるようになればしめたものです。

四季報の文字情報から今後成長していく会社を見つける方法の1つは、「出現したばかりのポジティブワードに着目する」ということです。まだ多くの人に知られていないタイミングというのが何よりも大事なのです。

そしてもう1つ大切なポイントがあります。それは「これから芽が出そうな会社を見つけ出す」ことです。

株式投資にも通ずる格言に「人の行く裏に道あり花の山」というものがあるのをご存じですか?

現代の日本語で言いかえると「きれいな花を求めて山に行くのなら、誰も行かない裏道を行ったほうがいい」となります。すなわち「他人と同じ道を行く(同じ売買をする)限り、花(利益)は得にくいので、人とは逆の行動をすることが肝要だ」という意味です。

潜在テーマは「少数ワード」に表れる

「人の行く裏の道」という言葉は、人とは違う行動や考え方をするということを言い表しています。そうすることで、今はまだ芽が出ていないけれども、これから大きく発展していく可能性を秘めた会社を見つけることができます。

株式投資では、誰もが知るようになった時点で株価が上がってしまっています。その段階で「今、この会社が人気だから」という理由で投資しても、手遅れになることが多いのです。

多くの人に知られたテーマを「顕在テーマ」と言いますが、テーマが顕在化した時点で、株式市場においては目新しさがなくなっているわけです。

例えば、2022年夏〜秋ごろは「インフレ」が大きな話題となっていました。ニュースを見ても、「政府がガソリン代の一部を負担する」、「小麦価格を〇月まですえ置く方針を固めた」など、関連報道は今でも続いています(2022年10月時点)。つまり、インフレは誰もが知る「一大顕在テーマ」となっているわけですね。

では、このたびの「インフレ」が四季報に最初に登場したのはいつだと思いますか?

もうすっかり「インフレ」という言葉に耳慣れてしまい、ずっと前から言われているような気になっている方も多いと思いますが、実は割と最近で、2021年12月発行の2022年新春号でした。

まずは、簡単なメモから始めよう

潜在テーマを見つけるには「少数ワード」を手がかりにします。では、少数ワードに気づくにはどうすればいいのでしょうか。

これから四季報を読もうとしている方にぜひおすすめしたいのが、知らなかった言葉やご自身にとって違和感のある言葉が出てきたら、それを書き留めていくという方法です。知らなかった言葉については、すぐに調べるようにするといいでしょう。

例えば私の場合、「植物性ミルク」とか「培養肉」というのがそれに該当しました。「植物性ミルクって何だろう?」と思って調べたら、豆乳やアーモンドミルクのことを指していることがわかりました。豆乳は日本に昔からあるものですが、最近ではそれが広く受け入れられるようになったんだな、と感じました。

これから成長する会社を見抜く目を養うには、自分の中に「これは自分の感覚に合う」「合わない」という判断基準を持つことが大切だと思います。

つまり、ある言葉に触れて違和感を覚えたときに、その違和感が「気持ち悪さから来ているのか」あるいは「耳慣れない言葉だっただけで、気持ち悪さは感じないのか」を察知することが必要だと思うのです。

まずは自分の頭で考えて、「それって伸びるよな」とか「それってすごくいい!」と思える言葉を見つけていきましょう。

「自分の直感」と「他者目線」の両方を大切に


「自分の感覚を大切にする」ということと矛盾するようですが、そうは言っても株式投資には「人気投票」としての側面があります。大勢の人が「これ、いい!」と思った会社が成長し、その成果として株価が上がり、投資家に利益をもたらします。

もしも違和感の正体が「気持ち悪さから来ているもの」だったとした場合、それがあなた個人の感覚であり、あなた以外の人は感じないものなのか、他の大勢の人にとっても気持ちが悪いと感じるものなのか、想像してみましょう。

自分の感覚を養うことは大事です。でも、株式投資は人気投票でもあるので「他の人がどう評価するか」も常に意識しておく必要があるのです。

(渡部 清二 : 複眼経済塾 代表取締役塾長)