goo、楽天市場、Yahoo! JAPANなどに見られるように、日本の大手ウェブサイトは「とにかく多い文字量」「明るい色彩」「あらゆる場所に配置された画像」が特徴的です。海外では見られないこのようなデザインがなぜ成立しているのかについて、YouTuberのサブリナ・クルス氏が解説しました。

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ウェブサイトはもともとさまざまなデザインがありましたが、ウェブ標準などの標準化が行われたため、デザインの種類は減少していきました。さらにスマートフォンの普及で画面サイズやデータ通信量が制限されるようになり、ページ内のコンテンツ量がさらに減少し、世界的にミニマルなウェブデザインになっていきました。しかし、日本のウェブサイトはそれに逆行するように高密度な情報量を特徴としています。

クルス氏が各国の人気ウェブサイトの画像2671枚を画像認識AIで処理したところ、世界中のウェブデザインのパターンをその類似性に基づいてグループ化することができたとのこと。その画像を「明暗」「密度」という2つの指標で分析すると、日本固有の特徴が明らかになったそうです。以下の画像のX軸が密度、Y軸が明暗を示しています。



上記画像を点グラフにしたものが以下。赤い点が日本のウェブサイトであり、ほとんどが第一象限または第四象限、つまり「高密度」のデザインであることが分かります。



これは、多種多様なデザインが存在する国とは異なる傾向だといいます。以下の画像の点は青色がアメリカ、茶色がインド、緑色がイギリス、桃色がインドネシア、橙色がウクライナ、水色がカナダ、紫色がメキシコ、灰色がその他を示しています。



クルス氏は「興味深いことに、日本で人気のあるウェブサイトは、『何もない暗いデザイン』を避けているようです」と指摘します。この傾向は中国や韓国、台湾のウェブサイトにも見られ、例えば中国の51jobやNetEase、韓国のNaverやDaum、台湾のYamやPCHomeなども日本と似たデザインをしています。

クルス氏が参考にした日本在住のデザイナーであるDavid氏によるブログでは、日本のウェブデザインの傾向について、漢字に代表される表語文字はわずか数文字の中に多くの意味を含んでいるため、西洋人の目には乱雑に見えるこのようなデザインでも、日本語話者にとっては短時間で多くの情報を処理することができるものであると解説されています。また、「イタリック体や大文字がない日本語を視覚的に強調させるため、多くのデザイナーは装飾を加えたり、グラフィックテキストを使用したりしている」とも指摘しています。

このほか、「一般的に、日本の文化はリスクをとったり、群衆から抜きん出たりすることをせず、一度前例ができてしまうと、より良い解決策があろうとなかろうと誰もがそれに従う」「渋谷に見られるような明るいネオン広告、騒々しいパチンコ屋といった『街中の混沌とした忙しさ』がそのままウェブにも波及している。日本では物理的なスペースが限られている」「プログラミング言語のほとんどは英語を話す人や欧米の企業によって設計されたもので、新しい技術やトレンドが取り入れられるのが遅れている」などという理由を挙げ、日本のウェブサイトの特異性を紹介していました。

クルス氏は上記意見を参考とし、アジア圏のネットユーザーと交流して得られた意見などからも、やはり「日本はリスクを避ける文化があるといわれており、製品について多くの情報を要求することがある」などと推測しました。

クルス氏は「このような表示方法は、明るい色の照明やコンパクトな空間が一般的な地域の都市構造の影響を受けているかもしれません」と述べましたが、東アジア諸国のウェブサイトを日本と比較しても、日本のようなパターンは見られなかったとのこと。



また、日本は高齢化社会であるため、インターネットの使い方が他国とは違うと指摘しています。また、ソフトウェアの更新に消極的であること、日本はiPhone以前にスマートフォンが普及しており、画像よりもテキスト形式が主流であったことなどから、日本は独自の文化を歩んでいったとクルス氏は推測しました。

最後に、クルス氏は「日本はゆっくりと、しかし確実に世界のテクノロジーに対応するように動いています。若い世代がそれを望んでいるうえ、企業が古いテクノロジーのサポートを終了しているために選択の余地がないためです」と締めくくり、将来的にデザインが変化していくと予想しました。