2022年のモバイル通信費について考えてみた!

筆者はスマートフォン(スマホ)関連のメタデータとしてここ数年で特に注目しているものがあります。それはモバイル通信費です。厳密に言えば、人々が通信キャリアへ支払っている、スマホでの通話料や通信料、そして端末代金などの合計としての月額料金です。

当然ながら、その数字にこだわり始めたきっかけは2018年頃からはじまった通信料金値下げ議論と2020年のahamoショック、そして2021年の値下げ戦争です。今年は特に大きな動きはなかったものの、楽天が0円スタートのプランを廃止(変更)するなど、再び通信料金が値上がりを始めるのではないかという空気感も生まれ始めています。

市井の人々の通信料金の「今」はどうなっているのでしょうか。ahamoショックや値下げ戦争以外に通信費に影響を及ぼしたものはあったのでしょうか。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回は人々のモバイル通信費の「今」を追いかけます。


無理のあった0円スタートを廃止し現実的な路線へ切り替えた楽天モバイル


■人々を悩ませるモバイル通信費の負担増
はじめに、移動体通信事業者(MNO)や仮想移動体通信事業者(MVNO)へ支払われている平均月額料金を見てみましょう。

MMD研究所が2022年11月に公開した「2022年9月通信サービスの料金と容量に関する実態調査」によると、「通信会社に支払っている平均月額料金(通信+通話+端末)」は、大手3キャリアユーザー(楽天を除くNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)が9,526円、キャリアサブブランドユーザー(MNOのサブブランドユーザー)が5,072円、そしてMVNOユーザーが3,889円となっています。

大手キャリアユーザーという括りから楽天モバイルが除外されているのは、この数字がahamoやpovoといった低料金ブランドではなく、ギガホプレミアなどの高額料金プランを中心としているからです(ギガライトのような一部の低料金プランは含む)。

楽天モバイルを含めた場合のMNOの平均月額料金は8,913円になります。


ahamo、povo、LINEMOに限定した「オンライン専用プランユーザー」に絞ると平均月額料金は6,478円まで下がる


ここで、みなさんの中にも「少し料金が高くないか?」と少し疑問に思った人もいるのではないでしょうか。

かく言う筆者も見た瞬間にその料金の高さに目を疑い、次の調査項目に目を移してみたところ、その疑問は確信へと変わりました。

2020年から2022年までの平均月額料金を比較したグラフを見てみると、大手3キャリア、キャリアサブブランド、MVNOのいずれも2021年より支払額が上昇しているのです。

しかも、若干の増加という程度ではありません。大手3キャリアに至っては1,000円以上も上昇しており、値下げ戦争が勃発する以前の月額1万円の大台に乗りそうな勢いです。

これは一体どういうことなのでしょうか。


2021年に大幅に下がった通信料金が再び上昇傾向に


■黒幕は料金プランではなかった。通信費増の真の理由とは
原因を探るには数字の切り分けが重要です。

「通信会社に支払っている通信(通話込み)の月額料金(単数)」の調査項目から大手3キャリアユーザーの平均月額料金を算出すると5,150円になりますが、同じ調査項目のデータを2021年12月公開の調査データから調べてみると、4,638円となっています。

同様に、「通信会社に支払っている端末の月額料金(単数)」の調査項目から大手3キャリアユーザーの平均月額料金を2022年と2021年で比較してみると、2022年が4,376円、2021年が3,833円となりました。

つまり、通信+通話に支払っている金額で500円以上、端末に支払っている金額で500円以上、それぞれ上昇していたのです。

サブブランドやMVNOの場合はもっと顕著です。月額料金の上昇幅のほぼ全てが端末代金となっており、通信料金の上昇幅は25円〜50円程度と誤差の範囲でした。


たった1つの調査データだけでは見えてこない事実がある


端末代金の増加理由については、すぐに理解できるところです。

今年に入り急速に円安が進み、輸入商品のみならず燃料費や原材料費の高騰から国内生産品も含めてあらゆる物価が上昇しました。スマホもご多分に漏れず価格改定による値上げや新端末の価格が旧モデルよりも上昇するなど、買い替えには苦しい状況が続いています。

その価格上昇分が、まさに月額500円程度ということなのでしょう。

それでもサブブランドやMVNOで端末価格分の上昇幅が大手3キャリアユーザーと比較して小さいのは、スマホのブランドよりも価格を重視するユーザー層が多いため、端末価格が上昇する中でもより価格の安い端末を購入するなど、出費を抑える努力をしているということかもしれません。


スマホ価格の上昇は確実に家計を圧迫していた


大手3キャリアの通信+通話料金が月額500円以上も上がっている点は、ユーザーの二極化が大きな理由ではないかと考えられます。

以前のコラムでもMNOの高額料金プランユーザーが低料金プランやサブブランドなどへ徐々に移行していることをお伝えしましたが、契約データ容量についての調査項目を2022年と2021年で比較してみても、やはり大手3キャリアのユーザーはより高額なプランの契約者比率が増加していました。

つまり、大手3キャリアでも低料金プランで安価に済ませていたユーザーがオンライン専用プランやサブブランドへ流れた結果、大手3キャリアに残ったユーザーが高額料金プランに集中し始めているということです。

この流れは必然でもあり十分予想されたことです。恐らく今後も通信料金の二極化はますます進んでいくでしょう。


料金プランが値上がりしたのではなく、ユーザーが二極化した結果が通信費の増加として可視化された


■ピンチをチャンスに!今こそスマホの買い方を本気で考えよう
結論としては、以下の3つの点が挙げられます。

・モバイル通信費増加の原因はほぼ端末代金(スマホ代)
・基本的に各社の料金プランそのものは値上がりしていないが楽天モバイルの0円スタート廃止がユーザー動向に影響を及ぼし始めている
・ユーザーの二極化がさらに進んでいる

この調査が行われたのは2022年9月であり、楽天モバイルの0円スタートプランが完全廃止される以前のものであることから、今後の調査では楽天モバイルを含めた大手キャリアユーザーの平均月額料金はさらに上昇することが予想されます。

円安からの物価上昇の影響がさまざまに出ている中、通信業界もまた例外ではありませんでした。

スマホ購入の出費を抑えるには、

・購入するスマホのブランドやグレードにこだわらない
・必要な機能や性能を吟味して自分に合ったバランスのスマホを購入する
・大手通信キャリアからスマホを購入しない(基本的にオープンマーケットやメーカー直販のほうが安い)
・買い替えたスマホは下取りや中古買取に出して購入費用の補填に充てる
・そもそも端末の買い替え時期を遅らせる

これらのような点が考えられます。

これまで大手通信キャリアで言われるままに分割払いでスマホを購入していた人にしてみれば、スマホをメーカーの公式オンラインショップやオープンマーケットで購入することへの不安や抵抗もあるかと思いますが、物価上昇がまだまだ続く中、背に腹は変えられません。

スマホを自分でセットアップするだけの知識やバックアップを取る最低限の知識さえ身につければ、誰でも簡単にできることです。そして、ここで身につけた知識は間違いなくこれからの時代にも長く活きてくるものです。

これを良い機会だと捉え、ピンチをチャンスに変えるつもりで前向きに厳しい円安の時代を乗り越えていきましょう。


毎日使うものだからこそ、正しい知識と賢い買い方を身につけよう


記事執筆:秋吉 健


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