ドイツに勝利し喜ぶ三笘(9)や遠藤(6)ら日本代表の選手たち【写真:Getty Images】

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THE ANSWER編集部で日本―ドイツ戦を観戦「ホンマに流れを変えたんは9番よね、三笘」

 サッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)は23日、日本がドイツに2-1で逆転勝ち。大金星を挙げた。1点を追う後半、途中出場の堂安律、浅野拓磨が続けて得点。元日本代表FW久保竜彦は「THE ANSWER」編集部を訪れ、試合を観戦した。高校からJリーグ広島に入団した当初の先輩で、尊敬する森保一監督が率いる日本の下剋上に熱狂。試合後、インタビューに応じ、ドラゴン節で試合を振り返った。後編では、堂安でも浅野でもなく、逆転劇のキーマンになった選手について語った。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 堂安も、浅野も凄かった。でも、ホンマに流れを変えたんは9番よね、三笘。3バックになって守るんかな、守ってカウンターなんかなって思ったけど。

 だけど、三笘が入ったけん、溜めれて、時間ができて。遠藤も“番犬”に戻ったよね。前半はフワフワして、全部後手で。(ボランチが)2人おるけんさ。どっちが行くの、みたいな。バランスが悪かった。2人いるから、なんとか大丈夫そうだけど、なんか行けてなかったよね。

 あれが(ボランチ)1人になって、どうなるかなと思ったけど、三笘のところで溜めができて、余裕できると、(遠藤も)予測がつきやすいのかな。日本の肝のヤツやね、三笘。バチッとなったよね、ドイツ相手に。それを狙ったのかどうか……でも、狙ったんやろな、森保さん。

 三笘はすっと立って飛び込まんもんね。今日のドイツにでも飛び込まん。南野がいろんな動きをして裏を取ったら、そこの間を通してパスもできるじゃん。ドリブルだけと思ったら、ああいうセンスあるよね。あのタイミングでパスを出せるという。ホンマに効いとったと思うわ。

 ああいう戦いを前半からできれば、日本ももう1個上に行くだろうな、たぶん。ああいう選手がドイツには何人もおるから。日本がドイツとかに対して、主導権を握って、互角にできるようになるんじゃない。これから、ああいう選手が増えていけば。

 もちろん、浅野も良かったよね。サンフレッチェの頃から良い選手と思ってたし。馬力があってね。

 でも(大会前の)カナダ戦で見た時に浮いとる、ふわふわしてる感じたけえ。ああ、まだ(故障していた右膝が)おかしいんやろなっていう印象だったよね。今日も最初入った時、浮いとる感じあったよね。シュートも結局は浮いてたし。でも、あのトラップが全てやった。

 右足でシュート何回か打って、左足でもシュート打ってね。やっぱり定まってなくて、思い通りに飛んで行かんかったけど。最後ね、あんなところにね、狙って……やっぱり、狙ったんやろな。あそこしかないもんな。凄かったよ。

 堂安も(調子は)良くはなかったと思うけど、点を決めたわけやしね。(ゴールの場面)浮くやつもおるしね。難しいところで決めた。

 W杯でも日本の決定力、決定力って言うけど、俺には分からんよね。俺、W杯で決めたことないもん。W杯は違うよ。試合(大会)の方式も違うもん。相手もアジアじゃないし。ドイツやもん。だだ、ゴール一つで、あんなに変わるわけだからね。

「朝まで飲まんといかんで、これ。こんなことないと思うよ、サッカー人生で」

 終わってみれば、ギリギリの采配、ギリギリの勝負よね。前半も何回も崩されて相当きつかったと思う。

 前田もね、追いまくって終わり。でも、あれで三笘が生きて、浅野が決めたのかもしれんし。やっぱり、森保さんの使い方よね。吉田があんだけ持つと思わんかった。変なミスは1回もなかったな。ちょっと脚つっとったけどな。

 逆に4番はもっとやれると思うけどね、板倉。自信にはなると思う。ドイツにあんだけ攻められて、狙われてね。だけど、これで落ち着くだろうし。耐えたのもそうだし、雰囲気に慣れるから。長友なんかは(ミスもなく)何もなかったもんね。やることやった感じ。

 W杯はアルゼンチン―サウジアラビア戦のサウジの凄いシュートをちょこっと見たくらいやけど、VARで判定が覆ったりして話題になっとるんよな。でも、良かったじゃん、VAR。今日の日本は。ホンマ、俺らの時代だったらゴールになっとるよ。だから、いいことよ。

 コスタリカ、スペインにも読まれるということはないと思う。今日みたいなやり方があれば。試合中に(システム)変えるけんね。

 パパッとやって、選手もそれに対応できるんやから。遠藤も(大会前に負った脳震盪の影響なく)無事やったし、鎌田もいろいろできる。久保は今日みたいに(連携なく孤立した)1人では厳しいかもしれんけど、コスタリカ相手ならもっとやれる。

 朝まで飲まんといかんで、これ。こんなことないと思うよ、サッカー人生で。だって、ドイツに勝つんよ。今頃、渋谷とか、わーっとなっとるんじゃないか。

■久保 竜彦 / Tatsuhiko Kubo

 1976年6月18日生まれ。福岡・筑前町。筑陽学園高を経て、1995年に広島加入。森保監督(当時選手)とは7シーズンプレーした。2003年に横浜F・マリノスに移籍し、リーグ連覇に貢献。1998年に日本代表デビュー。ジーコジャパンとなった2003年以降は日本人離れした身体能力と強烈な左足でエースとして活躍したが、腰や膝など度重なる怪我により、2006年のW杯ドイツ大会は落選。以降、横浜FC、広島などを渡り歩き、2014年に引退。J1はリーグ戦通算276試合94得点。日本代表は国際Aマッチ通算32試合11得点。引退後は山口・光市に移り住み、コーヒー焙煎や塩作りなど、異色のセカンドキャリアを歩む。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)