脳のメカニズムを正しく理解していれば、脳を若々しく保つことにつながる

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年齢を重ねるにつれ、日常生活のさまざまなシーンで記憶力の低下を実感する人も多いだろう。

「やる気や記憶力は加齢とともに低下する傾向がありますが、その衰えを緩やかにする方法もあります。脳はいくつになっても新しく学習できることも明らかになっています。脳のメカニズムを正しく理解していれば、脳を若々しく保つことにつながるのです」

こう話すのは、脳科学者の西剛志先生だ。“脳の老化”は、衰えが顕著な機能ごとに「やる気喪失型」「もの忘れ型」「注意力低下型」「共感力低下型」「聴力低下型」の5つのタイプに分けられるという。いずれも放置しておくと認知症リスクを高めてしまうことになるというから気をつけたいところ。ここでは、各タイプの特徴と、それに応じた脳のトレーニング方法を西さんに解説してもらった。まずチェックリストを使って、自分がどのタイプにあてはまるかを確認してみよう。

「『やる気喪失型』は、更年期の女性に多く見られます。これはホルモンバランスの乱れがきっかけとなり発生することが多いようです。この年代は家事や仕事に忙しく、行動範囲は職場と家の往復だけ、新しく人に会う機会が得られないということも。これが脳の老化に影響していることがあるようです」(西先生・以下同)

このタイプは、意識的に“気持ちを上げること”に取り組もう。

「新しいファッションを楽しんだり、アイドルの動向を頻繁にチェックする“推し活”もおすすめ。ドーパミンが分泌され、やる気が湧くようになるでしょう」

短期記憶の低下が著しい「もの忘れ型」は、脳がストレスにさらされていることも影響し、記憶の定着が弱くなることが。

「思い当たる人は、とにかく脳をリラックスさせて、心を安定させる物質である『セロトニン』の分泌を促しましょう。手っ取り早い方法は、よくかむことです」

かむ行為を続けていると、脳がリラックスして集中力が増し、記憶力を高めることができるそうだ。

「女性の場合、アロマオイルを活用するのもおすすめです。ペパーミントは集中力を高め、ラベンダーはワーキングメモリ、ローズマリーは将来展望の記憶力増強に働くことがわかっています」

「注意力低下型」は、片付けができない、2つ以上のことが同時に行えない、感情の抑制がきかなくなる、といった状態になりやすい。

「頭の前のほうにあり、感情の制御、行動の抑制などをつかさどる前頭前野が正しく機能しなくなることが原因です。このタイプの人に最適なのは、旅行の計画を立てること。旅行を計画する際は、移動手段を考えたり、時間の計算をしたりと、脳の複数の機能を同時に働かせることが求められます」

ほかに部屋の掃除もよいそうだ。

「“ゴミ屋敷”に住んでいる人の部屋をきれいに片付けたところ、1カ月ほどで前頭前野の働きが回復した、という研究があります。物が整って置かれていると、前頭前野が活性化してくることがわかっています」

「共感力低下型」は文字どおり、相手の感情に共感できにくくなることを指す。感情表現が乏しくなり、無表情になりがち。

「誰の話にもうんうんとうなずきながら聞くのが対策になります。ラブロマンスやヒューマンドラマに相づちをうつのもいいでしょう。また、ふだんから脈拍や心拍数を測って“自分のリズム”を把握しておきましょう。共感や感情などの認知機能に関係する前帯状皮質の機能改善につながります」

最後に「聴力低下型」。脳は視覚野や体性感覚野を使って聴覚を補おうとするため、聴力と脳の認知機能は関係が深いのだという。

「聴力が低下している人は、何より耳をいたわること。イヤホンを使わない、また脳をリラックスさせ、聴覚を改善させることに努めましょう。ストレスを軽減し、視覚野や体性感覚野など、脳の別の分野を刺激することが大切です」

自分の脳の弱点を意識的に鍛えて、認知症リスクを遠ざけよう!