日本の守備の成長に言及【写真:ロイター】

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【専門家の目|ギド・ブッフバルト】ドイツがW杯で警戒すべき日本人選手は鎌田と堂安

 元ドイツ代表DFギド・ブッフバルト氏は現在、ドイツ南部のシュツットガルト近郊在住で、ドイツ国内のサッカーシーンを随時チェックしている。

 また、現役時代にJリーグの浦和レッズでプレーし、2004〜06年の3年間は浦和の監督としてチームを指揮するなど、日本とも縁の深い人物でもある。そのブッフバルト氏から見た、現在の日本代表選手の真の実力と、日本サッカー全体の進化の歩みを独自の目線で語ってもらった。(取材・構成=島崎英純/全3回の3回目)

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――ブッフバルトさんもおっしゃっている通り、現在のブンデスリーガではかなり多くの日本人選手がプレーしています。ドイツ代表が警戒しなければならない日本人選手は誰でしょう?

ギド・ブッフバルト(以下、ギド)「何人かいますが、まずは鎌田大地(フランクフルト)ですね。彼は非常に成長した選手の1人だと思います。それから堂安律(フライブルク)。彼は以前、アルメリア・ビーレフェルトという下位に位置するチームにいながらも活躍をしていました。そして今季は新しくフライブルクという上位争いをするチームでプレーしていて、鎌田と堂安はドイツサッカーのことも熟知していると思います。彼らは得点感覚が優れているので、ドイツは気をつけなければなりません」

――ブッフバルトさんから挙げていただいた鎌田と堂安ですが、9月に行われたアメリカ代表との親善試合(2-0)では鎌田がゴールを決めるなど活躍し、堂安はエクアドル代表戦(0-0)で先発出場しました。ただ、そんな2人もワールドカップ(W杯)本大会でスタメンの保証は得られていません。

ギド「ドイツのブンデスリーガは、イングランドのプレミアリーグ、スペインのラ・リーガ、フランスのリーグ・アン、そしてイタリアのセリエAと並んで、世界のトップクラスのリーグです。そのリーグのクラブのレギュラーとしてプレーしている選手たちは、代表に選出されるべきだと思っています。もし、彼らを必要としないぐらい素晴らしい選手が日本にいるのならば、日本はW杯でもっともっといい成績を挙げられるでしょうね」

シュツットガルト主将の遠藤航を称賛「完全なリーダーシップを取れる」

――現在ブッフバルトさんが住んでいらっしゃるドイツ・シュツットガルトのクラブ、VfBシュツットガルトには遠藤航が在籍し、チームキャプテンも務めています。また、ブッフバルトさんの現役時代のポジションであるDFも、今の日本代表にはヨーロッパで活躍している選手がいます。

ギド「遠藤航はシュツットガルトで完全なリーダーシップを取れる人間にまで成長した選手です。また今季はボルシアMGでプレーしている板倉滉も、とてもいい選手だと思っています。そして、アーセナル所属の冨安健洋も当然素晴らしいディフェンダーですよね。やはり世界をリードしている5大リーグで活躍している選手は自らの経験を日本代表に伝えることができるので、その点のアドバンテージは間違いなく得られると思います」

――ブッフバルトさんが現役時代に日本でプレーしていた1990年代は日本人ディフェンダーにさまざまな課題があり、彼らがヨーロッパでプレーすることが叶いませんでした。しかし現在は板倉、冨安、吉田といった日本人ディフェンダーがヨーロッパで活躍しています。その要因はどこにあるとお考えでしょうか?

ギド「90年代当時の日本人選手は攻撃面で優れ、特にアジリティーの高さを攻撃に生かせていたように思います。ただ、守備に関しての意識が低かった。一方で、今の日本の選手たちは守備の意識が格段に高まっていて、それが日本代表の強化につながった1つの要因ではないかと思っています。それは、日本の育成の現場の仕事が素晴らしいからではないかと考えています。子供の頃から攻撃だけでなく守備の向上もチームにとって大切であるということを植え付けられることによって、実力のある日本人ディフェンダーたちが数多く輩出されるようになってきたと思っています」

[プロフィール]
ギド・ブッフバルト/1961年1月24日生まれ、西ドイツ出身。シュツットガルト(ドイツ)―浦和―カールスルーエ(ドイツ)。ドイツ代表通算76試合4得点。鉄壁のディフェンスで西ドイツ代表の1990年イタリアW杯制覇に大きく貢献したレジェンド。1994〜97年には選手として、2004〜06年には監督として浦和に在籍し、06年にはJ1優勝、天皇杯優勝へと導いた。(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)