「エドワーズ症候群」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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エドワーズ症候群は、出生児に起こる染色体異常症の1つとされています。出生時の染色体異常症の中ではダウン症候群に次いで多い疾患です。

染色体異常症は、どの染色体が異常な数であるかによって症状が異なります。では、エドワーズ症候群は他の染色体異常症と何が違うのでしょうか?

ここではエドワーズ症候群の症状・特徴・原因をご紹介します。また、出生前診断が可能かどうかと出生児との向き合い方についても解説します

エドワーズ症候群の特徴と原因

エドワーズ症候群の特徴が知りたいです。

エドワーズ症候群は、染色体異常症の1つです。常染色体のうち18番染色体の全長もしくは一部が重複している、つまり一部の染色体が通常より多いことが原因で発症する先天異常症候群です。別名「18トリソミー症候群」とも呼ばれています。

トリソミーとは、染色体が通常2本なのに対して3本になった状態のことをいいます。18番染色体がトリソミーになっているため18トリソミー症候群とも呼ばれているのです。例えば21番染色体がトリソミーとなると「ダウン症候群」に、13番染色体がトリソミーになると「パトウ症候群」になります。

エドワーズ症候群の場合、出生児のうち3,500人~8,500人に1人の頻度でみられますが、設備が整っていないクリニックの場合は生命予後が至らずに死産となってしまう可能性もあります。

症状を教えてください。

エドワーズ症候群は様々な症状を引き起こします。エドワーズ症候群の胎児の90%心室中隔欠損・心房中隔欠損という心臓の一部を欠損した状態で生まれてきます。

そのため、先天性心疾患を合併し、出産直後の生命維持に支障をきたす場合が多いです。呼吸器・消化器・泌尿器の疾患も多く、心疾患を発症していなくとも生命維持にかかわる合併症を発症することが多くなります。

また、エドワーズ症候群には以下のような身体的特徴があります。

手指の重なり

後頭部の突出

体格が小さい

顎が小さい

手の握りが特徴的

内反足

エドワーズ症候群の出生児は、これらの身体的特徴のいずれか、もしくは複数の特徴をもって生まれてくることが多いです。

エドワーズ症候群を引き起こす原因は何でしょうか?

エドワーズ症候群は常染色体の異常によって引き起こされる疾患です。しかし、その根本的原因の多くは突然変異による染色体不分離です。

染色体不分離とは、精子・卵子となるために減数分裂を繰り返す中で、ある一定の染色体だけがうまく分裂できなくなることをいいます。その中でも18番染色体が染色体不分離を起こした卵子もしくは精子が受精卵となると、生まれる赤ちゃんの18番染色体はトリソミーとなり、エドワーズ症候群を引き起こしてしまうのです。

現在のところ、染色体不分離を予防する方法はありません。

出産年齢は関係あるのでしょうか?

出産年齢が高いほど、出生児が染色体不分離を起こす可能性が高くなると考えられています。

それは、加齢によって正常に染色体分離を行う因子が減少してしまう可能性が高いからです。

お母様の年齢が25歳~34歳の場合、トリソミーを引き起こす可能性は8%なのに対し、40歳を越えると25%を越えてしまいます。そのため、出産年齢とエドワーズ症候群は関連性が高いと考えられています。

エドワーズ症候群は生存率が低いと聞いたのですが…。

残念ながらエドワーズ症候群の出生児の生存率は非常に低いです。生まれてきた半数以上は生後1週間以内に死亡し、生後1年まで生存する割合は10%未満とされていました。

ただし近年では、新生児集中治療の発達により設備を整えていれば生命予後が改善されることが多いです。現在では新生児集中治療を行った結果、1ヶ月生存率は80%以上、1年生存率は25%まで達しました。

ただし、成長しても心身の発達遅滞や合併症の発症が見込まれます。そのため、継続した医療的ケアが必要になります。

エドワーズ症候群の診断

エドワーズ症候群の診断はどのようにして行いますか?

多くは新型出生前診断(NIPT)という検査で判明します。妊娠しているお母様と胎児は血管でつながっています。

お母様の血液中には胎児のDNA断片が流れているため、お母様の血液を採取して胎児のDNA断片をスクリーニングすることが可能です。これがNIPTで用いられる血液検査になります。ただし、これはあくまでスクリーニングテストであり、確定診断とはなりません。

NIPTでトリソミー症候群が疑われた場合は、羊水を採取して羊水検査を行います。羊水にも胎児の細胞が含まれるため、ここで詳しく細胞の染色体を検査することで確定診断となります。

ただし、羊水検査は腹部に針で穴を開けて採取するため、出血などのリスクも非常に低いですが存在します。傷口からの感染症の危険性は0.3%ほどですが、ないとは言い切れません。

ほとんどの場合はお母様からの血液採取だけで済むNIPTを行い、トリソミー症候群の疑いが濃厚な場合にのみ、検査を受ける必要があります。

羊水検査を受ける前には熟考が必要です。

いつ頃判明するのでしょうか?

NIPTは妊娠10週0日目から受けることが可能です。結果が出るまでには2週間ほど必要になります。羊水検査は羊水の量が充分でないと採取できません。

そのため、妊娠15週~18週までの間のみ行うことが可能です。NIPTの検査結果までは2週間あるため、結果を待つ時期と羊水検査可能な時期が重なってしまう可能性があります。

そのため、一般的にはスクリーニングテストの結果が出てから羊水検査を行うので、NIPTなどの検査は比較的早い時期に行う必要があります。できれば妊娠10週~12週頃には済ませると良いでしょう。

エドワーズ症候群には有効な治療法がないと聞いたのですが…。

残念ながらエドワーズ症候群をもって生まれたお子様は、生まれたときのままの体質になります。そのため、治療法はありません。

しかし、症状を緩和し生活をサポートするなどで成長を見守ることはできます。それにはご家族だけでなく、周囲の方々や医療チームの支えも必要不可欠です。

エドワーズ症候群との向き合い方

エドワーズ症候群で生まれた子供との向き合い方を教えてください。

他の発達遅滞児とは違い、エドワーズ症候群の小児は生命維持に直結する医療的ケアが必要になります。そのため、家族の支えが非常に重要です。

特にお母様の負担が大きくなるため、父親や他の家族が母子共々支えることが必要になります。

日々の医療的ケアに失敗して我が子を死なせてしまうのではないかという不安はとても大きなものです。

何より目の前にいるお子様が懸命に生きようとしていることを忘れないでください。

エドワーズ症候群の子供と過ごすうえで注意すべきことはありますか?

エドワーズ症候群のお子様は出産を乗り越えたとしても、成長するにつれて刻々と病状が変化します。必要なケアは、病状の変化によって変わっていきます。

お子様の状態を医療チームとご家族でしっかり共有し、成長に合ったケアが必要です。それ以外に重要なのは、お子様のゆっくりとした成長を前向きに見守ることです。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

出生前に胎児のことを調べるNIPTなど、出生前診断を行う機会が増えてきました。しかし、本来のNIPTは出生児に異常があった場合に出産後どうするかを事前に計画立てておくための検査です。

もし出生前診断を行った結果、エドワーズ症候群と確定診断された場合は、混乱せずに落ち着いて迎え入れる準備をしましょう。

新生児集中治療が可能なクリニックを選ぶ・お母様やご家族のサポートが可能なカウンセラーを見つけるなどの準備はできます。

落ち着いてお子様を迎え入れる準備をしてあげてください。

編集部まとめ


エドワーズ症候群は、出生後の生存率が非常に低い先天性疾患ですが、現在は技術の向上により生存率が上がっています。

しかし、いまだ寿命に関しては難しい課題も多く、お子様を介護するご家族へのサポートも必要な疾患です。

成長に合わせた医療ケアと、ご家族の精神的ケアが非常に重要視されます。トリソミー児をもつ親の集まりに積極的に参加することも必要です。

エドワーズ症候群はNIPTと羊水検査で出生前に確定診断可能ですが、これは生まれる胎児に異常があった場合に備えるための検査ということを忘れないようにしてください。

参考文献

18トリソミー症候群|小児慢性特定疾病情報センター

18トリソミー(エドワーズ症候群)とは?特徴や起こり得る症状、治療法や予後について【医師監修】|ヒロクリニック 新型出生前診断

出生前診断|専攻医教育プログラム2

18トリソミーのお子さんを生み育てること 医療・福祉・社会への要望|東京薬科大学薬学部 櫻井浩子

羊水検査の時期はいつ?出生前診断における位置づけと検査で分かること|新型出生前診断 NIPT Japan

エドワーズ症候群 (18トリソミー症候群)|Medical Note