「VDT障害(VDT症候群)」はスマホやパソコンが原因?放置するリスクも解説!

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VDT障害(VDT症候群)は、スマートフォン・パソコンなどのIT機器を使用した作業によって生じる様々な症状のことです。

IT機器を使う機会が増えた現代のライフスタイルは、目が疲れやすい生活習慣ともいえ、多くの人が目の疲れや不調を抱えています。

目の疲れ・不調をはじめとするVDT障害(VDT症候群)は全身症状を招く恐れがあり、単なる目の疲れと軽視するのは危険です。

現代人が注意したい VDT障害(VDT症候群)について、症状や原因、治療方法など詳しく解説します。

VDT障害(VDT症候群)の症状と原因

あまり聞き慣れないのですがVDT障害(VDT症候群)とは何ですか?

VDT障害(VDT症候群)は、長時間のVDT 機器を使った作業によって生じる様々な症状のことです。

VDTはVisual Display Terminalsの頭文字を取ったもので、液晶などの画面標示機器とキーボード・マウス・タッチ画面などの入力機器による情報端末を指します。普段私たちがよく使うスマートフォンパソコンもVDT機器です。

IT機器の発展によって、私たちの生活はとても便利なものになりましたが、その分VDT作業も長時間になりつつあります。その結果、身体的・精神的な疲労・不調を感じる人が増加傾向にあります。

VDT障害(VDT症候群)は、目の症状だけではありません。体や心に影響を与える特徴があります。

テクノストレス眼症と呼ばれることもあります。

VDT障害(VDT症候群)の症状を教えてください。

よくみられる症状は、眼の症状体の症状精神的な症状と大きく分けて3つです。

目の症状では、目の乾き(ドライアイ)眼精疲労目の痛み視力低下充血などが挙げられます。

体の症状では肩・腕・首を中心とした症状が多く、肩こり首こり腕の痛みしびれ倦怠感背中の痛み腰痛などです。

精神的な症状では不安感イライラ憂鬱な気分などが挙げられ、その結果、不眠・鬱症状につながる場合もあります。

何が原因で発症しますか?

DT障害(VDT症候群)は、いくつかの要因が複合的に絡み合って発症します。その主な要因は長時間のVDT作業です。

長時間集中してスマートフォン・パソコンなどのディスプレイを見続けると、まばたきの回数が減りドライアイにつながります。そして、目の乾燥によってより疲れやすい状態となり、眼精疲労につながります。

肩こり・首こり・痛み・しびれなど体の不調の原因は、VDT作業による長時間の同じ体勢です。長時間同じ体勢をとり続けることで、血行不良・筋肉疲労が起こり体の不調につながります。

精神的な不調は、目・体の不調がストレスとなり心の異常につながるものと考えられます。また、長時間のVDT作業により他人との関わりが減ったことによる孤独感も心の不調の原因の1つです。

VDT障害(VDT症候群)になりやすい人の特徴を教えてください。

VDT障害(VDT症候群)は、現代人の誰しもが陥りやすい症状の1つといえます。

1日4時間以上パソコン・スマートフォンを使用する

仕事でパソコン・スマートフォンを使用する機会が多い

長時間同じ姿勢で過ごすことが多い

ドライアイ

メガネ・コンタクトが視力に合っていない

これらに当てはまる人は、よりVDT障害(VDT症候群)になりやすい可能性があります。VDT障害(VDT症候群)は、目の疲れ・目の乾きが様々な症状を引き起こす最初のきっかけです。

つまり、目を酷使していて疲れやすい環境・生活の人はそれだけVDT障害(VDT症候群)になる可能性が高くなります。

VDT障害(VDT症候群)は子供でも発症するのでしょうか?

子供でもVDT障害(VDT症候群)を発症する可能性はあります。特に現代の子供は、テレビゲーム・スマートフォンでのゲームなど目を酷使する遊びが増え、VDT障害(VDT症候群)を発症しやすいライフスタイルといえます。

実際に、小中学生の約半分がテレビゲームに熱中しているといわれており、目の疲れ・視力低下・心身の不調などを訴える子供も増えています。

視力は一度下がってしまうと元に戻すことが大変難しいです。だからこそ、子供のうちからテレビゲームを含むVDT作業の時間を見直すことが重要です。

テレビゲーム・パソコンなどの長時間の使用を避けたり外で遊ぶ時間を増やしたりして、目を酷使しない生活習慣を子供のうちから身に付けるように意識しましょう。

VDT障害(VDT症候群)の検査と治療

どんな症状が現れた場合に病院を受診すべきでしょうか?

厚生労働省では、VDT障害(VDT症候群)を訴える人が増加傾向にある背景から「VDT 作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を設けました。このガイドラインでは、VDT作業に従事する人に対して健康管理・健康診断の項目を定めています。

作業区分に応じて必要な健康診断の項目が定められており、その中にはVDT障害(VDT症候群)の兆候を見つけるための項目が含まれています。

VDT作業に従事し、健康診断にて問題がみつかった場合は病院を受診しましょう。VDT検診の機会がなくても、長時間パソコン・スマートフォンを使用することが多く、眼精疲労・肩こり・腕のしびれなど心身の不調を感じている場合は一度病院を受診しましょう。

VDT障害(VDT症候群)は命に関わる症状とは言い難いですが、症状がひどくなると頭痛・吐き気・鬱症状など日常生活に支障をきたします。

慢性的な目の疲れ・目の乾きがあり、だるい・肩こりが辛いなどの自覚症状がある場合はVDT障害(VDT症候群)を疑い、早めに診察を受けるようにしましょう。

VDT障害(VDT症候群)の検査方法を教えてください。

前述でお伝えしたVDT障害(VDT症候群)の兆候をみつけるための検診では、眼科学的検査筋骨格系検査を行うとともに自覚症状の有無の調査を行います。

VDT障害(VDT症候群)は、目に関する症状が圧倒的に多いです。そのため、視力検査・屈折検査・調節機能検査・眼位検査などを行います。

筋骨格系検査では、腕や指の運動機能の検査・圧痛点などの検査を行い、VDT障害(VDT症候群)かどうか、もしくは症状の程度を診断していきます。

検診ではなく自覚症状がありご自身で病院に行く場合も、これらの検査でVDT障害(VDT症候群)に当てはまるかどうかを調べていく場合が大半です。

VDT障害(VDT症候群)の治療方法を教えてください。

ドライアイの症状がみられる場合は、点眼薬による治療を行います。点眼薬は、VDT障害(VDT症候群)の代表的な治療です。

目に潤いを与える目的以外にも、目の疲れを和らげる・涙の質を改善させる目的で点眼薬による治療を行う場合もあります。また、同じ薬を使用した治療でも、身体や目の緊張をほぐすために飲み薬による治療方法をとるケースもあります。ただし、薬による治療は、VDT障害(VDT症候群)の根本的な治療とはいえません。

ブルーライト用のメガネを使用する視力に合ったメガネやコンタクトを使用する長時間のVDT作業を控えるなど、目が疲れる生活環境を見直していくことも大切です。

VDT障害(VDT症候群)の予後とリスク

VDT障害(VDT症候群)は完治しますか?

VDT障害(VDT症候群)は、原因となる生活環境・生活習慣を見直し対処療法を行っていくことで、症状を治していくことが可能です。

しかし、VDT障害(VDT症候群)の症状がなくなったとしても、再び目を酷使する機会が増え、目・体への負担が大きくなってしまうと再度VDT障害(VDT症候群)になる可能性があります。

VDT障害(VDT症候群)は、はしか・風疹のように一度なれば二度とならない病気というわけではありません。

生活環境・生活習慣によって発症する症状ということを理解し、日々目を労わった生活を心がけることが大切です。

VDT障害(VDT症候群)が進行するとどうなりますか?

VDT障害(VDT症候群)による目の疲れ・肩こり・ドライアイなどが進行すると、角膜の損傷頭痛めまい吐き気などの症状につながる恐れがあります。

VDT障害(VDT症候群)でよくみられる眼精疲労は、進行することで目だけではなく頭痛・肩こり・倦怠感など全身の不調につながります。目の乾き・痛み・疲れなど目の不調を感じたら、放置せずに早めに専門医に相談しましょう。

放置するリスクを教えてください。

VDT作業によって目が乾きやすい状態が続きドライアイが進行すると、本来涙で覆われている角膜はむき出しの状態になり傷つきやすくなります。角膜の1番外側の層である角膜上皮は、角膜・目のバリアの役割を果たしている層です。

この角膜上皮が、ドライアイによって傷つきやすい状態となってしまうと傷から細菌が入り込む可能性もあります。また、目が乾いた状態は、まばたきだけで角膜に傷がつく可能性もあります。

また、放置することで目の深刻な症状だけではなく、頭痛吐き気鬱症状など日常生活に支障をきたす重い症状につながる可能性も否定できません。

VDT障害(VDT症候群)の自覚症状がみられる場合は、放置せずに生活習慣を見直したり専門医に相談したりして放置しないようにしましょう。

パソコンなどを使う仕事の場合はどうしたら良いのでしょうか

仕事などで長時間のパソコン・スマートフォン操作を避けられない場合は、目の負担を軽くする対策をとりましょう。

1時間以上の連続したVDT作業は避ける

1時間VDT作業をしたら10~15分の休憩をとる

部屋・ディスプレイの明るさを調整する(机上の照度は300ルクス以上、ディスプレイは照度500ルクス以下を目安にする)

体型に合った高さの机を使用する

高さ調節できる椅子を使用する

背もたれの傾きを調節できる椅子を使用する

操作しやすいマウスを使用する

室内は適度な湿度に保つ

ストレッチをする

十分な睡眠をとる

パソコンなどを仕事で使用する場合は、これらのことを心がけVDT障害(VDT症候群)予防に努めていきましょう。

長時間のVDT作業を避けられないとしても、適度に休憩をとり目が疲れにくい環境を整えることで、VDT障害(VDT症候群)の予防・対策につながります。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

パソコン・スマートフォンなど長時間使用する機会が増えた現代人の生活において、VDT障害(VDT症候群)は誰でもなりうる症状といえます。

しかし、パソコン・スマートフォンをはじめとしたディスプレイを全く見ないようにする生活を送ることは非常に難しいものです。だからこそ、VDT障害(VDT症候群)にならないためには目を労わりながらVDT作業をする工夫が大切です。

また、慢性的な目の疲れ・体の不調を感じている場合は、単なる疲れで終わらせず早めに医師に相談しましょう。

編集部まとめ


目の症状だけではなく全身症状や心の不調につながる恐れのあるVDT障害(VDT症候群)は、現代人が注意したい症状の1つといえます。

日頃の生活習慣から、VDT障害(VDT症候群)の心当たりがある人も少なくないのではないでしょうか?

なかなか治らない眼精疲労・肩こり・倦怠感がある人は、もしかしたらVDT障害(VDT症候群)かもしれません。

心当たりがある場合は、放置せずに早めに専門医に相談し、大切な目や体の不調を改善していきましょう。

参考文献

情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて|厚生労働省労働基準局長

VDT症候群とは?PC・スマホの見過ぎによる心身不調の原因やケア方法について解説|スマイル

~VDT症候群にご注意~|健康一口メモ

職場のあんぜんサイト|厚生労働省

VDT作業とその対策|労働衛生対策の基本⑬

VDT症候群|大石眼科医院

【在宅勤務における健康管理】VDT症候群の予防|慶應義塾大学 保健管理センター

VDT症候群|いやま眼科

VDT症候群の原因|Santen

VDT症候群の治療方法|Santen

VDT症候群|Medical Note

自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備|厚生労働省