ソフトバンク・千賀滉大【写真:藤浦一都】

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千賀滉大の代理人を務めるウルフ氏「ワールドシリーズで勝つ力になれる」

 メジャーリーグのゼネラルマネジャー(GM)会議が8日(日本時間9日)、米ネバダ州ラスベガスで開幕した。10日(同11日)まで開催され、オフシーズンの移籍市場が本格的に動き出した。契約オプションの破棄によって、この日新たに11人の選手がFAとなり合計151選手が公示された。各球団のGMらフロント陣のほか、有力代理人が会場に集まり3日間に渡って建設的な話し合いが行われる。その初日から、ソフトバンクの千賀滉大投手に注目が集まっている。【ラスベガス=木崎英夫】

 ラスベガスの豪華なリゾートホテルで開幕した今年のGM会議で、ソフトバンクから海外FAとなる千賀滉大投手への注目度が高まっている。この日はキャッシュマン(ヤンキース)、ヤング(レンジャーズ)、クリック(アストロズ)ら複数のGMに加え、昨季マリナーズのGM職から昇格したディポート野球運営部門社長が千賀の情報を精査中とした。そして午後一番で、千賀と代理人契約を結ぶジョエル・ウルフ氏が日本の報道陣の取材に応じた。

「センガは先発投手の市場でずっと注目されてきた。ソフトバンクは4年連続の優勝を目指していたのでポスティングでの移籍を容認せず、こうして彼がFAになったことで私は心置きなく、ここで動くことができる」

 ウルフ氏はこう切り出すと、千賀の日本での実績を引き合いに出し、市場に打って出る意気込みを話した。

「この数日で興味を示すチームの中で(獲得に)本腰を入れるのはどのチームかという感触がつかめることを大いに期待している。センガは4度優勝を果たしたチームの投手であり、無安打無得点試合(2019年9月6日のロッテ戦)を達成している。また五輪で金メダルを手にした。年齢もまだ30歳手前。新加入すればそのチームのプレーオフ進出、そしてワールドシリーズで勝つ力になれる投手。アピールできるものがそろっている」

ダルビッシュ、鈴木誠也らが顧客 千賀への深い敬意「磨き上げスターに」

 ウルフ氏は、ダルビッシュ有、鈴木誠也、筒香嘉智、有原航平をクライアントに持ち、過去には松井秀喜(現ヤンキースGM特別アドバイザー)獲得のスタッフの一人として尽力した。日本人選手の売込みの術を心得ており、米大手エージェント会社「ワッサーマン・メディア・グループ」で野球部門の代表を務める。現役時代は一塁手兼外野手としてマイナーで6年間プレーし、選手の心情に寄り添える人物。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)で学士号、ロヨラ・ロースクール・ロサンゼルスで法学博士号を取得している。勉学と野球に地道な努力を積み重ねてきただけに、プロとしての千賀の歩みに深い敬意を表する。

「甲子園を沸かせた貴公子で、ドラフト1位指名されたわけではない。彼は育成ドラフトで指名された日本人選手として初めてメジャーに来ることになる。何もないところから粉骨砕身して自分自身を磨き上げ、スターになった。我々が持つ彼への敬意は計り知れない」

 さらに、動作解析、データ分析から開発した科学的根拠に基づく独自のトレーニング法を構築したシアトル郊外の「ドライブライン・ベースボール」で、千賀がオフに指導を受けたことにも触れ、希望するチームは「大都市の勝てるチーム。地域は限定しない」とした上で、こう付言した。

「彼が優先したいのは、投手としてより向上でき、メジャーリーグで成功を収めるためのデータを提供してくれるスタッフが揃う“勝てる”チームだ」

 千賀は、投手としての極みを求める場としてメジャーの舞台を選んだ。ウルフ氏は「ダルビッシュがセンガに一目置いている」と言う。目的先行型の純真な欲求を持つあたり、常に自分で考えさらなる高みを目指すための研究と試行錯誤を重ねるダルビッシュ有の姿勢にピタリと重なってくる。

 正面に受けたジョエル・ウルフ氏のブルーアイズの眼光に自信の程が映る。千賀滉大の投手としての高い能力と人間性に魅せられた辣腕代理人が、右腕を理想のチームへ導くのにはそう時間はかからないであろう。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)