掲載:THE FIRST TIMES

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大分発の3ピースロックバンド、SIX LOUNGEが移籍第一弾になる6曲入りEP『ジュネス』をリリースする。今年結成10周年という大きな節目を迎え、バンドの軸が固まったタイミングで、新たに編曲者を招くというチャレンジを今作で試みた。多くのアーティストがそうであるように、コロナ禍で様々な葛藤を抱えながらも、前に突き進む彼らの「今」を捉えた楽曲群は、切なさを漂わせながら、キッと正面を向いた強さを感じさせる。インディーズ時代の再録曲「メリールー」を含む今作について、メンバー3人に話を聞いた。

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■今までやってないことにトライする

──今作はソニー移籍第一弾作になりますが、バンド的には心機一転という気持ちですか?

ヤマグチユウモリ(以下、ヤマグチ):まさに心機一転、もう一度やってみよう!という気持ちですね。ユニバーサルと契約が終わり、今までやってないことにトライするというか。いろんな人の意見を聞いて、やってみようかなと。

ナガマツシンタロウ(以下、ナガマツ):俺は今までやってきたことにプラスして、新しい考えや力をもらえればいいなと。ワクワクする気持ちの方が強いですね。

イワオリク(以下、イワオ):3人で一発勝負をかけるか、自分たちだけでやるのかを話し合ったんですよ。飲みながら喋ったときに一度ギアを入れて、勝負をかけてみようと。それでソニーと契約が決まった感じですね。

──(大分市内)都町で3人で飲んで話し合ったと?

イワオ:そうっすね(笑)。

ナガマツ:超久しぶりに3人で話しました。メジャーに行くのか、自分たちで好きなことをやるのか…まあ、メジャーに行くと大変なことになるだろうけど、もう一度メジャーでやりたいなと。

──バンド的にはもう一度メジャーで挑戦しようと。さきほど「いままでやってないことにトライする」とヤマグチさんは言われてましたが、具体的に言うと?

ヤマグチ:編曲が入ったりとか。それは今までやったことがなかったことですからね。

──今作は作る上で最初はどんなビジョンがありました?

ヤマグチ:ソニーの方からお題をもらって、曲はたくさんあったんですよ。だから、それに沿う形で曲を選んだ感じですね。

──今回のお題というのは?

ヤマグチ:ざっくり言えば、今っぽいというか。

イワオ:日本のチャートでどんなものが流行っているのか。それを聴いたうえで、曲を提出した感じですね。

──例えばどのへんの人たちを聴いたんですか?

ヤマグチ:優里さん、Saucy Dog、back numberとかバンドサウンドの歌もの曲を聴きました。ちゃんと売れている人たちは売れているだけの理由があるんだなと。Aimerさんも好きになりましたね。で、そういう曲を作ろうと思い、ここはこういうメロディの作り方なんだな、サビはどれくらい音が上がっているのかなと、研究しながら聴いてました。今のチャート上位にいる音楽はイントロが短くて、すぐに歌で始まるものが多いんですよ。そういうことも考えました。イントロの長い曲が好きだったけど、それを半分に切ってみたり、あと、サビを曲の頭に置いてみたりして。

ナガマツ:俺もチャート上位にある音楽は聴くようになって、勉強になりましたね。歌詞に関しては、会話のような、深読みしないというか、一度読めばわかるものが多かったから。今回の歌詞にもそれは反映されていると思います。

──今作の歌詞もなるべくわかりやすく書こうと?

ナガマツ:そうですね。まあでも、ただわかりやすいだけじゃなく、書きたいことがあっても難しくなりすぎないように意識しました。

■人に言われないと、新しいこともできなかったと思う

──今年はバンド結成10周年という大きな節目でもあるわけで、その意味でも考え方も柔軟になってきた部分もあります?

ヤマグチ:勝手に壁を作りまくっていて、飛び込んできてくれたら、みんな僕らのことをいろいろと考えてくれているんだなと。最初の頃は曲にいろいろ言われたりするのは嫌じゃですか?勝手に全部変えられちゃうイメージがあったけど、そんなことはなくて。みんなで話し合いながら、進めることができたから。人に言われないと、新しいこともできなかったと思うんですよ。自分の頭も固くなってきたから、新鮮で良かったですね。

■制作でも新しい経験が。それが10代の青春っぽい

──EP『ジュネス』はフランス語で、“若々しさ”、“青春"という意味ですよね。このアルバム名をつけた理由は?

ヤマグチ:10年経ってからの、また新たな青春というか。

ナガマツ:制作でも新しい経験がありましたからね。しんどさもあったけど、楽しさやワクワクもあったから。それが10代の青春っぽいなと。

──今作では第二の青春を描こうと。とはいえ、ワーイ!とハジけた青春とはまた違いますよね?

ヤマグチ:はははは、哀愁かもしれないっすね。

──楽曲の根底には悲しさや切なさが漂ってますよね?

ヤマグチ:アルバム名は曲というより、内側の話かもしれないっすね。気持ち的には青春という。10年目の新しい名刺という感じですね。

イワオ:『ニューエイジ』か、『ジュネス』で迷ったんですけど、『ジュネス』の方が響きがいいなと。

──今作の1曲目「相合傘」は、いきなりの失恋ソングです。これをオープニングに持って来たのは?

ヤマグチ:全6曲なので、そのバランスもありましたね。「メリールー」は再録なので最後に入れようと。1曲目は「New Age Blues」か、この曲かどちらかにしようと。

ナガマツ:(「相合傘」は)聴いたときに今までと違う雰囲気があるじゃないですか?「あら?」という感触を持ってもらえるかなと。

──ストリングスも入れてますが、この曲でトライしたことは?

ヤマグチ:お題をもらって、それに沿う感じで作りました。カッティングから始まりますけど、そこから曲を作ったんですよ。サビもたくさん作って、そこから選びましたからね。

ナガマツ:歌詞も結構書き直しました。失恋曲というお題があったので、もっと自然に韻を踏んでみたりとか…それこそさっきの話じゃないけど、チャート上位の曲を聴いて、自分でなるほどなと思うことを反映させました。

──歌詞はスッと入ってくるし、情景が浮かびやすいです。

ナガマツ:歌詞を変えるといっても、メロディがあるから、言葉数が決まってますからね。そこは難しかったですね。うまいことハマッたなと。

■今まで4つ打ちというものに抵抗があった

──「New Age Blues」はアレンジが凝ってますよね。編曲は野間康介さんが関わっていますが、この方は同じ大分出身なんですね?

ヤマグチ:そうなんですよ。最初の挨拶で「大分出身なんです!」と言われて、しかも同じ中学校だったんですよ。それでウワーッ!となりました。

──壁は取れました?

ヤマグチ:ちょっとだけ(笑)。今は取れましたけどね。で、サビの4つ打ちを取り入れたのは野間さんのアイデアで…今まで4つ打ちというものに抵抗があったんです。流行っていたのもあったから。そこに乗りたくない気持ちがあったけど、やってみようかなと。4つ打ちでかっこいい曲もありますからね。

──この曲はクラップも入っているし、4つ打ちもいいアクセントになってあす。

ヤマグチ:あっ、そうだ!クラップを入れるというお題をもらって、その後に4つ打ちを入れたんですよ。

ナガマツ:最初のデモはドラムが入ってなくて、いきなり4つ打ちが入っていたので、オッ!と思ったけど。タイトな4つ打ちというより、ちょっとルーズな感じでいいなと思いました。

──今後は曲によって4つ打ちを取り入れてもいいんじゃないですか?

ヤマグチ:この曲で4つ打ちに対しては、取っ付きやすくなりましたね。曲が良ければ問題ないですからね。

イワオ:自分ら発信で、4つ打ちしようとはならなかったと思うから。歌詞の兼ね合いもあり、これもありなんじゃないかと。リズムで華やかにしたら、聴きやすくなりましたからね。この曲はいい意味で吹っ切れてるし、出来上がったら、いい曲だなと思いました。

──「Morning Glow」は雄大なスケール感のある曲調ですね。この曲は2021年に開催したツアーのために書き下ろしたものですよね?

ヤマグチ:『Morning Glow TOUR』が決まって、特に大きなトピックもなかったので、ツアー名を付けた新曲があったら、お客さんも喜んでもらえるかなと。時間はなかったけど、意外にいい仕上がりになりました。

──歌詞を含めて、ファンの方に向けた内容ですね。資料に「自分が少し大人になった」とメンバーコメントにありますが、これはどういう意味なんですか?

ナガマツ:そうっすね。『東雲』の「朝焼けプロムナード」とかもやる流れで、ツアー名を決めたこともあり、歌詞に対する答え合わせというか。今の自分たちはどうなんだろうと思い、書いたところもあるんですよ。人に対して優しくなったところもあるから。

■もう少し寄り添いたいし、寄り添われたいというか。それはあるかもしれない

──「Morning Glow」を含めて、今作の歌詞はほとんど他者に向けたものばかりですよね?

ヤマグチ:ほとんどそうですね。

ナガマツ:「New Age Blues」ぐらいか、違うのは。もう少し寄り添いたいし、寄り添われたいというか。それはあるかもしれないですね。ただ、「New Age Blues」は尖ってるんですけどね(笑)。

──“噛みつかせてよ”(「New Age Blues」)の歌詞の言い回しは優しさが出てますけどね。そして、「ドレミ・ゴー」ですけど、今作はこの曲がなかったら、かなりダークな作風になったんじゃないかと。

全員:ははははは。

ヤマグチ:既に5曲は出来上がっていて、昔からの俺らの感じが出ている曲を入れようと。

──過去に対バン経験もあるScoobie Doのマツキタイジロウさんが編曲で入ってますよね。

ヤマグチ:コロナになって、無期限の曲作りの中でちょっと違うことをやってみようかなと。マツキさんにはわざわざ大分まで来てもらって、4人でスタジオに入ったんですよ。俺たちがあらかじめやりたい曲を5、6曲送って、それをアレンジしてもらって、その中の1曲なんです。あの方も理論的だし、上手だし、いい形になったと思います。

■3人だけでやったら、こういう仕上がりになってなかった

──何かアドバイスはありました?

ヤマグチ:コード進行も変えたし、ちゃんと転調しているので、それは自分たちではできなかったことだから。

ナガマツ:一緒にスタジオに入ってセッションしたので、その楽しさはありました。「ドレミ・ゴー」は勢いのある曲なので、後半は「こういうフィルで盛り上げていこうよ!」と言われましたからね。

イワオ:ストレートなロックで、ちょっと懐かしさもあるかなと。BOOWY(ふたつめの「O」はストローク符号付きが正式表記)、UNICORN、hideさんとか。自分が聴いてきた感じも出ているから、耳馴染みも良かったですね。

──次の「Shine」は今作の中で個人的にいちばん好きで、歌メロがズバ抜けていいなと。この曲でも野間さんを編曲に迎えてますよね?

ヤマグチ:ギターだけのイントロがあったんですけど、アレンジを一度投げたら、サビ始まりになったんですよ。だから、多くの人に届く仕上がりになったんじゃないかと。

イワオ:やっている側としてはアレンジが加わっている感はありますね。3人だけでやったら、こういう仕上がりになってなかったと思う。野間さんがいたからこそ、完成した曲ですね。

ナガマツ:それぞれのフレーズがちゃんと重なって完成してますからね。3人だけでスタジオで合わせても、なかなかそうはならないから。ライヴは難しそうだなと。

──あっ、そうなんですか。ライヴで再現するのが難しそう?

ナガマツ:そうですね。いちばん難しいかもしれない。

■作品全体を通して歌詞は弱さが出ていて、寄り添う感じはある

──あと、“泣いてもいい 泣いたらいい 泣きつかれたら もうこれ以上/悪い方に進む事は 無いから”の歌詞もいいですね。かっこつけてないし、弱さを曝け出しているところがいいなと。

ナガマツ:素直ですよね。作品全体を通して歌詞は弱さが出ていて、寄り添う感じはありますからね。無理しなくていいし、頑張らなくていいよって。

──曲調、歌詞もそうですが、少し気持ちが沈んだときの心情に寄り添ってくれるアプローチが多いなと。

ナガマツ:ライヴも詰まってなかったし、時間もあったし、自分と向き合う時間も増えたから。自分で言うことじゃないかもしれないけど、根暗なんで(苦笑)。自分と似たような人が救われるような歌詞を書こうと。

──最後に「メリールー」の再録を入れてますが、これは?

ヤマグチ:ソニーから、10周年だし、サブスクにも入ってない曲なので、入れてほしいと言われたんですよ。最初は渋っていたけど、結成1、2年目からやっていた曲なので、10周年の記念にいいのかなと。

──アレンジは大きく変えてませんよね。それでもオリジナル曲と聴き比べると、やはり違うというか、大人のSIX LOUNGEに仕上がっているなと。

ヤマグチ:俺がほかのアーティストさんの再録曲をあまり聴かないほうなので、できるだけ寄せようと。普通に寄せても、声の質も違うし、演奏力も上がっているから、別物になるだろうなと。あえてヘンにアレンジせずにやりました。

■新曲をやれるライヴが久しぶり

──バンドの成長が感じられるいい再録だと思います。そして、10月からツアーが始まりますが、どんな気持ちで回ろうと思ってますか?

ヤマグチ:新曲をやれるライヴが久しぶりですからね。ツアーが先に始まって、その途中で新作がリリースされる流れになるんですけど、その反応も楽しみですね。

ナガマツ:セットリストはまだ決めてないんですけどね。新曲がどんな反応をもらえるかわからないので、それも楽しみだなと。

イワオ:1年ぶりのワンマンツアーになるし、前回は回れなかったところも今回は行くんですよ。ワクワク、ドキドキ、ハラハラが入り混じっているけど、ワクワクがいちばん強いですね。あと、今はライヴをやりたい気持ちが強いから。よっしゃ、ツアー行くぞ!って感じですね。

*インタビューは10月4日に実施

INTERVIEW & TEXT BY 荒金良介
PHOTO BY 大橋祐希

リリース情報
2022.10.26 ON SALE
EP『ジュネス』

ライブ情報
SIX LOUNGE TOUR 2022“ジュネス”
10/15(土)大分 T.O.P.S BittsHALL
10/22(土) 高松 DIME
10/29(土) 金沢 EIGHT HALL
10/30(日) 新潟 NEXS
11/5(土) 仙台 Rensa
11/12(土) 札幌 PENNY LANE24
11/13(日) 旭川 CASINO DRIVE
11/19(土) 広島 CLUB QUATTRO
11/20(日) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
11/23(水祝) 大阪 なんばHatch
11/26(土) 名古屋 DIAMOND HALL
12/4(日) Zepp DiverCity (TOKYO)
12/10(土) Zepp Fukuoka

プロフィール
SIX LOUNGE
シックスラウンジ/ヤマグチユウモリ(Vo)、ナガマツシンタロウ(Dr)、イワオリク(Ba)。2012年に結成された大分出身の3ピースバンド。 ストレートなロックサウンドと妖艶さ、荒々しさも持ち合わせ、高音域から低音域までしっかり歌いきる ヤマグチユウモリ(Vo)の圧倒的な歌唱力が特徴。ザ・ミッシェル・ガン・エレファント、ブランキー・ジェット・シティといった一世を風靡した無骨で泥臭い日本語ロックンロールの面影を感じさせる、ストライクゾーンど真ん中に直球を投げ込むような、小細工一切なしの硬派でアツいギターロック。青春の葛藤や衝動、切なさなどを歌詞に込め、安定感のある歌と演奏が魅力。