「レジ」から見えてくる「日本」のあまりに残念な6大欠点とは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

「そっか、日本と韓国って」と検索したことがあるだろうか?

「グローバルな視点で、確かな学術論文に依拠して書かれている」「爆笑エピソードが満載で、絶対にこの著者にしか書けない」と話題を呼び、『週刊ダイヤモンド』『PRESIDENT』等のビジネス誌の書評欄や、教養を重視する六本木アカデミーヒルズの会員制ライブラリーの推薦図書としても高く評価されているのが、新刊『そっか、日本と韓国って、そういう国だったのか。』だ。

著者は、『最強の働き方』『一流の育て方』などのベストセラーでもよく知られる、著作累計70万部のムーギー・キム氏。京都に生まれ、日韓両国の文化の中で育ち、フランス・香港・シンガポールで学び働いてきた。同書は「人生を通じて最も書きたかった、両国の視点を融合した“日韓関係の教科書”」という。

以下では著者のムーギー氏が長年研究してきた、日本と世界のレジを比較し「レジでバレる『日本社会』に潜むあまりに残念な6大欠点」について解説する。

レジにこそ「日本社会が抱える深すぎる闇」がある

「えらいコーヒー、値段上がりましたね? 前まで180円や200円や言うてたのに、もう230円か……。味は一緒よね? 本部がどんどん上げてきてるの? やっぱり売り上げに影響ある?」


「ええ、すべてどんどん、本部が上げています。まぁ、このエリアですから、値段が上がっても正直、売り上げにインパクトはないですね……」

長年、家の隣にあるという理由で通い詰めている某大手コンビニのレジで、後ろが混んでいるのに今日も長々と与太話を長引かせ、店長と居並ぶ客を閉口させるのは、『そっか、日本と韓国って、そういう国だったのか。』を上梓する一方で「レジ研究家」をも自認する私、ムーギー・キムである。

私は長らく、日本のレジにこそ、日本社会が抱える「深すぎる闇」が見えると警鐘を鳴らしてきた。

こちらはガリガリ君1本を買いたいだけなのに、その直前に立ちはだかり、「あれ? ポイントカードのアプリ、どこに行ったっけ?」とスマホをひたすらスクロールしつづけ、小銭やらカードやら携帯のアプリやらを探してもたつき、列を大渋滞させる「残念なレジ支払者」たち。

時には、支払うときに小銭をもたもた財布から取り出し、揚げ句の果てに1円足りずに「なんで、こういうときに限って1円が足りひんのや? 1円を馬鹿にするものは、1円に泣くというのは、ほんまやな!」などと、伝統のことわざを繰り出すのだから、手が付けられない。

ここでは「レジでバレる日本文化の特徴」に関し、隣国「韓国のレジでバレる特徴」や、その他世界各国のレジと比較することで、「日本社会の問題点」に、広い国際的視点と深い教養で迫っていきたいと思う。

以前のコラム「『レジ』でバレる!二流の人の超ヤバい3欠点」で書いたように、世の中にはレジに並んだ途端、「人としての残念さ」がバレバレにバレてしまう人たちがいる

そして今回のコラムで論じるのは、レジでバレる二流っぷりが、個人の問題ではなく、実は国の「レジ文化」という制度的な側面にあるのではという問題意識で、私が長年探求してきた研究結果である。

他国と比べても、圧倒的に「デジタル化」が遅れている

【1】今でも「現金以外お断り」の店も多く、「デジタル化」が遅れている

大勢の人が握りしめたおかげで湿り気が多く、券売機に入れても「ピー」という不快な音とともに何度も突き返されてくる「二流のお札」。紙幣を折り曲げたところから少し破けてしまい、「相手に受け取り拒否されたらどうしよう」と、ドキドキさせられることも少なくない。

おまけに、たまたま入ったラーメン屋さんの券売機などで使える紙幣が「1000円札と2000円札のみ」とか書いてあるのを見ると、「2000円札っていったい、どこに行ったんや!!」と小渕元首相のことを懐かしく思い出す人も、少なくないのではないだろうか。

日本でもカードを使える店は増えてきたが、それでも韓国のような「ほぼすべてカード決済が当たり前」という国に比べると、「レジにおける現金使用率」は非常に高い

その結果、日本では歩いているとジャラジャラ音がうるさく、これまで何回トイレの床に落とされたかわからない「昭和52年」などと書いてある「昔ながらの硬貨」を持ち歩き、「不衛生で非効率な現金決済」を強いられることが、今でも非常に多いのだ。

これに対し、韓国でも中国でも、ほかの東アジアの国々では、基本的に「非キャッシュ支払い」である。

つまり、レジで現金を支払うたびに、「日本のデジタル化の遅れ」がバレバレにバレてしまうのだ。

日本のレジで私が最も腹立たしいと思うひとつは、こちらは1秒でも急いでその場を立ち去りたいのに「楽天ポイントはお持ちですか」「ドコモポイントカードはお持ちですか」「JA(農協)ポイント……」などと「いろいろなカードの保有者かどうかを聞かれる点」であろう。

「紙のポイントカード+ハンコ」は他国にほぼない

【2】「ポイントカードの口頭確認」がいちいちうるさく、時間を浪費する

多くの方はレジでは、一刻も早く家に帰りたい一心で、イライラしているものではないだろうか。

そんななか、全員が使っているとも限らない「楽天ポイント」や「ドコモポイント」を来る客全員に言われても、余計な時間がかかるばかりで、もともと使っていない人からすれば、それでメンバーになってコツコツとポイントを貯めようなどとは思う人は少ないのではないだろうか。

もちろん、なかには使う人もいるだろうが、使う人は自発的に「私は楽天ポイントを貯めています!」と意思表明すればいいだけの話だと、私には思えるのである。

なお、この手の「安全に関わること以外のことで、何でもかんでもマニュアル通りにいちいち聞かれる」ことにイライラするのは、私が短気だからではあるまい。

そもそも個別ニーズがある場合は、客から言うはずであり、何も店側が全員にマニュアル通りにダラダラ確認する必要はないと私には思えるのである。

【3】「ハンコ文化」が残っていて、余計なスタンプカードを渡される

おまけに、頼んでないのに「10回たまったら、1個おまけ」といったスタンプカードを勝手に渡され、そこにはハンコが2個、3個押してあるような店もある。

しかしながら、各店舗でそれをもらっていては、せっかくのスリム財布が、カードだらけで大爆発してしまうではないか。

なお、私が過ごしてきた韓国でも香港でもシンガポールでもフランスでもそうだが、他国のレジで、このように「何々ポイント持っていますか?」と執拗に聞かれたり、ハンコが押されたバウチャーをもらったりすることは、まずありえない

香港の「スリーシックスティ」でも韓国の「Kマート」でもフランスの「カルフール」でも、同様だ。私が住んでいたシンガポールのボタニックガーデンの近くの大きなスーパーでも、レジでいちいちこんなこと聞かれたことは、ごくたまにしかなかったのである

これは「ハンコ文化」がそもそもないか、ほぼ消えているので「ハンコバウチャー」が存在しないからだ。

またどこの国でも「セルフレジ」が浸透している

ちなみに私はこの箇所をソウルのロッテマートで書いているのだが、「セルフレジ」では、どのポイントカードかも自分でボタンを押して選べ、そして特典も当然デジタル加算される仕組みになっているのである。

レジの支払い時にポイントカードの口頭確認」や「スタンプカードをもらいまくる」ことひとつとっても、レジで「何でもマニュアル通り」や「DXの遅れ」など日本の残念な欠点がバレてしまうのである。

ただでさえ時間がかかりがちな日本のレジで、さらなる悪手になったのが「レジ袋有料化問題」だ。

【4】手ぶらで野菜や肉を山盛り買っているのに、「袋は要りますか?」とマニュアル的に聞いてくる

別にレジ袋に数円払うのは、悔しくはない。ただ、山盛りの商品をかご2つに入れてレジに運んできた手ぶらの私に対し、「袋は要りますか?」とは「愚問中の愚問」ではなかろうか。

私がカンガルーかフクロモモンガの実写版でもない限り、袋なしに大量の肉やら野菜やらヨーグルトやらチーズやら、魚やらガリガリ君やらを、レジから家に無事運べるわけがないのである。

仮に袋なしで歩いたとしたら、一歩歩くごとにポロポロ腕から商品がこぼれ、家に着くころにはガリガリ君の箱くらいしか手に残ってないのではなかろうか。

日本のレジには「心休まる暇」がない

なかには、安いレジ袋がなかったり、立派な紙袋を30円で販売したりする「ささやかな商機をうかがっているかのようなお店」も存在する。このような事情が積み重なり、多くの日本人は、レジで心が休まる暇がまったくないのである。

また、お年を召して指が乾燥しているからか、指を舐めてから紙幣を触る人(たいてい無神経な高齢者の男性)がいるが、そんな唾だらけの「二流の紙幣」を、20年前から大切に使っている私の財布に入れるわけには決していかないのである。

なお、この「レジ袋有料化問題」に関しては、しばしば小泉進次郎環境相(当時)を恨みながらレジ袋を買いがちである。しかしこれを決断したのは小泉氏が就任する前のときなので、小泉氏は実は八つ当たりされているという面もあることを付け加えておきたい。

おまけに韓国のコンビニでもレジでは100ウォンで袋を買うように変わってきているので、この点では日韓仲良く「不便な二流のレジ」という暗闇に転落していると考えていただいて、差し支えないだろう。

まだまだ日本のレジは、客を自由にしてくれない。イライラしながらレジ袋を買ったかと思いきや、今度は、実にゆっくりと優雅な手つきで、袋に商品を整然と整理して入れはじめてくれる店も存在する。

【5】「過度なまでの丁寧な袋詰め」は「不要サービスの過剰供給」の象徴

レジ袋内で余計なスペースができるのは、その店のポリシーで御法度なのだろうか、それはそれは丁寧に無駄なスペースが発生しないようにきっちり詰めてくれるのだ。

おまけにやっと終わりそうだと思ったら、どこか気に食わなかったのだろうか、さっき入れた桃を取り出して、さらに美しく詰め直し始めてくれるではないか。

レジでの袋詰は「不要サービスの過剰供給」の象徴

いくら綺麗に袋詰めしたところで、家に着いた途端、すぐバラバラになる。はたしてあの整然とした袋詰めのこだわりには、「パッパッとやってくれる」というスピード価値を上回る効用はあるのだろうか

おまけに袋は「大」「中」「小」から選べとやたらとカスタマイズさせてくれるのだが、「適当に合いそうなサイズでやってや!」ともどかしく思うのは、決して私だけではないはずだ。

しかも散々待たされた挙句、財布を忘れたことに気づく「私のような二流のレジ支払者」もいるのだから、もはやかける言葉も未来への希望もない、と言って差し支えないだろう。

またカード支払いで暗証番号を入力するとき、店員さんが超大げさに後ろを向いて手で目を覆う「私は絶対、あなたのパスワード見てませんからね!」のパフォーマンスは、日本のレジならではの風物詩であろう。

ともあれ、この「不要な過剰サービスが多く、需要がなくても供給が過剰な『サービスの需給ギャップが多い』」ことも、日本経済全体で20兆円あるとも言われる需給ギャップの一因であるようにも思えるのだ。

最後に日本のレジでバレるのが、「給与水準の低下」だ。

【6】日本の給与水準が相対的に低下し、「外国人が日本で働く報酬的なメリット」が減少している

最近は、レジで働いている方の国籍が大きく変わってきたことにお気づきだろうか。以前は韓国や中国の留学生が多かったが、今ではそんな方々もだいぶ少なくなり、ネパールやらラオスやら、東南アジアの方々がずいぶん増えてきた。

これには、もはや賃金水準で韓国のほうが高くなり、赤坂の韓国クラブからもコンビニからも、若い韓国人がずいぶん姿を消したことと同じ背景がある。

実際のところ、以前は都内某中心部の客引きは「台湾クラブ」や「韓国クラブ」が多かったのだが、今では見事にどこもかしこも「ベトナムクラブ」に大変化している。

このように、アジアの国の中でも「日本で働く報酬的なメリット」がずいぶん減少していることも見て取れるだろう。

ちなみに私の家のすぐ隣のコンビニは、経営者が中国人で、スタッフはネパール人の方々が多いのだが、顔なじみになって子どもにも毎回愛想よく話してくれるものだから、私もヒマラヤ旅行したときの話やらで、冒頭で紹介したような与太話をするようになった

そこでしばしば話が長引いて、後ろの人に若干申し訳ないことも一度や二度ではないのだ。

日本のレジには「多様な社会問題」が凝縮している

このように「何でもマニュアル通り」にせよ「DXの遅れ」にせよ「不要サービスの過剰供給」にせよ「所得水準の相対的低下」にせよ、極端な言い方をすれば、日本のレジには「社会問題のほぼすべて」が凝縮して表出していることがわかるだろう。

しかし読者の視点で見れば、この「レジでバレる!」の記事を書くために、日韓両国のコンビニやスーパーでずっと立ちながら、レジと「二流の支払いシーン」をひたすら観察している私自身が、恥ずかしい「マイナス無限大の二流」に転落していると考えて差し支えないのだろうか?

その答えは、「そっか、日本と韓国って、そういう国だったのか。」と検索して「この著者は嫌いだが、その新刊はレジに持っていく価値があるな」とお買い求めいただくときに、レジで「どのような発見」と「驚きの支払いシーン」を目撃されるかで、真相がわかることであろう。

(ムーギー・キム : 『最強の働き方』『一流の育て方』著者)