【MLB 優勝決定S】大舞台でも“変化”を恐れぬダルビッシュ 好投の裏にあった「数センチ」の微修正
打線の援護なく敗戦も7回3安打2失点の好投
■フィリーズ 2ー0 パドレス(リーグ優勝決定シリーズ・日本時間19日・サンディエゴ)
パドレスのダルビッシュ有投手が18日(日本時間19日)、フィリーズとのリーグ優勝決定シリーズ第1戦に先発し、7回を投げ3安打2失点7奪三振1四球の内容で、今ポストシーズン3戦目の登板で初黒星を喫した。【サンディエゴ(カリフォルニア州)=木崎英夫】
失点はソロ本塁打2本のみ。前日の会見で警戒したハーパーに先制弾を許した。
序盤の3回を1安打無失点に抑え、迎えた4回。3番リアルミュートを見逃し三振に仕留めると、4番DHのハーパーと対峙。過去の対戦から得たデータも踏まえ事前の準備で整理した傾向から選択した1球は芯を外す93マイル(約150キロ)のツーシーム。打ち取ったと感じた当たりだった。
「本当は外低めにいきたかったんですけど、外高めでも大丈夫というところだったので。フォーシームはすごく打つんですけどツーシームはあまり打たれないというところで。だからちょっとあれはビックリでしたね」
ポストシーズンここまで6試合に出場し、打率.435、3本塁打、3二塁打、OPS1.437と勢いづくスラッガーの鋭い振りに押し込まれたが、割り切れる一発だった。悔やんだのは、6回。先頭の1番シュワーバーに浴びた2点目の本塁打だった。真ん中に入る初球の87マイル(約140キロ)のカットボールを、狙いすましたような一振りで仕留められ、その打球は右翼2階席へ突き刺さった。
「1対0で相手ピッチャーがいいピッチングをしているところで完璧に打たれてしまった。1対0でキープできていればみんな気持ちもまた違ったと思うんですけど、ちょっとチームが沈んだかなという感じがしました」
プレートの踏み位置をいつもの三塁側からわずかに中央寄りにずらした
フィリーズは同地区、ナ・リーグ東地区の覇者で昨季のワールドシリーズを制したブレーブスを倒し勝ち上がってきた。その相手に、ダルビッシュは秘策を立てて臨んだ――。プレートの踏み位置をいつもの三塁側からわずかに中央寄りにずらした。
その変化の裏に、何を思ったのか。問いかけた。
「右バッターにツーシームを投げたくて、ずっと何か月か三塁側を踏んでいたんですけど、そこからツーシームを右に投げるのがすごく窮屈で投げづらくて。スライダーを生かすためのツーシームを投げたかったから、真ん中のほうにしました。“数センチ”です」
淡々と返したが、リーグ優勝決定シリーズの初戦を任された大事なマウンドでも、変化を恐れなかった。その目論見は結果に結び付く。右打者には1本のヒットも許さなかった。
降板するまでの6回で、最も球数を投げたのが初回の立ち上がりの19球。これも、右手の使い方を微修正した影響で、この試合がいわば、初の実践となった。
「右手の使い方というか、力を入れる部分というのを変えて。それをアジャストするのにょっと時間がかかったというところですね」
「中3日でも中4日でも、どっちでも対応できるように」
気負うことなく「レギュラーシーズンのホームゲームだと思って準備をした」という一戦で、フォームの微修正や軸足の踏み位置の変化といった“ダルビッシュらしい取り組み”を封印することはなかった。
7回戦制(4戦先勝制)の同シリーズで、1つの負けが明日を大きく左右する戦いはここまでの道のりと変わらない。後がなくなれば、場所を敵地のフィラデルフィアに移しての第4戦(同22日)、または第5戦(同23日)での登板もあり得る。仮の問いかけにも、ダルビッシュは、強い気持ちを前面に出し、こう言い切った。
「中3日でも中4日でも、どっちでも対応できるように。自分はもう36歳ですし、いつ体が壊れて引退しても全然大丈夫だと思って投げているので。チームのためにちゃんと準備をしたいと思います」
会見を終えた右腕は、クラブハウスを出ると、通路際で待つ家族とともに球場を後にした。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)