3HRを浴びながらもPS2勝目を挙げたパドレス・ダルビッシュ有【写真:ロイター】

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3回まで3被弾も「ソロはオッケーといつも思っている」

■パドレス 5ー3 ドジャース(地区シリーズ・日本時間13日・ロサンゼルス)

 パドレスのダルビッシュ有投手が12日(日本時間13日)、ドジャースとの地区シリーズ第2戦に先発。盟友のクレイトン・カーショー投手と投げ合い、6回途中7安打3失点7奪三振の粘投で、対戦成績を1勝1敗のタイに持ち込む貴重な勝利を牽引した。【木崎英夫】

 負ければ大手をかけられる大事な一戦のマウンドで、ダルビッシュはレギュラーシーズンと変わらない粘りの投球を見せた。序盤は毎回のソロ本塁打を被弾したが、「3ランや満塁ホームランではなかったですから。ソロはオッケーといつも思っているので」と割り切り、チームに勝機をもたらす投球を粘り強く続けた。

 前日のシリーズ初戦でクレビンジャーが狙い打たれた内角ゾーンには、初回からシンカーを交ぜバットの芯を外す工夫をした。

「感覚はいつも通りでした。そんなに深く考えるわけでもなく、ネガティブになることもなく、ポジティブになることもなく淡々と投げてました」

 5万人を超える大観衆で埋まるドジャー・スタジアムで、1つの目標にしてきたカーショーとのプレーオフ対決が実現しても、今季リーグ最多の25度のクオリティスタート(6回以上自責点3以下)を記録した右腕は、独自に収集した「傾向と対策」から逸脱することなく99球を投げ抜いた。

俊足ベッツの二盗を阻止…変化球を投じた意図とは?

 試合後、ダルビッシュの粘投を称える言葉を連ねたボブ・メルビン監督が、声のトーンを上げて称えたのが5回裏の場面だった。ジャイアンツやオリオールズなどで捕手として10年のメジャー経験を持つ同監督は、オースティン・ノラ捕手とダルビッシュが共同作業で成立させた俊足ムーキー・ベッツの二盗阻止に感じ入った。

「今年1番の送球だった。この試合の大きな山場でそれが出た。ユウは前半戦よりも後半戦のほうが(牽制で)うまく走者をとどめていると思う。それで送球する時間を(ノラに)与えたんだ。それがあの送球を生んだ。走者を警戒して成し遂げた2人を称えたい」

 ただ、この共同作業は、“常識破りの1球”が生んだことを付言しなければならない。

 四球で出塁させたベッツに対しダルビッシュは3球連続の牽制で警戒。そして、打席に立つ2番トレイ・ターナーへの初球に選択したのが速球ではなく変化球だった。

 理由を問うと、ダルビッシュは意図を洗い出した。

「外への真っすぐでもよかったんですけど、(ベッツが)走ってターナーの逆方向へのゴロで一、二塁間を抜けるというのが一番怖かった。となれば、一、三塁になってそこでフリーマンを迎えますから。スライダーでいくと、ベッツが走ったとしてもショートゴロとかの可能性が高いと思ったので選びました」

ノラ「軌道は分かっているので、捕球しやすい部分で受けられた」

 並の投手であれば、外角高めのボール球を迷わず選ぶはず。だが、ダルビッシュは違う。走者を置いた場面でターナーが右方向を狙う傾向は実戦からもつかみ取っている。誘いながらも打ちにくい球でストライクを取りにいった。しかし、選択した半速球では捕球までの時間が割を食う。ノラはどう考えていたのか――。

「あの1球はとてつもなく大きいよ。スライダーでもなくカーブでもなく、速いカッターが外寄りに来た。ターナーも打ち損じを懸念して見送らざるを得なかったものね。僕の送球? それはね、今季全部ユウの登板を受けているから、ボールの軌道はわかっている。だから捕球しやすいミットの部分で受けられた」

 今季ダルビッシュの全30登板を受けてきたノラは、球種によってミットの捕球部分までをイメージできるほどに至っている。さらに、捕球後が秀逸。ノラは肘を下げ気味にして送球。必然的にシュート回転したボールが、ヘッドスライディングの左手へドンピシャリのタイミングでベースカバーのクロネンワース二塁手のグラブに収まった。これは、かつてマリナーズでマスクを被った城島健司が、走者に好スタートを切られた時によく見せた裏技と重なる。

 ダルビッシュ有とオースティン・ノラの息づかいが聞こえてきそうなワンプレーが、大事な1戦の潮目となった。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)