ワイルドカードで2勝を挙げ、2年ぶりの地区シリーズに駒を進めたパドレス【写真:ロイター】

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メッツとのWCシリーズでは8番グリシャムが2戦連発、打率.500

 メッツとのワイルドカード(WC)シリーズ(3回戦制)で2勝を挙げ、2年ぶりの地区シリーズに駒を進めたパドレスが11日(日本時間12日)から始まる宿敵ドジャースとの地区シリーズ(5回戦制)に挑む。ダルビッシュ有投手は12日(同13日)の第2戦登板が決まり、1戦目はマイク・クレビンジャー投手が先発する。一方のドジャースは、1戦目に今季リーグトップの防御率2.16を記録した左腕フリオ・ウリアス投手、2戦目では通算197勝、3度のサイ・ヤング賞に輝いたクレイトン・カーショー投手が先発する。

 今季メジャー最多の111勝を挙げたドジャースは、両リーグトップの847得点と出塁率.333を誇る。同じ部門でパドレスは13位と8位で、本塁打でもドジャースが59本上回る212本を記録している。投手力でもドジャースがメジャー1位の防御率2.80と被打率.209を誇りパドレスを引き離し、今季の対戦成績は14勝5敗とした。

 投打で劣るものの、パドレスはニューヨークでの短期決戦で、これまでつながりに欠けていた打線が機能。その流れを作ったのが、25歳の中堅手トレント・グリシャムだ。調子に波があり9月には先発メンバーから外された。今季の通算打率はランクイン130選手中で最下位の.184。ところが、同シリーズ初戦から8番で先発起用されると、マックス・シャーザー、そしてジェイコブ・デグロムのサイ・ヤング賞右腕から2戦続けて本塁打を放った。雌雄を決する第3戦では、適時打を含む2安打と四死球で4打席連続出塁を果たした。守備でもフェンスに激突する好捕で走者の生還を阻止した。
 
 負ければメッツのシリーズ敗退が決まる第2戦で、バック・ショーウォルター監督は1点リードの7回から守護神エドウィン・ディアスを投入。剛球右腕が最初に対峙したのが8番グリシャムだった。「我々を痛めつけてきたグリシャムから上位に回る。そこにベストの投手をぶつけたかっただけ」と奇策に触れた。

7-9番はキム・ハソン、グリシャム、ノラで固まった

 シーズン中のパドレスは、打線がつながらない戦いが多々あり、8月に移籍してきたフアン・ソト、主砲マニー・マチャドの長打を待つという空気が漂っていた。ところが、ニューヨークの3夜で、下位打線にも血が通い出した。打率.500のグリシャムの前後は、毎試合出塁を果たした7番金河成(キム・ソハン)と打率.444を残した9番ノラで固まった。

 メッツを退けた試合後、グリシャムは「僕を信じて使い続けてくれた監督に心から感謝します」と背中を押し続けた指揮官へ言葉を贈った。

 シリーズ3戦で忘れられないシーンがある。それは、第2戦に敗れ、逆王手をかけられた試合後のボブ・メルビン監督の柔和な表情だった。

「みんなの気分はいいですよ」

 短い言葉のフレームにメルビン監督の心中を探した――。勝負師が持つべき品にも上下がある、と感じ入った瞬間だった。

 念願のドジャース撃破へ、パドレスは一丸となって挑む――。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)