エンゼルス・大谷翔平(左)、ヤンキースのアーロン・ジャッジ【写真:ロイター】

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15勝&34本の大谷か、61年ぶりリーグ新62発のジャッジか

 エンゼルスの大谷翔平投手は今季も15勝&34本塁打とMVP級の活躍を見せた。しかしヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手がリーグ新の62本塁打を放っており、“MVP論争”は日々激しさを増した。米メディア「FOXニュース」は、「アーロン・ジャッジvsショウヘイ・オオタニ。ア・リーグMVPを決めることはなぜ難しいのか」として、どちらも栄冠に相応しいことを伝えた。

「ア・リーグMVPは、アーロン・ジャッジかショウヘイ・オオタニのどちらかが受賞することになる。しかし、どちらが勝つべきかを決めることは、ほとんど不可能だ」

 ジャッジは62号を放ち、ア・リーグの本塁打記録を61年ぶりに塗り替えた。「バリー・ボンズ、マーク・マグワイア、サミー・ソーサがホームランの記録を達成した際に、運動能力を向上させる禁止薬物(PED)の使用が疑われていたために、ジャッジが真のホームランリーダーであると主張する人は多い」と同メディアはいう。さらにジャッジは首位打者こそ逃したものの、あと少しで3冠王というほどの打棒を見せた。

 とはいえ、大谷も負けていない。「オオタニは何と言ってもユニコーンだ。『和製ベーブ・ルース』であるだけでなく、ルースが決して成し遂げられなかったことをやってのけている」「これは信じられないようなことで、投打両方でエリートだ」と史上初の“ダブル規定到達”を評価。OPSがムーキー・ベッツ、ピート・アロンソ、フアン・ソトより高く、防御率はマックス・フリード、シェーン・ビーバー(2020年ア・リーグのサイ・ヤング賞)、コービン・バーンズ(2021年ナ・リーグのサイ・ヤング賞)よりも低い。

 MVP投票は、30人の投票者がどちらがより素晴らしいと思うかで決められる。「『最も価値のある(most valuable)』という言葉には、様々な異なった定義が存在する」とし、「最高のチームの最高の選手なのか? WARが最も高い選手なのか? 単に数字が一番いい選手なのか? 毎年変わっているような気さえする」と頭を悩ませる。「成績の悪いチームの選手がMVPを受賞することは稀だ。しかし選手の価値というものは、チームが強いかどうかで変わるものではない」と選出の難しさを述べた。

「成績が悪いチームにいたから選手の価値が下がるわけではない」

「確かに、アーロン・ジャッジなしにはヤンキースはおそらくポストシーズンに進出できなかっただろう」と同メディア。しかし7月15日(日本時間16日)時点で、ヤンキースは62勝28敗でMLBでベストの記録を保持していたが、ジャッジはこの時、打率.274、OPS.950。素晴らしい数字を残していたが、最終的な成績とは程遠いものだった。ジャッジが不振でも、ヤンキースは球界最高の投手陣を持ち、ジャンカルロ・スタントンとホセ・トレビーノ、アンソニー・リゾとグレイバー・トーレス、マット・カーペンターなどが活躍したからだ。

 一方、8月2日(同3日)から9月3日(同4日)までの間、ヤンキースはジャッジが打率.283、OPS1.063を記録したにもかかわらず、9勝20敗。8月になるとトーレスが球界最悪の選手の1人となり、スタントン、リゾ、カーペンター、DJ・ルメイヒューなどが怪我をして、ジャッジはいるもののヤンキースのラインナップの破壊力は低下した。「野球は1人の選手が多くのことをコントロールできるようなスポーツではない」と断言した。

 エンゼルスの場合、トラウトとオオタニが1年を通してほとんどの間スタメンで打席に立っていたが、4〜9番打者は、合わせて球界最悪のOPS(.609)と2番目に悪い打率(.213)という成績。「73勝しかしていない。しかしオオタニとトラウトがいなければ、60勝するのが精一杯だっただろう。何度も言うが、成績が悪いチームにいたからといって、選手の価値は下がるわけではない」と主張している。

「投票者は『ベストチームのベストプレーヤー』ではなく『最も価値のある選手』と思う人に投票すべきだ。しかし、より価値のある、というのはどういうことなのか? それに対して、間違った答えはない」

 投票がタイになる可能性もある。「野球史上でおそらく最も見事なオフェンシブシーズンか。これまで見たこともない、そして二度と繰り返すことができないような二刀流シーズンか」。大混戦が見込まれるMVPの栄冠は、どちらが掴むのだろうか。(Full-Count編集部)