2021年分の「民間給与実態統計調査」に注目した(写真はイメージ)

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2021年に1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与(年収)は、前年比2.4%増加して、443万円となった。2020年に新型コロナウイルスの感染拡大により、雇用が不安定化して減収に転じたが、2021年は2019年並みに所得が戻ったかたちだ。

平均給与は男性13.1万円増、女性9.4万円増

国税庁は9月28日、2021年分の「民間給与実態統計調査」を発表した。それによると、給与所得者数は5931万人と前年から3万人増加した。このうち、1年を通じて勤務した給与所得者は5270万人、1年未満の勤続者は661万人だった。

ここ10年間の動きを見ると、1年勤続者の給与所得者は着実に増加している。2012年の4566万人から、2021年には5270万人に増加した。一方、1年未満勤続者は2019年に910万人まで増加した後に、減少に転じた=表1。

男女別では、男性3061万人で前年比16万人(0.5%)減少した。2012年の2726万人から順調に増加を続けていたが、8年ぶりの減少となった。

一方、女性2209万人と前年比41万人(1.9%)増加した。女性は2013年以降、増加が続いていたが、2020年に同55万人(2.5%)減少した。これは新型コロナ感染拡大の影響による雇用調整が女性を中心に行われたためと見られている。2021年は増加に転じたものの、新型コロナ前の2019年の2223万人までは回復していない=表2。

それでは、1年勤続者の平均給与の状況を見ていこう。

平均給与は443万円と前年比10.2万円(2.4%)増加した。ここ10年間では2012年の408万円から2018年の441万円まで増加を辿ったが、2019年、2020年と減少していたため、2021年に同10万円増加したが、やっと2018年水準近くに戻ったかっこうだ。

男女別にみると、男性の平均給与は545万円と前年比で13.1万円(2.5%)増加した。22019年に同で5万円(0.9%)、2020年に同8万円(1.5%)減少していたため、男性の平均給与は2018年とほぼ同額に戻ったかっこうだ。

一方、女性は302万円と前年比9.4万円(3.2%)増加した。女性の平均給与が300万円を超えるのは初めて。女性の場合には平均給与は増額が続いていたが、2020年に新型コロナの影響で同3万円(1.0%)減少したが、2021年は過去最高水準となった=表3。

正社員は12.7万円増、正社員以外は21.4万円大幅増...しかし

1年勤続者の平均給与は男女ともに新型コロナ感染拡大の影響で減少した2020年を乗り越え、2021年には増加し、新型コロナ前の水準に戻ってきている。

とくに女性の場合には、過去最高額となった。だが、同じ1年勤続者でも正社員と正社員以外では、大きな賃金格差がある。

1年勤続者のうち正社員の給与所得者は3588万人で男女別では男性2368万人、女性1220万人だった。一方、正社員以外は1271万人で男性429万人、女性843 万人だった。

正社員と正社員以外の平均給与を見ると、正社員は508万円と前年比12.7万円(2.6%)増加した。2018年まで増加が続いていたが、2019年に同1万円(0.0%)減少、2020年に同7万円(1.5%)減少したが、2021年に大きく上昇したことで、それまでのピークだった2018年の504万円を上回った。

一方、正社員以外は198万円と前年比21.4万円(12.1%)の大幅増加となった。正社員と同様に2018年まで増加を続けていたが、2019年には同4万円(2.5%)減少した。ただ、一部を除き企業の経済活動が新型コロナ前の水準に戻りつつあった2021年には、人手不足の影響を受け、正社員以外の平均給与は大幅に増加した。

ただ、正社員と正社員以外の賃金格差を見ると、2012年に300万円だった賃金格差は2019年に328万円にまで拡大した。2020年には前年比8万円、2021年には同10万円ずつ格差は縮小したが、それでも2012年時点までは縮小していない=表4。

このように、平均賃金は新型コロナを乗り越え、回復傾向にある。しかし、依然として正社員優遇の企業姿勢に変化は乏しく、働き方改革、新しい働き方はまだまだ緒に付いたばかりだ。