UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)の近藤ヒデノリ(Hide)と平井美紗(Misa)がお届けするinterfmの番組「UoC Mandala Radio」。クリエイターに“ワクワクする社会創造の「種」を聞く”というテーマで、毎回さまざまな領域で社会創造をおこなっているゲストを招き、未来に向けた創造やアクションについて語らいます。

9月21日(水)の放送では、UoCの主宰である市耒健太郎(いちき・けんたろう)さんがゲストに登場。UoCのこれまでの活動や、伝えていきたいメッセージについて語ってくれました。

(左から)Hide、市耒健太郎さん、Misa


UoCは「We are ALL born Creative. すべてのニンゲンは生まれながらにして創造的である」を理念に、創造性を育む研究機関として2020年に始動。さまざまなプロジェクト、大きなイベント、ゼミも開催し、多くの方と創造性を育んでいます。市耒健太郎さんとともにUoCのこれまでを振り返り、今後の展望について語らいます。

◆UoCの活動を通じて実現できたことは?

Hide:僕らはファーストネームカルチャーなので、ケンタさんと呼ばせてもらいます(笑)。よろしくお願いします。この番組が始まって1年ぐらい、UoCが開校して、2年ぐらいですね。振り返ってみて、ケンタさんが今どのように感じているか、聞かせてもらえますか?

市耒:Hideさんを3年くらい前にメキシコ料理屋で「一緒に大学やりませんか?」と口説いたのが昨日のことのようです。

Hide:嬉しいお誘いでした(笑)。

市耒:それからいろいろありましたよね。いろんな人が流入して、こういう場(UoC)を作って。場を作るっていうのは単なる建築ではなくて、創造性にまつわるプログラムとかお祭りとか、ある種の社会現象みたいなものになってくれればなって、願ってやっているんだけど、本当にワクワクしましたよね。コロナ禍があって、物理的にも精神的にもみんなキュークツになっちゃったから、なんか新しいことをしたいっていうムズムズ感が、企業にも個人にもあって。

Hide:うん。ちょうど始まりがコロナ禍と重なっちゃいましたからね。

市耒:そうそう。社会が、もっと世の中を面白くしたいっていうカメハメ波をずっと溜め込んでるっていうか(笑)、そういう衝動をUoCでは、研究でも授業でも積極的に受け止めてきました。2030年、これからたった7、8年後でさえ、今とはまったく違う、新しい働き方、生き方、学び方になっていると思っていて。そのブループリント(青焼き)みたいなものをみんなで描ききれたかなと思っています。

Hide:2021年は「CREATIVITY FUTURE FORUM」があって、4日間で100人ぐらいのクリエイティブリーダーが集まりましたね。初年度のゼミも7個だったのが、今年のゼミは14個に広がりました。このあいだ修了式が終わったばかりですけど、ものすごく多様でしたよね?

市耒:本当ですよね。いろんな人が来てくれているんですけど、共通項目として感じるのは前提として、「IT」「AI」「データドリブンソサエティ」みたいなのがすごく進んでいるじゃないですか。

Hide:今ってDX(デジタルトランスフォーメーション)がすごく言われていますよね。

市耒:ぼくらの生活がリアルタイムに多次元演算されてしまう中で、その反動における、みんなの創造性への期待っていうのはすごく高いですね。特に、半導体の処理スピードが指数関数的に増しているので、これまで受験とかで必要とされていた記憶力とか反復計算とかは、デジタルアーキテクチャに委ねる社会になる。

Hide:そうですよね。そこはAIに任せることになりそうです。

市耒:そこで僕ら人間に何ができるかっていうと、非連続の絵を描くこと。AIやビッグデータを用いて、どのような社会基盤をつくるのかっていうゼロイチのクリエイティブディレクション。それをしなきゃいけないわけで、UoCには文理芸・産官学いろいろな専門性をもった人が集まってますが、みんなが自分なりの答えを出すのに、UoCを利用してくれています。

Hide:生き物が持っている創造性をどう呼び覚ますか。僕らは「野生」もけっこうキーワードかなと思っています。都会にいながら野生をどう保つか、自分の身体感覚をどう活かすかとか。

市耒:そのために、いろんな人が来られるような仕掛けをしてきた感じですよね。

◆「時代は、発酵型クリエーションへ」〜場や人が醸している状態が、次のクリエイティブを生み出す〜

Hide:(UoCで)すごく感じるのは人間中心主義、人間の意識・頭で考えている世界から、もうちょっと生命中心主義、場所自体が流動的に動いていっている感じをすごく受けたんです。「クリエイティブアニミズム」みたいなものも1個のキーワードだと思います。その辺のお話も聞かせてもらえますか?

市耒:メタファーとしての発酵醸造というものがあって、「醸す」っていうのがすごく重要かと。場とか人が醸している状態というのは、非言語的なオーラみたいなものがありますね。醸している場所や人は「そこにもっと近づきたい」「この人ともっといたい」「ここに住んでみたい」って思わせますけど、残念ながら全然醸していない街角もそれはあるじゃないですか。

それが何なのかっていうのをずっと考えながら、UoCとは別で「発酵醸造未来フォーラム」というのをやってきたんですね。メタファーじゃない発酵醸造っていうのは、もちろん前提として面白くって。僕らの体の細胞の数って37兆って言われているんですね。一方で、僕らたったひとりの腸のなかに微生物が100兆から1,000兆いるって言われています。細胞の何十倍もの生き物が生きてるんです。37兆のうち免疫細胞は2兆、その9割が腸のなかにあるって言われてるんです。

微生物とどういう関係があるかっていうことを考えたときに、発酵醸造物のいいものを摂ることが良くて、例えば、先端的な文化人の方には、(発酵醸造文化を)意識している方は最近、割と多いんですね。発酵醸造は、健康、美容だけじゃなく、最近だと性格にも影響があると言われています。この考え方は、これからどんどん中心的になっていくと考えています。さっきHideさんが言ってくれた人間中心じゃなくて生命中心とか、土や腸のなかにある微生物をどう見るかとか、腸脳相関とかね。

Hide:腸脳相関って何ですか?

市耒:腸と脳がすごく連結しているってことです。

Misa:そういうことなんですね。

Hide:腸が脳にも影響を与えると。

市耒:はい。いろんな脳内ホルモンを分泌するときの、構造的に大きな役割を腸がつかさどっているんじゃないかっていう仮説もあるくらい。

Misa:腸は「第2の脳」ということですよね。

市耒:そうそう!

Hide:ケンタさんの話を聞きながら「醸すことってどういうことなんだろう」と改めて考えていました。醸す場所、醸していない場所という話だと、UoCは「醸し始めている」気がしています。パーマカルチャーデザイナーの四井真治さんという方は、「命の定義って何か知っていますか?」という問いに、命というのは“集めること”だとおっしゃっていたんですよね。

生きている限りいろんなものと関係を結んで、どんどん集めることになる。でも、死んじゃうとエントロピーの法則でどんどん散らばっていってしまう。生きているうちはどんどんいろんなものが集まってくるっていうのは、微生物も人も一緒ですよね。

醸している場所には面白い人が集まっている、みたいな感じですね。UoCにも面白い人が集まったり、植物もあったり。ひょっとしたら虫もいるみたいな、そういうところが醸し始めているのかなって感じがしています。

市耒:僕はそこに、ある種の“明るい闘争”が必要なんじゃないかなと思っています。たとえば、江戸時代には屋台や発酵蔵が並んでいて、船が物を運んで、いろんなストリートパフォーマーや絵師がいたりして質のばらつきが豊かだったんですけど、それが100年ちょっとで空輸×冷凍庫×コンビニ中心の均一TOKYOに書き換わったわけじゃないですか。

市場と経済の効率化を目指すと、どうしても画一化しちゃいます。20世紀的な高度成長っていうのは経済を応援したけど、微生物を無口にしちゃった感じがあるんですよ。

僕は「ネオ・アニミズム」って呼んでいるんですけど、人間も微生物も、違いを認め、違いを楽しみ、もっと創造的な社会を作るためのブレインストーミングを世界中のあちこちですればいいのにって思っています。同調圧力的な人間や企業が多すぎたりすると、どうしても社会は画一化の方向に向かいますから。文化をデザインするときに、なにを仕掛けようとするのかという入り口がすごく重要です。

Hide:そうですね。

市耒:今ある常識から一度離れて、菌や細胞が持つような「微視的な設計力」とスパンの長く広い文明史観みたいな「巨視的な設計力」をうまくぶつけることで、新しい東京、新しい日本、新しい企業の形ができるんじゃないかなと思っています。

Hide:醸した文化を未来に向けて、社会にまき散らしていくというか。クリエイティブな菌を外に出していくのがUoCの1つの形なのかもしれませんね。

市耒:経済が文化をコントロールするんじゃなくて、文化が経済を生むんだっていう証明を、UoCはしていきたいですよね。

次回は、HideとMisaがこれまでの放送を振り返りつつ、UoCのこれからを語ります。お楽しみに!

番組でお届けしたトークは音声サービス「AuDee」 https://audee.jp/voice/show/50088と「Spotify」 https://open.spotify.com/show/6biaO40gUuf4gbI2QhdTsL?si=C2-xOifkQz230V6X514UlAでも配信中。ぜひチェックしてみてください!

<番組概要>
番組名:UoC Mandala Radio
放送日時:毎週水曜23:00-23:30
パーソナリティ:近藤ヒデノリ(Hide)、平井美紗(Misa)
番組Webサイト:https://uoc.world/projects/common/detail/?id=1e5axcdrs7n