左:タント カスタム、右:タント ファンクロス(写真:ダイハツ工業)

先行発表された2022年8月22日から、およそ40日。ダイハツのスーパーハイト軽ワゴン「タント」のマイナーチェンジモデルが、10月3日に発売となった。

スーパーハイトワゴンというジャンルを確立した立役者で、かつては人気においても独走していたが、近年はホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」に続く、3番手が定位置に。苦戦を強いられていた。


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ファミリーカーとしても使われるこのジャンルの軽自動車は普通車とも戦えるため、軽自動車を販売の中心とするダイハツにとって、タントは最需要モデルの1つ。3番手に甘んじているわけにはいかなかった。

新しくなったタントのトピックは、大きく2つ。「タント カスタム」のフェイスリフトと、クロスオーバー風モデル「タント ファンクロス」の新設定だ。

カスタムはノア/ヴォク風フェイスに

エアロパーツを装備し、タントシリーズの上級モデルの位置づけでもあったタント カスタムは、フロントまわりを刷新。


ヘッドランプなど顔つきが大幅に変わった(写真:ダイハツ工業)

ヘッドランプをシャープなデザインとするとともに、バンパーをよりワイドに見せる形状のしたうえで、グリルを拡大。メッキフレームを配することで、まるで「ノア」や「ヴォクシー」のような迫力あるスタイリングとした。ダイハツは、「立体感を強調し、より上質で迫力あるスタイルに進化」と言う。

従来のタント カスタムでは、あえてメッキパーツやシャープさが抑えられていたが、このデザインが仇となっていた感があった。市場が求めていた“タント カスタム像”が形になったといえそうだ。リヤまわりでは、水平に配置されていたバンパー内のリフレクターが、縦配置となり、ワイド感を感じさせるものとなっている。

もう1つのタント ファンクロスは、ブラックのパーツを組込むことで、クロスオーバーSUVのようなスタイルとしたもの。


タフトのような雰囲気もあるタント ファンクロス(写真:ダイハツ工業)

この見た目から想像されるように、スズキ「スペーシア ギア」や三菱「ekクロススペース」に対抗する仕様だ。

ボディカラーやアルミホイール、オレンジの差し色とカモフラージュ柄を使った内装など、「タフト」と共通性を持たせているのは、ダイハツのうまいところだろう。「タフトの形は好きだけど、スライドドアやより広い室内がほしい」という人は、少なくないはずだ。

アウトドアユースを考慮して、タント ファンクロスには、キャンプや釣り等で汚れた荷物や濡れた道具を置いても手入れのしやすい撥水加工のシート表皮や防水加工シートバック、夜間の積み下ろしで役立つラゲージルームランプ、USBソケットを専用アイテムとして装備する。


タント ファンクロスのインテリア(写真:ダイハツ工業)

なお、SUVテイストとはいえ、機能や性能は標準車と同じ。2WDと4WDがラインナップされ、2WDで150mm、4WDで165mmという最低地上高も変わらない。

新型タントの2台トピックはタント カスタムのフェイスリフトとタント ファンクロスの登場だが、標準車も含めて全モデルで細かい部分のアップデートも実際されている。

まずは、「上下2段調節式デッキボード」。デッキボードを高い位置に設置できるようにしたことで収納性アップを実現したほか、後席シートバックを倒したときにフロアをフラットにできるようにしたものだ。また、ラゲージ側(後席シートバック)にスライドレバーを装着することで、シートアレンジの操作性を向上させている。


デッキボードは取り外してテーブルとしても使える(写真:ダイハツ工業)

また、オプションで「9インチスマホ連携ディスプレイオーディオ」を全車に設定。音声認識でエアコンやマルチメディア等の操作ができるほか、Apple CarPlayのワイヤレス接続にも対応する。また、HDMIソケットを追加設定し、再生できる映像の種類を拡大。

ほかには、ボディカラーのラインナップが変更され、タントは「ライトカラーで“親しみ”イメージを強化」、タント カスタムでは「“上質”な印象を強化」したという。


標準車のカラーバリエーション(写真:ダイハツ工業)

その他では、エンジン制御の最適化による燃費性能の向上(2WD/CVT/NAエンジン搭載グレードでWLTCモード燃費22.7km/L)、福祉車両の「フレンドシップシリーズ」の機能や使い勝手の向上が図られた。

狙うは「軽自動車ナンバーワン」

価格は標準車が138万6000円〜177万1000円、タント カスタムが178万2000円〜199万1000円、そしてタント ファンクロスが172万1500円〜193万500円。月間販売目標台数は1万2500台とされる。2022年8月の販売台数のデータを見ると、N-BOXが1万1130台、スペーシアが6751台だから、「軽自動車ナンバーワン」を狙っているということだ。

標準車のデザインは変わってないため、これから販売台数が大きく伸びるとは考えにくい。そうなればフェイスリフトを実施したカスタムの伸びと、新顔ファンクロスの増加分がどれぐらいになるかが勝負どころだろう。

機能面や性能面の大幅アップデートはなかったが、デザインの上質感アップやクロスオーバースタイルモデルの追加が、購入検討車にとって大きなプラス要素であることは間違いない。

(木谷 宗義 : 自動車編集者/コンテンツディレクター)