『夫ですが会社辞めました』より /(C)とげとげ。/KADOKAWA

写真拡大

家事や育児など家庭内のことを主に担当する夫を意味する「主夫」。さまざまな家族の在り方が当たり前になってきたとはいえ、まだまだもの珍しい目で見られたり、ちょっと上の世代の人には受け入れられなかったり…。そんな「主夫」と「大黒柱妻」の一家の姿を描いた『夫ですが会社辞めました』。現代の夫婦が抱えるモヤモヤを描いて共感を呼び、WEB連載が累計2,000万PVを超え(2022年9月)、書籍化も果たした注目作です。

【マンガを読む】悩んで、迷って…それでも育児に向き合うパパたちの物語『夫ですが会社辞めました』(画像54枚)

物語の中には共感できる子育ての悩みや、ぜひ参考にしたい子どもとの接し方など、育児に関するエピソードもたくさん盛り込まれています。ご自身も仕事をしながら家事や育児を担う著者・とげとげ。さん。子育てをするうえで大変なことや心がけていることをお伺いしました。

■仕事・家事・育児のバランスが難しく、親としての自信をなくすことも…

──仕事と家事と育児の両立で、とげとげ。さんが大変だと感じることはなんですか?

とげとげ。さん「バランスをとるのが難しいことですね。仕事に夢中になると子どもたちのことが後回しになってしまったり、目が行き届かない部分が出てきたり…。一緒に過ごす時間もどんどん少なくなるし、同じ空間にいたとしても私はPCに向かって仕事をして、子どもたちはそれぞれ別のことをしている。そんな時間が増えてしまったときに、とても熱心に子どものフォローをしているママを見ると、自分と比べてしまって親としての自信をなくすこともあります」

──「大黒柱妻」である沙月は、息子のカズが入院をするときに「パパがいい!」と付き添いを断られてショックを受けていましたよね。仕事と子どもと過ごす時間の両立の難しさが感じられるシーンだと思います。とげとげ。さんも、実際に周りから言われたことで傷ついた経験はありますか?

とげとげ。さん「やっぱり少し上の世代の方だと、『子どもをほったらかして!』などと言う人もいて、ツラかったです。あと、わが家では夫が夕食を作っているのですが、それに対して『楽できていいね』と言われることも…。仕事も他の家事もあるわけで、『楽はできてない!』と反論したくなりますよね(笑)」

──とげとげ。さんが子育てで最も大変だと感じた時期はいつでしょうか?その理由も教えてください。

とげとげ。さん「葉山町に引っ越してきたばかりの頃ですね。子どもたちは3歳と1歳で、保育園に入れなくて待機児となった期間が半年間あったんです。一時保育を利用しながら仕事をしていたのですが、子どもたちに手はかかるし、周りに頼れる知り合いもいないし、本当に大変でした。だけど、精神的にも心細くて追い詰められていたときに、ふと海を見たらぐっと気持ちが楽になった瞬間があったんです。それは漫画にしたいなと思って、物語の中にも入っています」

■真似したい!子どもたちと過ごす時間のひと工夫

──お祭りに行けない日、特別に夜に好きなおやつを食べていいことにする『おやつパーティ』や、下の子を預けて長女アオイちゃんと一緒に過ごす『アオイ感謝デー』など、子どもたちとの過ごし方や接し方がとても参考になりました!とげとげ。さんのアイデアですか?

とげとげ。さん「『おやつパーティ』は、実際に我が家でもやっていました。保育園のママ友から、お祭りやイベントがあっても仕事で疲れて行く気力がないときにやっていると聞いて、それを真似して(笑)。

『アオイ感謝デー』は、ネームに描いたら編集さんも同じことをやってた!と(笑)。兄弟がいると、どうしても下の子に気が向いていまいがちで、上の子に我慢させてしまうことって多いですよね。なので、上の子をフォローする日を作るのは大切だなと思います」

──育児をするうえで、心がけていることや気を付けていることを教えてください。

とげとげ。さん「子どもが小6と小4なので、これからどんどん親離れしてしまうのかなと思っていて…。甘えてくれる最後の時期が近づいている気がするので、少しの時間でも子どもたちと話す機会をつくるようにしています。子どもたちが寝るときにベッドまで見に行ったり、近所の習い事のお迎えに行って散歩したりと、10分くらいの短い時間でも一緒に過ごすように心がけていますね。」

■日常の中で息抜きのような存在になる物語

──この作品はテーマや設定、展開などもとげとげ。さんが企画されたんですよね。かなり思い入れがあるのでは?

とげとげ。さん「そうですね。ゼロから自分で作品を作るのは初めての経験だったので、それが書籍化されたということで自信にもなりました!漫画家として1個の目標を達成できて、本当に嬉しいです」

──連載では主人公一家だけでなく、他の家族のエピソードも掘り下げて描かれていますよね。これからの展開が楽しみです!

とげとげ。さん「ありがとうございます!今はソラくん一家を取り上げて描いているんですけど、今後はナナちゃん一家の話も描いていきたいし、余裕があれば他の家族の話も出していきたいですね。また、子どもたちの年齢が上がっていったり、季節のことを入れ込んだりしたストーリーも作っていけたらなと思っていますので、楽しみにしていてください」

【取材・文=松田 支信】