ボーズから新しい完全ワイヤレスイヤホン「QuietComfort Earbuds II」が9月29日に発売されました。強化されたノイズキャンセリング性能と音質、それぞれをユーザーの耳に最適化してベストなリスニング環境に自動設定してくれる「CustomTuneテクノロジー」など、見どころ満載。新製品のファーストインプレッションをレポートします。

ボーズの新しいワイヤレスイヤホン「QuietComfort Earbuds II」

○クアルコムのチップ搭載でイヤホンの“頭脳”が進化

QuietComfort(クワイエット・コンフォート)といえば、ボーズのノイズキャンセリング機能を搭載するヘッドホン・イヤホンの人気シリーズです。2020年9月にボーズが発売した初代の「QuietComfort Earbuds」(以下:QCE 1)から、左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンにも展開されました。

2年ぶりにアップデートされたQuietComfort Earbuds II(以下:QCE 2)は、ボーズによる最先端のノイズキャンセリング機能を搭載しています。

第2世代のモデルから、クアルコムのオーディオ製品向け最新SoC(システムICチップ)を搭載したことで、処理性能が大きな飛躍を遂げています。後ほど解説するCustomTuneテクノロジーなど、快適リスニングをサポートする機能がそろいました。

さらに本体サイズは初代モデルの約3分の1に小型・軽量化しています。まずは本機の装着感からチェックします。

右が初代のQuietComfort Earbudsの充電ケース。新モデルはワイヤレス充電には非対応だが、ケースが小さくなることのメリットはとても大きい

右がQuietComfort Earbuds。イヤホン本体も小さくなっている

○「Bose Fit Kit」で装着をきめ細かく調整できる

イヤホンの外観は“別モノ”と呼べるほどに変わりました。QCE 2はAirPods Proのようなスティック型に近いデザインです。

初代のQCE 1では、イヤーチップと大きなフィン形状のスタビライザーが一体になった「StayHear Max」を使って耳に装着するスタイルでした。

QCE 2はシリコン素材のイヤーチップと、ハウジングの周囲に巻き付ける同じシリコン素材の「スタビリティバンド」が別々のパーツになっています。ふたつを合わせて「Bose Fit Kit」と呼んでいます。それぞれのパーツを組み合わせると、耳の中と外耳のくぼみ、それぞれのフィットがさらに細かく調整できます。

QuietComfort Earbuds IIはシリコン製のイヤーチップとスタビリティバンドを組み合わせて、きめ細かなフィッティングができるようになった

QuietComfort Earbuds IIはさらに、スティック形状の本体が耳に触れることで装着感が安定する

QCE 1のユーザーは、StayHear Maxの大きなフィンがなくなると装着感が不安定になると思うかもしれません。QCE 2はBose Fit Kitのほかに、スティック形状の本体が外耳に触れて装着状態を安定させます。筆者はQCE 2を装着したまま体を激しく動かしたり、食事をしながらあごを動かしてみたりしましたが、イヤホンが耳からずれて落ちることなく使えています。

QuietComfort Earbuds IIには2つのカラーバリエーションを用意。左がトリプルブラック(9月29日発売)、右がソープストーン(2022年後半に発売予定)

イヤーチップについては、iOS/Androidに対応するモバイルアプリ「Bose Music」の新機能である「イヤーチップ装着テスト」を使えば、いま選択しているBose Fit Kitのサイズの組み合わせが耳に適しているか調べられます。ベストなノイズキャンセリング効果を得るための“大前提”として、正しいイヤーチップを選択することはとても大事です。イヤホンを使い始める前に、必ずこのテストを済ませましょう。

Bose Musicアプリの「イヤーチップ装着テスト」の画面

短いテストトーンを再生すると、サウンドとノイズキャンセリング効果がユーザーの耳に合わせて最適化される

QCE 2の製品パッケージにはS/M/L、大きさが異なる3種類のイヤーチップとスタビリティバンドが同梱されています。ボーズではさらにXS/XLサイズの交換パーツも用意しているので、同梱品でもサイズが合わない場合は問い合わせると良いでしょう。

○0.5秒で耳の音響環境を自動計測

QCE 2に新しく搭載されたCustomTuneテクノロジーは、ユーザーがイヤホンをケースから取り出して耳に装着するたびに起動して、サウンドとノイズキャンセリング効果の両方を自動最適化する機能です。

耳に装着すると、左右のイヤホンから順番に起動音が聞こえてきます。この起動音がCustomTuneのテストトーンを兼ねています。わずか0.5秒のあいだに、ユーザーの耳内部に反響させたテストトーンを、イヤホンに内蔵するマイクが拾って音響状態を測定します。

この新しいスマート機能はオン・オフを選ぶ必要がなく、QCE 2では「常時オン」のまま動き続けています。ユーザーに悟られることなくサウンドと消音効果をベストコンディションのまま保ち続けるという、黒子のような機能です。その効果は初代モデルと比べながら聴くと、ノイズキャンセリングやサウンドにも現れました。

QuietComfort Earbuds IIの装着イメージ

○さまざまな騒音に対してまんべんなく効くノイズキャンセリング

QCE 2のノイズキャンセリング機能は、イヤホンを使う環境にすばやく適応しながら最良の消音効果をもたらします。大勢の人が集まるカフェ、駅前に雑踏の中で試すと、「人の声」がQCE 1よりも漏れ聞こえてこないことがわかりました。

続いて電車やバスに乗って試しました。QCE 2は“ブーン”と持続的に鳴り続けるエンジン音もピシャリと抑えます。QCE 1も低音域の消音効果がかなり高いイヤホンですが、新しいQCE 2は中高音域のノイズもまんべんなく消してくれます。

QuietComfort Earbuds IIはとにかく消音効果が高く、「人の声」が漏れ聞こえてこない

○良質な低音。立体的な音場を描く

極上の静寂に包まれながら聴くサウンドも、QCE 2ではレベルアップしていました。iPhone 14 Pro Maxにつないで、新旧モデルを比較試聴しています。

QuietComfort Earbuds IIのサウンドをiPhone 14 Pro Maxに組み合わせてチェック

QCE 2で聴くボーカルやピアノ、ギターなど中音域のメロディはいっそうなめらかです。高音域と自然につながり、濃厚な余韻が楽しめます。低音もまた初代モデルよりもふくよかになりました。この小さなイヤホンから鳴っていることがにわかに信じ難いほどに深い重低音です。とはいえ、ただ量感を大盛りにしたわけではなく、ベースやドラムスの低いリズムは音の立ち上がり・立ち下がりがとても鋭く切れ味に富んでいます。

安室奈美恵『Body Feel EXIT』のようにアップテンポなEDM系の楽曲を聴くと、QCE 1で聴くサウンドよりも奥行き方向にステージの広がり感が増していることもよくわかります。東京スカパラダイスオーケストラ『めくれたオレンジ』のような大編成のバンドによる演奏は、QCE 2の方がよりスケールの大きな音楽を描く余裕を獲得したことがよくわかりました。

ノイズキャンセリング機能が強化されたことの効果は、MISIAの『アイノカタチ』のように、静かなボーカルとバンドの演奏で幕を開ける楽曲を聴くとわかりやすく表れます。声の繊細なニュアンスが移ろう様子が鮮明に浮かび上がり、静かな楽器の演奏から熱い感情が伝わってきます。

電車による移動中にシリアスなドラマを視聴した時にも、QCE 2がノイズを強力にシャットアウトしてくれるので、セリフや効果音がとてもよく聞こえました。ストーリーに深く没入できます。

○質の高いクリアな外音取り込み

QCE 2のノイズキャンセリング機能は全11段階から微調整ができます。アプリを開いて「モード」から「クワイエット」を選ぶと消音効果が最大になります。反対に「アウェア」を選択すると消音効果を「0」にして、イヤホンに内蔵するマイクで外部の環境音を取り込みます。

左右イヤホンのタッチセンサーリモコンを長押しすると、リスニングモードが切り替わる

アウェアモードでは、まるでイヤホンを耳から外したみたいに周囲の環境音がクリアに聞こえます。音楽再生やハンズフリー通話の間、周囲の人に呼びかけられたり、ドアベルが鳴ったりしても注意を向けられます。

アウェアとクワイエットとの間でモード切り換えながら音楽を聴いてみても音質が変化しません。特に「人の声」の伸びやかさが一定なので、音楽や動画を楽しむ時だけでなく、ハンズフリー通話の際にもそのメリットが活きてきます。アウェアモードで周りの音に注意を配りながら、ハンズフリー通話やビデオ会議にも集中できます。

ノイズキャンセリングの効果を段階的に、マニュアルで設定することも可能です。Bose Musicアプリから「モード」を立ち上げて「モードの作成」を選ぶと、10種類のプリセットが並んでいます。それぞれを選択して「ノイズキャンセリング」の強弱をカスタマイズします。「モード」のリストにはクワイエットとアウェアのほか、最大2件を追加して、リモコン操作により切り換えられます。

○便利なタッチリモコンとアプリのイコライザー

左右イヤホンの側面はタッチセンサー方式のリモコンになっています。リスニングモードを切り換える方法が、初代モデルでは左イヤホンのダブルタップでしたが、QCE 2では左右リモコンの「長押し」操作になります。

リモコンの上下スワイプで音量のアップダウンが直感的にできるのも良いです。ただし、タッチセンサーの感度は少し高めなので、意図せずイヤホンに触れて楽曲を再生・一時停止してしまうこともありました。

QCE 2のサウンドは明るくパワフルですが、Bose Musicアプリに搭載されている「イコライザー」を活用すれば、聴く音楽の種類や、BGM的にリラックスしながら聴きたいムードに合わせて、音質を自由にカスタマイズして楽しめます。

Bose Musicアプリに搭載されているイコライザーも活用したい

○ライバルを凌ぐ圧倒的な個性。一度聴いてみる価値あり

BluetoothオーディオのコーデックはAACとSBCに対応しています。どちらのコーデックを選択しても、ボーズらしい音楽性豊かなサウンドを楽しませてくれるのですが、せっかくクアルコムのチップを搭載したので、aptXコーデックもサポートして欲しかったです。

QCE 2は同時にスマホとノートPCなど、2台のBluetoothオーディオの送り出し側機器に接続するマルチポイントに対応していません。毎度アプリなどから接続機器を切り換える操作が必要です。イヤホンを使ってノートPCやタブレットで動画を見ていたら、スマホの通話着信を逃していたということが起きたりもするので注意が必要です。

QuietComfort Earbuds IIはマルチポイントには非対応。接続するソース側の機器は都度、アプリなどから選ぶ必要がある

イヤホン単体では最大6時間、ケースによる充電を繰り返せば最大24時間の連続再生に対応しています。充電ケースはワイヤレスチャージに非対応となったことが初代モデルとの違いですが、そのぶんケースも含めて本体が軽くなったことのメリットは大きいと筆者は感じます。

本体の防滴仕様は初代モデルと同じIPX4相当です。イヤホンは汗や水しぶきに耐えるように設計されているので、ワークアウトの時間に音楽や動画を楽しむ機会にも最適です。

さらにコンパクトになった第2世代のQCE 2はサウンドとノイズキャンセリング効果の両方に確かな進化の手応えが感じられました。初代モデルよりも価格が3,300円アップしていますが、実力を考えれば納得できます。現在はボーズのライバルから次々と新しいアクティブノイズキャンセリング機能を搭載する完全ワイヤレスイヤホンが発売されていますが、QCE 2の確実なノイキャン効果と、ボーズらしい明るく力強いサウンドは一度試す価値がありそうです。

著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら