ソニーは、映像制作用カメラ「Cinema Line」シリーズの新製品として、“ワンオペレーションクリエイター”をターゲットとした新開発APS-Cセンサー搭載の「FX30」を発表した。10月14日発売で、価格はボディ本体のみが27万3,900円。XLR接続のマイクが接続できるハンドルユニット同梱セットが32万8,000円。

FX30(ILME-FX30) ※レンズは別売

XLR接続のマイクが接続できるハンドルユニットと別売レンズを取り付けたところ

映画制作で培われたルックと、クリエイターの要望に応える操作性や信頼性を兼ね備えた商品群「Cinema Line」(シネマライン)の裾野を拡げ、“映像の世界に飛び込みたい”という新規参入層に向けた新たなバリエーションとして、FX30をラインナップに追加。コンシューマー向けのデジタルカメラ「α」シリーズで培った“瞳AF”をはじめとする高性能オートフォーカス(AF)技術も投入しており、シネマカメラでありながらαブランドを冠した製品にもなっている。

本体のデザインやサイズは現行の「FX3」をほぼ踏襲しているが、新規開発のAPS-Cサイズ、有効2,010万画素の裏面照射型CMOSイメージセンサー Exmor Rを搭載しているのが、FX3との大きな違いだ(FX3は35mmフルサイズセンサー)。6Kオーバーサンプリングによる豊富な情報量を凝縮し、4K Super 35mmフォーマットの映像収録が行えるという。

新開発のAPS-Cサイズ、有効2,010万画素の裏面照射型CMOSイメージセンサーを搭載

S-Log3撮影が可能なほか、デフォルトでシネマルックな映像が撮影できるS-Cinetoneも搭載。また、4K/120fpsのハイフレームレート撮影が行え、最大5倍のスローモーション撮影によって印象的な映像表現もできるという。画像処理エンジンは「BIONZ XR」。レンズマウントはEマウントを採用している。

FX3と同様に、小型ボディの内部に冷却ファンを搭載。4K/60p映像を長時間安定して撮影し続けられるようにした。グリップ上の人差し指が触れる部分(ミラーレスαで電源スイッチレバーがある場所)には、電動ズームレンズ用のズームレバーを搭載。

天面にはISOやホワイトバランスをダイレクトに変更できるボタンを備え、前面や背面、天面に赤いRECランプ(タリーランプ)を配するなど、動画撮影向けの操作性や利便性を追求したデザインを踏襲している。ちなみに、電源ボタンは背面左肩にスライド式のものを備えている。

本体天面

天面や側面などに多数のネジ穴(1/4-20 UNS)を搭載。ケージを使わずに、動画撮影に必要なマイクや外部モニターを直接装着したり、ジンバルやドローンにそのまま乗せたりといった使い方ができるという。







左がFX30、右がF3。本体のネジ穴部分の色や、センサーサイズを表す正面の「Full-Frame」、製品型番の刻印などを除けば、ほとんど違いが分からない

また、アクセサリーシューに固定できるXLR接続のマイクが接続できるハンドルユニットとの組み合わせで、さらなる拡張性を実現。ノイズを抑えた高音質録音も可能にする。

XLRハンドルユニットを使って撮影機材を拡張するイメージ。なお、FX30に装着可能なXLRハンドルユニット「XLR-H1」は、2023年初旬発売予定

背面には3型/約236万ドットのバリアングル横開き液晶モニターを搭載。手持ちやジンバル、ローポジションなど、状況に応じた自由なフレーミングを可能にする。メニュー画面もリストスタイルの新しいものになり、よく使う設定項目にすばやくアクセスできるようにした。

バリアングル横開き液晶モニターを搭載

ローポジションなどの撮影状況にあわせた自由なフレーミングを可能にする

14ストップ+の広いラチチュード(S-Log3使用時)によって、明暗差のあるシーンでも白とびや黒つぶれの少ない階調豊かな映像を収録できるようにした。常用ISO感度は100〜32,000(拡張上限)。ISO 800/2,500のデュアル・ベースISOに対応する。

一般的なカメラの場合、ISO800に対してISO2500ではゲインアップに伴い大幅にノイズが増えてしまう。デュアル・ベースISOでは、ISO800とISO2500のノイズレベルがほぼ同等なため、ノイズが気になる暗所撮影でもISO2500を使用することで、映像をクリアに表現できるという。また、Long GOPおよびIntra方式の両方で4:2:2 10bit記録が可能なため、豊かな階調を活かしたグレーディングなど編集時の自由度が広がるとしている。

像面位相差検出AFとコントラスト検出AFを併用した、ファストハイブリッドAFシステムを搭載。像面位相差AFセンサーは最大495点で、高密度かつ広範囲にカバーする。動画撮影中のフォーカス時に画角が変化するフォーカスブリージング現象を抑えるブリージング補正をカメラ内で実施。光学式5軸ボディ内手ブレ補正や、手ブレ補正を向上させるアクティブモードなど、ミラーレスαの機能も継承している。

なお、4K/120fpsのハイフレームレート撮影機能については、映像処理の過程で約38%画角がクロップされ、3,840×2,160ドットでの本体内記録となる。約2,600万画素の静止画も撮れるが、連写はできない。

FX30(レンズは別売)

記録メディアはCFexpress Type Aメモリーカード×2、またはSDXC/SDHCメモリーカード×2。動画の記録フォーマットは、XAVC S、XAVC S-I(MPEG-4 AVC/H.264)、XAVC HS(MPEG-H HEVC/H.265)をサポート。対応する外部レコーダー(別売)へのSDI経由での16bit RAW動画出力にも対応している。ほかにも、外部のタイムコード出力機器と接続してマルチカム運用で使える、タイムコード同期機能なども備える。

左側面のインタフェース

カメラボディは軽量かつ剛性の高いマグネシウム合金を採用しており、防塵・防滴に配慮した構造になっている。本体サイズは129.7×84.5×77.8mm(幅×奥行き×高さ)。大容量のZバッテリーを採用し、本体でのUSB PD(Power Delivery)対応の高速充電も可能だ。バッテリーとメモリーカードを含む重さは約646gで、FX3よりも約70g軽くなった。XLRハンドルを含めると951gとなる。

CFexpress Type Aメモリーカードや、SDXC/SDHCメモリーカードに対応するスロットを2基搭載