マクドナルドでは月見マックシェイクや月見パイ、朝マックの月見マフィンを含む「月見ファミリー」を展開中。ハンバーガーは定番の「月見バーガー」「チーズ月見」(写真)ほか、新作の「こく旨 すき焼き月見」も登場している(筆者撮影)

2022年の秋、いつもとは違う「戦(いくさ)な雰囲気」が月見系バーガーに漂っている。月見バーガーといえばマクドナルド!という人も多いと思うが、ファストフード各社がこぞって月見系バーガーを販売しているのである。

月見バーガーといえば、マクドナルドがその先駆者的存在。月をイメージさせる目玉焼きをサンドしたバーガーで、これが爆発的ヒット。1991年に発売されて以来、31年間も愛され続けている「秋の看板&定番メニュー」だ。

月見の季節に合わせた月見バーガーだが、ほかにも秋だからこそ発売する理由があった。マクドナルド公式サイトによると、誕生当時は卵が安定的に供給できる秋だからこそのメニューだったようである。

チキン、竜田揚げ、エビパティなど多彩

そんなマクドナルドの月見バーガーに戦いを挑んでいる(?)のは、ロッテリア、モスバーガー、ファーストキッチン、ウェンディーズ・ファーストキッチン、ケンタッキー・フライド・チキン、コメダ珈琲店の各社。

メインの具はファストフード各社によって違い、ビーフパティ、フライドチキン、竜田揚げ、エビパティなど多彩だ。単に目玉焼きをサンドしただけに思える月見系バーガーだが、絶妙な味付けと具の組み合わせで他のハンバーガーでは楽しめない魅力を生み、絶大な支持を得ている。

マクドナルドは今年、月見メニューとしてハンバーガー3種類とスイーツ3種類を発売している。とある店舗店員によると「店舗により終了日は異なるが少なくとも9月中は売り切れることなく販売すると思う」とのこと。在庫がなくなりしだい、終売になるという。

まさに月見系バーガーの王者ともいえるマクドナルド。そこに自社の月見系バーガーで戦いを挑んできた複数のファストフード各社。モスバーガーの「月見フォカッチャ」が好評すぎて一部店舗で一次販売中止になっているようだが、この月見の戦い、どこが覇権を握るのか?

そこで今回、各社の月見系バーガーを実際に食べ、レビューしてみることにした。各評価は★の数で表し、最大5ツ星。あくまで筆者の感想でしかないが、皆さんが月見系バーガーを食べる際の参考にしていただければ幸いである。

薄切りながらも存在感が強い「ビーフパティ」

マクドナルドの「チーズ月見」

マクドナルドのおいしさはビーフパティにある。薄切りながらも存在感は強く、どんなバンズにも合い、レタスやトマトによってビーフパティ自体の旨味エキスが運ばれる。そんなビーフパティと目玉焼きがタッグを組んだチーズ月見がハズレのはずはなく、特に黄身と酸味強めのソースの相性はバツグンで、それをビーフパティの香ばしさと旨味がフォローする。ただどうしてもビーフパティの影響で「マクドナルド味」になってしまい。やや退屈。新たなパティでの月見バーガーにも期待。

<チーズ月見の評価>
価格: 税込390円
バンズ★★★
ソース★★★
パティ★★★
卵★★★★
具★★
総評★★★★

モスバーガーの「月見フォカッチャ」


モスバーガーの「月見フォカッチャ」520円。月見フォカッチャ、枝豆コーンフライ、ドリンクがセットの「秋トクセット」850円も用意される(筆者撮影)

フォカッチャの表面のザラつきが香ばしさを強く楽しませてくれる。それと同時に、ソーセージとソースからは「モスバーガーのホットドッグ」独特なスパイシーさを楽しませ、まさに旨味と辛味のハイブリッド感がたまらなく甘美。とはいえ、辛口ではない。辛口じゃあないのに辛口の良さを楽しませるのは、モスバーガーの素晴らしき開発力の賜物といえよう。ただこの「月見フォカッチャ」、あまりにも人気がありすぎて供給が間に合わない状況になったため、一時的に販売を取りやめるという。しかし食材の在庫が残っている店舗では販売を続けているようだ。また、10月8日から販売再開を予定しているとのこと。

<月見フォカッチャの評価>
価格:税込 520円
バンズ★★★★★
ソース★★★★
パティ★★★
卵★★★
具★★★★
総評★★★★


ロッテリアの「半熟月見エビバーガー」(写真)520円のほか「半熟月見絶品チーズバーガー」530円も用意される(筆者撮影)

●ロッテリアの「半熟月見エビバーガー」

目玉焼き、海老パティ、ロッテリアオリジナルタルタルソース、キャベツを2枚のモチモチ食感バンズがサンド。その食感が絶妙で、バンズの強い弾力のあとにエビパティや目玉焼きの「極めて優しい食感」が訪れる。ロッテリアのバンズは他店よりもモチモチ食感と弾力が強い印象を受ける。それが功を奏し、メリハリのある「硬」と「柔」を感じられるのだろう。ややジューシーさに欠けるのでドリンク必須だが、ジューシーすぎると海老パティの香ばしさが減退するかもしれず、ある意味、ドライなのはバランス的に良いことかもしれない。弾けるような海老のプリプリとした食感にも感覚を傾けたい。

<半熟月見エビバーガーの評価>
価格: 税込520円
バンズ★★★★★
ソース★★★★★
パティ★★★★
卵★★★★
具★★★★
総評★★★★★

チキンの月見バーガー

●ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の「とろ〜り月見フィレサンド」


KFCでは写真の「とろ〜り月見フィレサンド」(460円)のほか、「とろ〜り月見和風カツサンド」(460円)、「とろ〜りチーズ月見フィレサンド」(490円)、「とろ〜りチーズ月見和風カツサンド」(490円)が用意されていた(筆者撮影)

そもそもだが、KFCの看板メニューであり命ともいえる国内産チキンフィレがサンドされている時点で、ハズレではない確実にアタリなハンバーガー。目玉焼き風オムレツが弾けて黄身があふれ出し、チキンの衣に浸透。正直なところチキンはチキン単体で食べたい気持ちが湧いてくるが、スパイス感あふれるチキンの衣と優しい黄身の組み合わせは「約束されたおいしさ」といえる。マヨソースがオムレツとチキンにおいしさを増幅させている点も見過ごさず、味覚で感じたい。ちなみにこの「とろ〜り月見サンド」だが、当初は10月上旬まで販売を予定していたものの、好評のためすでに完売している店舗もあるという。一部店舗ではまだ販売が続いているようだ(9月27日時点)。

<とろ〜り月見フィレサンドの評価>
価格: 税込460円
バンズ★★★★
ソース★★★
パティ★★★★★
卵★★★
具★★
総評★★★★


コメダ珈琲店の「フルムーンバーガー」720円〜790円。価格は店舗により違いあり(筆者撮影)

●コメダ珈琲店の「フルムーンバーガー」

とにかくバンズの存在感がスゴイ。巨大サイズのバンズにパティ、スライスチーズ、エッグオムレツがサンドされていて、食べる前からお腹がいっぱいになりそうなボリューム感。バンズは「パンがおいしい」と評判なだけあって、絶妙な湿度と「カラッと感」で心地良い食感を楽しませてくれる。バンズが大きくモッサリ感があるので、バーガーではなくパンを食べている気持ちになることも。バンズをもう少し薄め、または小サイズにするとその点は解決できそう(次回作に期待)。具に多彩さが欲しいところだが、潔くバンズとエッグオムレツに集中するのはテイストの方向性にブレがないという点でアリ。

<フルムーンバーガーの評価>
価格: 税込720円〜790円(店舗により価格に違いあり)
バンズ★★★
ソース★★
パティ★★★
卵★★★★
具★★
総評★★★

ベーコンがジューシーで卵との相性抜群

●ファーストキッチンの「旨味タルタルベーコンエッグバーガー」


ファーストキッチンが45周年記念で発売したのは「旨味タルタルベーコンエッグバーガー」680円(写真)と「ベーコンもっちバーガー」680円(筆者撮影)

あくまで筆者の印象や個体差によるものかもしれないが、目玉焼きはやや大判で、食べて存在感を舌でかんじられるほど食べ応えがあり、なによりベーコンが良い仕事をしていると感じた。そのベーコンが同系列の「ウェンディーズ・ファーストキッチン」のベーコンよりもジューシーに感じたのは、調理スタッフの腕や個体差によるものだろうか。視覚においてもオイリーなエキスが浮き出ているかのような美しさを醸している。「ボリュームありすぎて食べにくい!!」という人もいるはず。確かにそうだ。そんなときは、上から豪快につぶして食べるのが作法。

<旨味タルタルベーコンエッグバーガーの評価>
価格: 税込680円
バンズ★★★
ソース★★★★★
パティ★★★★
卵★★★★
具★★★
総評★★★★

●ウェンディーズ・ファーストキッチンの「月見B.B.P.バーガー」


ウェンディーズ・ファーストキッチンは「月見B.B.P.バーガー(BBQベーコンポテト)」(写真)790円のほか「月見B.B.P.チキンバーガー(BBQベーコンポテト)」690円を販売(筆者撮影)

まさに人の欲望をかなえるために創造された月見系バーガーと言っても過言ではない。フカフカのバンズにサンドされているのは、目玉焼き、ハッシュポテト、ベーコン、スライスチーズ、そしてパティとソース。何が素晴らしいか、それはハッシュポテトの存在と、ベーコンがサンドされている贅沢さ。ハッシュポテトが砕ける際にチーズやパティ、そして目玉焼きの旨味を同行させて広め、味覚に届けるのです。たまりません。

<月見B.B.P.バーガーの評価>
価格: 税込790円
バンズ★★★
ソース★★★
パティ★★★★
卵★★★
具★★★★★
総評★★★★★

すべての店で月見系バーガーを食べてみたが、ダントツで心からおいしいと感じたのはウェンディーズ・ファーストキッチンの「月見B.B.P.バーガー」だ。

ボリュームがあるだけでなく「大味ではない」「具の存在に必然性がある」「雑味がない」の三拍子。価格は税込790円で、ハンバーガー単品としては高額な部類といえるかもしれないが、その価値はある。

ここまで月見系バーガーを食べてきて、ひとつ忘れていることがあるような……。そう、バーガーキングの存在である。アメリカンで豪快でワイルドなイメージがあるバーガーキング。日本的な「月見」というワードには目を向けず独自路線を走るかのように思える。


バーガーキングの「ディアブロ・ガーリック ダブルチーズバーガー」1390円。チーズだけでは成し得なかったサクサク感を燻製辛口ガーリックフレークがもたらす、食感が心地よい仕上がり(筆者撮影)

他社が月見系バーガーで戦いを繰り広げるなか、バーガーキングだけゲームソフトとコラボレーションした「ディアブロ・ガーリック ダブルチーズバーガー」(1390円)を発売。ゲームの世界観に合わせたのか、地獄の業火をイメージしたかのような激辛ハンバーガーだ。実際に食べてみたが、これが意外とイケる。鋭い辛さを感じさせつつも、チーズと旨味たっぷりなビーフパティがスパイスをキャッチし、旨味と辛味の調和を保つハンバーガーとなっていた。


独自路線を行くバーガーキング。写真はバーガーキング渋谷センター街店(筆者撮影)

2022年の「月見系バーガーの闘い」に関してバーガーキングを運営するビーケージャパンホールディングスバーガーキングへ問い合わせたところ、以下の回答を得られた。

「バーガーキングは競合他社と比較して店舗が少なく、『お店がない』というお声も多くいただいております。だからこそチャレンジャー精神を持って新商品開発に取り組み、バーガーキングの強みを活かして、お客様の印象に残るようにしたいと思っております。 また、他社様と似た商品ではお客様に喜んでいただけず印象にも残りにくいので、バーガーキングらしい商品を提供したいと考えております」

2023年秋に月見系バーガーは?

なるほど納得の回答。確かにバーガーキングは、チーズだらけの「チーズアグリービーフバーガー」や、ビーフパティが7枚もサンドされた「Windows7 WHOPPER」などチャレンジャー精神の塊だと感じるメニューばかり発売され、愛されてきている。そもそも月見合戦で戦う必要はないのかもしれない。

ちなみに2023年の秋に月見系バーガーを販売する計画はあるのか聞いたところ「2023年秋の月見バーガーに準ずる商品の発売は未定です」とのことだった。これは期待薄か。いや、バーガーキングはチャレンジャー精神のファストフードレストランだ。もしかすると……。

バーガーキングがお月見をする日は来るのか。2023年の秋が今から楽しみでならない。

(クドウ ヒロカズ : ライター)