Ryzen 7000 Seriesを試す(速報版) - Ryzen 9 7950Xは史上最速なるか、Zen 4世代の実性能テスト
●テスト1:Discrete Graphics環境下の性能 - 基礎テスト
既報の通り、米AMDが9月27日にRyzen 7000シリーズの発売を開始する(日本国内向けは9月30日から)。これに先立って、性能評価を行う機会に恵まれたので、まずは速報版をお届けしたい。
○評価機材
今回発表されるのは、Ryzen 5 7600X/Ryzen 7 7700X/Ryzen 9 7900X/7950Xの4製品である。今回はX付きのSKUのみで、この後X無しのSKUや(おそらくは)Ryzen 3なども追加される事になると思われる。
Photo01: 幅・高さ・奥行共にRyzen 5/7と9では異なる。
パッケージ(Photo01)は、Ryzen 9だけちょっと大きめでRyzen 5/7は結構コンパクトである。ちなみに今回Ryzen 5 7600XですらTDP 105Wということでヒートシンクは付属していない。このあたりは今後65WとかのSKUが追加されたら、Wraithクーラーを同梱したモデルも出てくると予想され、その際にはパッケージの厚みも増す事になると思われる
。
ちなみに以前も写真でご紹介したが、Ryzen 9のみ、豪華なパッケージになっている(Photo02)。実際奥行はRyzen 5/7の3倍はある感じだ(Photo03)。
Photo02: ちなみにこの奥は単にスポンジ。
Photo03: ここまで厚みがあるならCPUクーラーも入りそうではある。
CPUそのものはブリスターパッケージに入った形(Photo04)だが、微妙に従来と形状が変わっている(Photo04,05)。CPUパッケージそのものは既報の通り、ヒートスプレッダが複雑な形状になっているのが判る(Photo06〜09)。ヒートスプレッダを横から見るとこんな感じ(Photo10)。ほぼ真横から見るとこんな具合で、明確に間隙がある事が判る(Photo11)。ちなみに裏面、LGAのPadの形状は、Intelの楕円ではなく(やや角は丸まっているが)長方形になっていた(Photo12)。
Photo04: 下部に"AM5"と入っている。またステッカーにも"7000 SERIES"が追加されている。
Photo05: 裏面にはAMDのロゴが。
Photo06: Ryzen 9 7950X。意外にも全てのランドにパスコンが実装されている訳ではなかった。
Photo07: Ryzen 9 7900X。一見従来のAM4より厚くなっている様に見えるが、寸法そのものは変わらない。
Photo08: Ryzen 7 7700X。見える範囲で言えばパスコンの配置が同じというのにちょっとびっくり。
Photo09: Ryzen 5 7600X。ちなみに(c) 2021というあたり、製造は昨年中だった模様。
Photo10: 意外にバリが目立つ。
Photo11: ヒートスプレッダを外し、ハンダをより熱伝導率の良い液体金属のTIMに置き換えるという技法は、このヒートスプレッダだとちょっと難しそうである。
Photo12: Pad数は1718個。
さて、これに組み合わせるAM5マザーボードであるが、今回はASUSのROG Crosshair X670E Hero(Photo13〜22)である。X670E(これも名前がアレであって、当初はX670 Extremeという説明だったのが、今はX670Eになっている。B650の方はB650 Extremeだったりするのが更に謎である。そのうちシラっと名称が変わっても不思議ではない)チップセット搭載の製品だ。
Photo13: いつもの如く、大きくて重いパッケージ。
Photo14: 基板全体をフルカバードというのが最近の流行であり、ROG Crosshair X670E Heroもかなりのカバー率になっている。
Photo15: CPUソケット周辺。SocketのレバーはThreadRipperと異なり1本だけ。
Photo16: カバーを展開するとこんな感じ。電源は22 Phaseになっている。
Photo17: CPUを装着するとこんな具合。CPUクーラー取付の爪はSocket AM4と同じく。
Photo18: バックパネルは一体式。USB Type-Cポートが増えた一方、思ったほど普及が進まないためか10GBase-Tポートは省かれた。
Photo19: SATAは6ポートのまま。
Photo20: 底面はこんな感じ。カバーの陰に隠れる様に、PCI Express x1スロットが配されている。
Photo21: メイン電源コネクタは24pin+6pinに。これはATX12VO 2.0で定められている+12V1ではないかと思う。
Photo22: 補助電源の方は8pin×2。最大230W供給のSocket AM5向けということを考えれば妥当な構成だろう。
ところでSocket AM5はSocket AM4のCPUクーラーと互換性がある、という話は既に報じた。確かに嘘ではないのだが、正確でもない。正確に言えば、「バックプレートの交換を必要としないタイプのSocket AM4クーラーはSocket AM5で利用できる」である。理由はこちら(Photo23)。Socket AM4の場合PGAということもあり、CPUソケットそのものはマザーボード表面に半田付けの形で取り付けられており、なのでバックプレートは単にCPUクーラーを固定するためだけに用意されていた。ところがSocket AM5ではLGAタイプになり、固定に機械的リテンションを掛ける関係で、CPU Socketはマザーボードを挟み込むように表面と裏面の両方に部品が分かれており、もはやバックプレートの交換ができなくなっている。なので、簡易水冷クーラーでちょくちょくみられる、Socket AM4専用バックプレートを利用するケースでは利用できなくなっている。実際今回Ryzen 7000シリーズ用にThermalTake TH360を用意したものの、見事にこれに引っかかって装着できなかった。いずれは簡易水冷に独自バックプレートを利用している各メーカーともSocket AM5対応のアタッチメントを用意すると思うので、それが揃うまではSocket AM4のクーラーの流用は待った方が良いだろう。
Photo23: 結局ThermalTake TH360はあきらめて別の環境に転用し、別の環境で使っていたROG STRIX LC II 360 ARGBをSocket AM5向けに利用する事で何とかなった。
またメモリであるが、今回はG.SKILLのTrident Z5 Neoが用意された。定格はDDR5-4800だが、EXPO対応で最大DDR5-6000動作が可能とされる(Photo24,25)。
Photo24: 容量は16GB×2。
Photo25: SPDなどの情報は後ほど。シール以外、表裏全く同一のデザインとなっている。
○テスト環境その1(Discrete Graphics)
さて今回、速報版と銘打った理由であるが、時間の関係で全てのテストを行えていないためだ。具体的にはRyzen 9 7900Xは(機材こそ到着したものの)時間の関係でテストを見送った。また内部構造に踏み込んだDeep Diveテストも今回は見送りで、簡単なパフォーマンス測定+αに留めている。Zen 4の内部構造に関しては、追って掲載予定のDeep Dive編をお待ちいただきたい。まずテストその1であるが、表1の様な環境で行った。比較対象はRyzen 9 5950XとCore i9-12900Kである。Ryzen 7000シリーズそのものはCPU-Zで問題なく認識された(Photo26〜28)。
またメモリであるが、先に書いたようにG.SKILLのTrident Z5 Neoは定格DDR5-4800 CL42、EXPOでDDR5-6000 CL30をサポートする(Photo29)。ただ今回はこのEXPOフル動作ではなく、Ryzen 7000シリーズが定格でサポートする上限のDDR5-5200 CL44でテストを行った(Photo30)。
Photo26: Ryzen 9 7950X。Instructionsに"AVX512F(Fundamental)"が目立つ。合計16コア。
Photo27: Ryzen 7 7700X。8コア。そういえば「なんで7800Xは無くなったのか?」も聞いてきたので、Deep Dive編をお楽しみに。
Photo28: Ryzen 5 7600X。6コア。今回一番ローエンドにあたる。
Photo29: EXPO動作だと1.35Vまでメモリ電圧を引き上げての動作となる。
Photo30: AMDによれば、今年〜来年は定格でもDDR5-5200が一般的になるとの事。
グラフ中の表記は
i9-12900K:Core i9-12900K
R9 5950X :Ryzen 9 5950X
R5 7600X :Ryzen 9 7600X
R7 7700X :Ryzen 9 7700X
R9 7950X :Ryzen 9 7950X
となっている。また解像度表記は何時もの通り
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただく。
○◆テスト1: CineBench R23(グラフ1)
CineBench R23
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench
グラフ1
判りやすさ優先で、まずはCineBenchの結果を。Ryzen 7000シリーズはSingle Thread動作で遂に2000台が見える(というかRyzen 9 7950Xは2000を超える)ところまできた。そしてMulti Threadでは堂々の38000オーバーである。勿論OC動作とかすればもっとこれを超える性能は可能だろうが、OCせずにここまでの性能が出るのは流石である。以前の説明ではIPCが最大13%程度向上、Single Thread Performanceでは最大29%向上という数字が示されたが、これを裏切らない結果として良いかと思う。特にRyzen 9 5950X比で言えば、Multi-Threadで52%もの性能向上になっているからだ。
○◆テスト1: PCMark 10 v2.1.2563(グラフ2〜7)
PCMark 10 v2.1.2563
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
グラフ2
グラフ3
グラフ4
グラフ5
グラフ6
グラフ7
もう少し一般的なものでは? ということで次はPCMark 10。Overall(グラフ2)を見ると、なんかRyzen 9 5950Xが可哀想になる結果である。少なくともRyzen 7000はAlder LakeベースのCore i9-12900Kと十分互角以上の性能を発揮している事は間違いない。
もっともTest Group(グラフ2)を見ると、Essentials/Productivityは概ね同等で、差が出るのはDigital Contents CreationとGamingである。Gamingは要するに3DMark FireStrikeなので後で確認するとして、Digital Contents Creationで差が出ている格好だ。
Essentials(グラフ4)/ProductivityはRyzen 9 5950Xを除くとほぼ同等といったところ。Digital Contents Creation(グラフ6)はRenderingAndVisualizationRaytracing、つまりPOV-Rayのスコアが支配的であり、これが性能に影響している感じだ。
最後にOffice 365を利用してのApplication Score(グラフ7)を見ると、特にExcelでRyzen 7 7700XとCore i9-12900Kが同等であり、Word/Powerpoint/EdgeはそもそもRyzen 9 5950X以外横並びになっているあたり、明確にRyzen 7000シリーズの性能向上が示されたと考えて良いかと思う。
○◆テスト1: Procyon v2.1.459(グラフ8〜11)
Procyon v2.1.459
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon
グラフ8
グラフ9
グラフ10
グラフ11
まずOverallで見ると、Ryzen 9 5950Xが飛びぬけて低いというか、Core i9-12900Kに全然及ばない格好だったのが、概ね同等のレベルに達しているのが判る。比較的Ryzen 7000シリーズが有利なのがPhoto Editing(グラフ9)で、Lightroomを利用してのバッチ処理は微妙にCore i9-12900Kに及ばない(とは言え、6コアのRyzen 5 7600XがRyzen 9 5950Xを上回るスコアを出している辺りは凄まじい)が、Photoshopを使ってのImage RetouchingではCore i9-12900Kを上回るスコアを出しているあたり、ほぼほぼ互角というか、ややRyzen 7000シリーズの方がトータルでの性能は上に思える。
一方のVideo Editing(グラフ10)では、必ずしもマルチコアのメリットは生きてこない(これはPremierとAdobeのMedia Encoderの仕様だから仕方がない)が、それでもExport 2はほぼ同等。Export 1もかなり接近しているというか、少なくともRyzen 9 5950Xよりは大幅に改善されている。ちなみにグラフ10は所要時間なので、棒が短いほど高速である。あと、結果が2桁異なる関係で対数グラフにしている。
面白いのがOffice Productivity(グラフ11)。Ryzen 7000シリーズの中で最高速なのは8コアのRyzen 7 7700Xで、これに僅差でRyzen 5 7600Xが続くというのはどういうことか。意外にもRyzen 9 7950Xが3つの中では一番性能が低くなったのはちょっと不思議ではある。とは言え全般的に性能の底上げは明確で、ただしCore i9-12900Kには微妙に及ばないという程度。まぁ健闘しているとしても差し支えは無いだろう。
○◆テスト1: POV-Ray V3.8.2 Beta2(グラフ12)
POV-Ray V3.8.2 Beta2
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
グラフ12
今回Ryzen 7000シリーズではAVX512にも対応した事だし、そろそろNoise Functionには"avx2fma3-intel"が使われるかと思ったが、残念ながら相変わらず"avx-generic"であった。
それはともかく結果を見ると、One CPUではまだCore i9-12900Kに微妙に及ばない。理由の一つは上で書いた最適化の違いだが、それでも612PPSから740〜750PPSだから、21〜22%の高速化である。そしてAll CPUではRyzen 9 7950Xが遂に12000PPS超えを果たしており、このあたりでの性能向上は明確である。Ryzen 9 5950X比では5割弱の高速化であり、性能向上は明確である。
○◆テスト1: Stable Diffusion UI(グラフ13)
Stable Diffusion UI
cmdr2
https://github.com/cmdr2/stable-diffusion-ui
AIによる画像生成であるStable DiffusionはGPU上でNeural Networkを利用して、ユーザーの指定したキーワードをベースに画像を生成してくれるツールということで急激に人気を博しているが、このStable DiffusionをCPUを使って実施してくれるのがStable Diffusion UIである。
使い方は簡単で、上のURLからzipファイルを落として展開。インストーラを実施するだけである。インストールが終わるとhttp://localhost:9000 でこの画面(Photo31)が出てくる。ここでパラメータをセットして"Make Image"ボタンを押し、画像が生成されるまでの時間を測定するというわけだ。
Photo31: これは生成後の画面である。所要時間は画像の上に455.702secと出てくる。
パラメータであるが、Promptの"a photograph of an astronaut riding a horses"(初期値)は変更せず、ただしAdvanced SettingsでSeedの値は10000に固定した(それでも数回に1回は違う画像になるあたりがNeural Networkであるが)。また下の"Use CPU instead of GPU"のチェックも入れておく。
グラフ13
さて結果であるが、これも経過時間ということで、バーが短いほど高速である。やはり16コアのRyzen 9 7950は異様に高速で、Core i9-12900Kは大体Ryzen 7 7700Xと同等程度といったあたりか。
余談であるが、これをGeForce RTX 3080 Tiを利用して実行した場合、所要時間はわずか6.9secである。今回はベンチマーク目的だから敢えてCPUで実施しているが、普通に使うならGPUを使うべきだろう。
○◆テスト1: TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.23.25(グラフ14)
TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.23.25
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html
グラフ14
定番エンコーダであるが、結果(グラフ14)を見れば説明の要らないくらい、Ryzen 7000系が健闘しているのが判る。なんせ8コアのRyzen 7 7700Xと16コアのRyzen 9 5950Xがそんなに違わないのだ。そしてRyzen 9 7950Xは35fpsに達しており、リアルタイムでHEVCの4K画像を30fps以上でトランスコードできている事になる。何というか、Ryzen 7000系のCPU性能の伸びが良く判る。
○◆テスト1: 3DMark v2.22.7359(グラフ15〜18)
3DMark v2.22.7359
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
グラフ15
グラフ16
グラフ17
グラフ18
グラフ15が3DMarkの結果だが、興味深い。唯一NightRaidだけ他と異なるというか、Core i9-12900Kのスコアが突出している。ただ後はほぼ同程度に収まっており、FireStrikeとかではむしろRyzen 7000やRyzen 9 5950Xの方が上回るという面白い結果になっている。これはGraphics Test(グラフ16)も同じである。本来だとここでCPUの差が出てくるのはちょっと解せない(FireStrikeもここではほぼ同等)のだが。Physical/CPU Test(グラフ17)の結果は、NightRaidだけ妙にCore i9-12900Kのスコアが高い以外はまぁ妥当と言うべきものになっており、Combined Test(グラフ18)もこれに準ずる格好だ。NightRaidの振る舞いが若干謎な以外は、概ね妥当な結果として良いかと思う。
●テスト1:Discrete Graphics環境下の性能 - ゲームテスト
○◆テスト1: Borderlands 3(グラフ19〜25)
Borderlands 3
2K Games
https://borderlands.com/ja-JP/
ベンチマーク方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。設定は
全体的な品質:ウルトラ
アンチエイリアス:テンポラル
とした。
グラフ19
グラフ20
グラフ21
グラフ22
グラフ23
グラフ24
グラフ25
さて解像度は何時ものように2K〜4Kだが、性能差が一番出るのは当然GPUの負荷が軽い(≒CPU負荷が相対的に重くなる)2Kであって、実際結果(グラフ19〜21)でもバラつきが見られるのは2Kのみである。その2Kだが、Core i9-12900KとRyzen 9 5950Xがどちらも平均160fps台なのに対し、Ryzen 7000シリーズはいずれも170fps台というあたりで明確な違いが見られる。これはフレームレート変動からも明らかで2K(グラフ22)では75〜95secあたりが一番明確に違いが出ている部分だ。2.5K(グラフ23)になると、一応あちこちで差が見られるものの大きな違いではなく、3K/4K(グラフ24・25)ではほぼグラフが重なるあたりからもこの傾向が確認できる。
○◆テスト1: F1 22(グラフ26〜32)
F1 22
EA Sports
https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-22
おなじみEA SportsのF1シリーズだが、7月1日発売開始の2022年度版はF1 22に名称が変わった(昨年まではF1 2021と年号が4桁だった)。
さて設定方法などは従来を踏襲している。起動後、メインメニューに移行する(Photo32)。実はF1 22からプレイするためにはEA Accountへの登録が必須「らしい」。「らしい」というのは、ベンチマークをするだけならEA Accountへの登録なしに実行できるためだ。実際何度か登録/ログイン画面が出てくるが、キャンセルしてしまって構わない。
ここからカーソルキーとEnterキーを使い、Game Option(Photo33)→Settings(Photo34)→Graphics Settings(Photo35)に移行する。解像度などはこの下のVideo Mode(Photo36)で変更する。ちなみに今回はAnti-aliasはTAA Onlyとし、Dynamic ResolutionもOffにした(Photo37)。
解像度の設定が完了したら、Graphics SettingsメニューからBenchmark Mode(Photo38)に移行。ここで"Run Benchmark Test"を実施するとベンチマークがスタート。完了するとサマリーが表示される(Photo39)と共に、ログが"My Documents\My Games\F1 22\"の下に自動生成されるという訳だ。
Photo32: EA Accountへのログインをキャンセルしてここに来ているため、左のメニューに"RETRY CONNECTION"(ログインのやり直し)項目が出ている。
Photo33: このメニュー要らないというか、これも次のOption項目に含めて1階層減らした方が操作的には便利なのだが。あと相変わらずマウスでの操作ができない。
Photo34: 遂にメニューが2次元配列に。
Photo35: 描画クオリティオプションがここに移動したのはF1-2021からであるが、Ray Tracing関連が充実した感がある。
Photo36: NVIDIAのDLSSとAMDのFSRに両対応している関係で、Anti-Aliasの選択項目が偉く増える事に。
Photo37: GPUの性能評価であればここでDLSSなりFSRを使っても良いのだろうけど。
Photo38: いつものようにバーレーンを1周だけする設定である。残念ながらベンチマーク中の追い抜きなどは一切なし。
Photo39:
さて今回のベンチマークであるが、
解像度:2K/2.5K/3K/4K(全画面)
VSync:Off
Anti Alias:TAA only
Anisotropic Filter:16X
Detail Preset:Ultra High
とし、その他は全てデフォルト設定のままとした。
グラフ26
グラフ27
グラフ28
グラフ29
グラフ30
グラフ31
グラフ32
という訳でまずOverallがグラフ26〜28であるが、なぜかRyzen 7 7700Xのみ妙にスコアが低い(これはフレームレート変動でも確認済)。理由は不明(やり直しても同じ結果になった)だが、これを除くと2Kにおいてもあまり性能差が見られない。強いて言えば最小フレームレート(グラフ28)で多少2Kで変動が見られる程度か。フレームレート変動(グラフ29〜32)の方も、Ryzen 7 7700X以外は特に大きな差があるとも言いにくい。少なくともGeForce RTX 3080 Ti程度では、2Kでも有意な差が出るほどのGPU性能が無い、というあたりになるかと思う。
○◆テスト1: Far Cry 6(グラフ33〜39)
Far Cry 6
Ubisoft Entertainment
https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6
ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は
Quality:High
Antialias:TAA
DXR Reflections/Shadows On
としている。
グラフ33
グラフ34
グラフ35
グラフ36
グラフ37
グラフ38
グラフ39
まず平均フレームレート(グラフ33)を見ると明らかだが、こちらではCPU性能が割と如実に出ている。最高速は御覧の通りCore i9-12900Kで、これにRyzen 7000系が続き、一番遅いのがRyzen 9 5950Xといったところ。ただCore i9-12900KとRyzen 9 5950Xの2Kにおける平均フレームレートが30fpsほど差があったのに対し、Ryzen 9 7950Xではこれが13fps程度まで詰めており、まだ及ばないものの性能の底上げは著しく、かなり健闘したとして良いと思う。この傾向は最大/最小フレームレート(グラフ34・35)でも言える事で、まだ最高速はCore i9-12900Kだが、Ryzen 7000シリーズはかなり差を詰めたと言える。
フレームレート変動(グラフ36〜39)からもこれは明白で、一番差の大きい2K(グラフ36)でも、Core i9-12900KとRyzen 7000シリーズは明確にグラフが分離している。とは言え、その差は小さいし、2.5Kではかなり接近、3K以降では完全に1本の線になっているあたりからも、やはり性能差はRyzen 9 5950Xよりずっと小さくなったとして良いと思う。
○◆テスト1: Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ40〜46)
Metro Exodus PC:Enhanced Edition
4A Games
https://www.metrothegame.com/
ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定は
Shading Quality:Ultra
Ray Tracing:High
DLSS:Off
Reflections:Hybrid
Variable Rate Shading:4x
Hairworks/Advanced PhysX:Off
Tesselation:Full
とした。
グラフ40
グラフ41
グラフ42
グラフ43
グラフ44
グラフ45
グラフ46
平均フレームレートはグラフ40に示す通りで、2Kでのみ僅かにばらついており、一応Core i9-12900Kが最高速(130.4fps)だが、Ryzen 7000シリーズがのきなみ128fpsという事を考えると、言うほどの差があるとも思えない。2.5K以降は完全に1本の線になっている感じで、性能差なしとして良い様にも思える。といっても最高フレームレート(グラフ41)はCore i9-12900Kが最低ライン、逆に最小フレームレートはCore i9-12900Kが最高というのは、要するにCore i9-12900Kに比べるとRyzen 7000シリーズはやや性能のバラつきが大きくなるという意味でもあり、このあたりを鑑みるとフレームレートに反映されないレベルで、まだ若干の性能差はあるのかもしれない。
フレームレート変動を見ると、2K(グラフ43)はやはりCore i9-12900Kとその他が分離して見える部分が多いあたりは、それなりに性能差がある(ただし僅か)、というのが正しい評価な気はする。
○◆テスト1: Tom Clancy's The Division 2(グラフ47〜53)
Tom Clancy's The Division 2
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/division2/
ベンチマーク方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。設定は
品質:高
とした。
グラフ47
グラフ48
グラフ49
グラフ50
グラフ51
グラフ52
グラフ53
結果(グラフ47〜49)こちらも2Kでのみ性能差が明確で、2.5K以上では収束する(最大フレームレートは2.5Kあたりまでやや乱れる)が、その2Kで最高速なのはRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700Xで、これにRyzen 9 7950Xが続き、Core i9-12900Kはその次といったあたり。Ryzen 5 5950Xからの性能向上は明白として良いかと思う。これは2Kのフレームレート変動(グラフ50)からも明白で、完全にCore i9-12900Kを上回る性能となった。もっとも2.5K以上は、「ちょっと太目の1本の線」といった感じになっているので、ここでは性能差を見る事は難しいのだが。
○◆テスト1: Shadow of the Tomb Raider(グラフ54〜60)
Shadow of the Tomb Raider
SQUARE ENIX
https://tombraider.square-enix-games.com/en-us
ベンチマーク方法はこちらに準じる。設定は
Quality:Highest
Ray Tracing:Off
とした。
グラフ54
グラフ55
グラフ56
グラフ57
グラフ58
グラフ59
グラフ60
まず結果(グラフ54〜56)を見ると、2Kのみ差があるのだが、ここで最高速はRyzen 9 7950X、ついでRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700XとCore i9-12900Kがほぼ同じスコアで並び、Ryzen 5 5950Xが大差を付けて最下位といった具合。2.5K以上はほぼ収束してしまっているので、性能差はこの2Kで見るのが正しいだろう。
実際フレームレート変動(グラフ57)を見ると、80secあたりまではほぼ1本の線なのが、110secあたりまでは明確に性能差が出ている。このあたりが一番GPU負荷が軽く、CPUネックになりやすいところで、ここで50fps以上の性能差が出ている以上、Ryzen 7000シリーズのCore i9-12900Kに対するアドバンテージは明白である。
○◆テスト1: Watch Dogs:Legion(グラフ61〜67)
Watch Dogs:Legion
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/
ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は
Quality:Very High
RT Reflection:Off
DLSS:Off
とした。
グラフ61
グラフ62
グラフ63
グラフ64
グラフ65
グラフ66
グラフ67
さて結果(グラフ61〜63)を見ると、再びこちらはCore i9-12900Kが最高速である。といっても、Ryzen 7000シリーズもかなり健闘しており、Ryzen 5 5950Xからの性能の向上は明らかである。最大/最小フレームレートはちょっと暴れている事もあって読み取りが難しいが、2Kで平均119fps程度だったRyzen 9 5950Xから、Ryzen 5 7600Xですら130fps、Ryzen 9 7950Xでは135fpsまで性能を引き上げている辺りがこれを裏付けている。
フレームレート変動を見ると、2K(グラフ64)では明白に3つ(Core i9-12900K/Ryzen 7000シリーズ/Ryzen 9 5950X)に分離しているあたり、確たる性能差があることは間違いない。ただ2.5K(グラフ65)以降は「Ryzen 9 5950Xとその他」みたいになっているあたり、Core i9-12900KとRyzen 7000シリーズの性能差そのものは大きくない事もまた明らかである。
●テスト1:Discrete Graphics環境下の性能 - メモリ性能と消費電力
○◆テスト1: RMMT 1.1(グラフ68〜69)
RMMT 1.1
Rightmark.org
http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml
グラフ68
グラフ69
SandraやRMMAの結果は今回見送りとさせていただいたが、RMMTの結果だけ示しておきたい。まずグラフ68がReadであるが、絶対的なメモリ帯域の大きさよりも面白いのはメモリコントローラの特性そのものだ。Core i9-12900Kは8Thread動作、この場合で言うと8つのP-Core上に一つづつThreadが動作し、それぞれが40MB/secのMemory Read Requestを出すという状況でピーク性能の75.7GB/secを叩き出している。これに対してRyzen 9 7950Xは、5 Threadで動かしている時が一番性能が高く、95.5GB/secに達している。DDR5-4800だと理論帯域で96GB/secだからCore i9-12900Kのメモリコントローラの効率は78.9%ほどで、これも結構高いのだが、Ryzen 9 7950Xの方はDDR5-5200だから実に91.8%もの効率の高さである。ただしそれが5Threadというあたりが謎で、そこから急速に下がっているのが判る。この妙なカーブはWrite(グラフ69)も同じで、しかも1ダイのRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700Xには見られない辺りは、IODの作り方というか、Infinity Fabricの内部構成も関係している様に見える。要するに、Ryzen 7000シリーズのメモリコントローラは、複数のThreadから大量のリクエストを同時に受ける事を余り想定しておらず、ある閾値(これが5Thread程度なのだろう)を超えると急速に性能が下がる様に見受けられる。またこれにはInfinity Fabricも絡んでおり、ダイ1つからのリクエストを集中的に受けるとボトルネックになりやすいようだ。これが効率的に動くのは、2つのダイからそれぞれ2〜3Thread分のリクエストを動く状況で、それが2+3Threadという事になる様に見える。
この辺りはもう設計思想の違いで、大容量(32MB)のL3を搭載している状況で、大量のメモリアクセスリクエストが複数のコアから同時に発生する事は、少なくともコンシューマ向けのRyzenではあり得ないという前提のもとに設計が成されている様に見える。実際、5Threadに続いて帯域が大きいのは、2つのダイでそれぞれ1 Threadが動く2 Threadの状況で、ここも86GB/sec前後の帯域になっている。このあたりはEPYC向けのGenoaでは、また違ったメモリコントローラの特性になっていると考えられるだけに、どんなチューニングが施されているのか楽しみである。
WriteはReadに比べるともう少しコンサバティブではあるが、5 Threadの所にピークがあるのは同じである。もっとも最高性能は1 Threadの時、というのはDDR5であってもWriteではBurst転送が効かない事を考えれば妥当な結果である。逆にCore i9-12900Kは、5 Threadあたりが最高速と言うのは、L3→MemoryのWritebackのメカニズムがまたAMDとは全く異なる事を示唆している。しかしこれだけThread数と帯域の関係が異なるのでは、AMDとIntelの両方に最適化したメモリへのデータ書き出し手法というのが結構異なる事になる訳で、アプリケーションエンジニアにとってはちょっと頭が痛い話かもしれない。
○◆テスト1: 消費電力測定(グラフ70〜76)
テストその1(Discrete Graphics環境)の最後は消費電力測定である。まずグラフ70がSandraのDhrystone/Whetstone実施中、グラフ71がCineBench R23(All CPUとOne CPUの両方)、グラフ131がProcyon 2.0のOffice Productivity、グラフ72がTMPGEnc Vide Mastering Works 7で4streamのX.265エンコードの最初の180秒、グラフ73が3DMark FireStrike、グラフ74がMetro Exodus Enhanced Editionの、やはり2Kでのベンチマークの実効消費電力変動を示したものである。グラフ75がそれぞれの平均消費電力(と一部ピーク時消費電力)、それと待機時の消費電力をまとめたもの、グラフ76が個々の消費電力と待機時との差をまとめたものである。
グラフ70
グラフ71
グラフ72
グラフ73
グラフ74
グラフ75
グラフ76
まずグラフ75を見て頂くと判るが、そもそもRyzen 7000シリーズはどれも待機時の消費電力が高めである。Core i9-12900Kに比べて30W、Ryzen 9 5950Xに比べても20Wのアップである。理由の一つは、ハイエンドマザーボードということで色々消費電力が増加する要因がありそうという事だし、メモリもDDR5-5200動作はJEDECの標準ではなくEXPOモードでの動作になるので、この分も加味されていると考えて良いかと思う。ただそれにしても、SandraのDhrystone/WhetstoneでRyzen 9 7950Xは他を圧倒する消費電力の多さであり、流石TDP 170Wの製品だけの事はある。それに比べるとRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700Xは概ね200W程度と、Ryzen 9 7950Xよりも120Wほど低い消費電力に収まっており、同じ105W TDPのRyzen 9 5950Xと比べても20Wほど低めになっているのは優秀と言える。
CineBenchやTMPGEncでは、最初の数十秒だけ跳ね上がるのはまぁPrecision Boost/PL2の宿命であるが、問題はその後の定常状態で、ここでもRyzen 9 7950Xはかなり高め。対してRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700Xはかなり低めに設定されており、割と性能/消費電力比は悪くないように感じる。面白いのはFireStrikeやMetro Exodusでの消費電力で、ここで最大なのはRyzen 9 5950Xで、これにRyzen 9 7950Xが続き、残りの3製品といった感じである。
こうした傾向は、それぞれの平均値をとったグラフ75を見ると明白である。とにかくRyzen 9 7950Xは、性能も高いが消費電力もまた相当に大きい。待機状態との差を取ったグラフ76で見ると多少緩和されるが、消費電力の多さで鳴らしたCore i9-12900Kとほぼ同等、という消費電力である(Dhrystone/WhetstoneではCore i9-12900Kを上回っている)。これはもう動作設定を効率優先よりも絶対性能優先に振ってしまっており、それだけ消費電力が大きいと考えられる。
もっともでは効率そのものはどうか? というと、これが面白い事にRyzen 9 5950XとRyzen 9 7950Xの効率がほぼ同等であった。表2にDhrystone/Whetstoneでのスコアとそれぞれの実効消費電力差をまとめてみたが、御覧の通り効率そのものは実はRyzen 9 5950Xが最高で、それとほぼ同等なのがRyzen 9 7950X、続いてRyzen 7 7700X、Ryzen 5 7600Xと続く格好だ。Core i9-12900Kは?というと、丁度Ryzen 7 7700XとRyzen 5 7600Xの中間程度(強いて言えばRyzen 5 7600X寄り)という辺りで、なのでCore i9-12900Kに比べるとずっと効率が良いのは間違いないのだが、思ったほどには高くないというか、性能の方に振ってしまった感じが見える。恐らくX付きSKUはこうした性能優先であり、効率優先は今後登場するであろうX無しSKUで実現する格好だろうか。これに関してはちょっと残念であった。
●テスト2:Integrated Graphics環境下の性能
○テスト環境その2(Integrated Graphics)
続いては統合グラフィック環境での比較である。Ryzen 7000シリーズはIODの方にNAVI 2ベース(というかRDNA2ベース)のGPUを統合するが
2CU、すなわち1 WGP構成。
Infinity Cacheは無し。
Ray Tracing Unitも無し。
という事で、性能の方はかなり低いと考えられる。今回は時間の関係で表3に示すように、Core i9-12900K vs Ryzen 7 7700Xという環境で、どちらも統合GPUを利用しての比較を行った。
○◆テスト2: PCMark 10 v2.1.2563(グラフ77〜82)
PCMark 10 v2.1.2563
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
グラフ77
グラフ78
グラフ79
グラフ80
グラフ81
グラフ82
まずは通常のアプリケーションがちゃんと動くのか? ということでPCMark 10を実施してみたが、結果から言えばRyzen 7 7700XはNGだった。具体的に言えば、Digital Contents CreationとGamingが現状のドライバではなぜか動作しない。まだRC6というバージョンだから動作しない事そのものはあり得る話だが、Digital Contents Creationが動かないのはちょっと不可解だし、Gamingに至っては3DMark単体ではちゃんと動作する事を考えると、まだ品質が低いと言わざるを得ないのがちょっと残念だ。そんな訳でスコアが出るのはPCMark 10 EssentialsとPCMark 10 Applicationsのみである(グラフ77)。
Test Group(グラフ78)を見ると、EssentialsとProductivityは悪くない。Essentials(グラフ79)ではなぜかApp StartupのみRyzen 7 7700Xが異様に高く、他はやや低めという妙なバラつきを見せるが、トータルすると大体同等。一方Productivityでは、特にOpenCL周りが驚異的に高速な関係で、性能が大きく異なる。ちなみに具体的に数字で示すと
テスト項目 Core i9-12900K Ryzen 7 7700X
SpreadsheetMonteCarloOcl 77.41 2.18
SpreadsheetEnergyMarketOcl 16.92 0.8 (数字は経過時間(秒))
で、もうCore i9-12900KではCPUで処理を行っているOpenCL周りを、Ryzen 7 7700XではうまくGPUでオフロードできているのがこの差の要因と思われる。ただその一方で、Digital Contents Creation(グラフ81)を見ると、何でかRendering & VisualizationとVideo Editingの両方が動作せず、なのでそもそも比較が出来ない。Gamingも同様である。
Applicationに関しては大きな差では無いが、全般的にCore i9-12900Kの方がやや優勢といった感じである。先のグラフ7ではCore i9-12900KとRyzen 7 7700Xの性能差がそこまで無かった事を考えると、これは統合GPU側の問題と考えて良いかと思う。
○◆テスト2: 3DMark v2.22.7359(グラフ83〜86)
3DMark v2.22.7359
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
グラフ83
グラフ84
グラフ85
グラフ86
流石に統合GPUでFireStrike UltraとかTimeSpy Extreme、更にはPort Royalとかを実施するのは無謀なので見送り、若干減らしたテストを実施してみた。さてまずはOverall(グラフ83)だが、全般的にRyzen 7 7700Xの方が低めである。純粋にスコアで言えば、15〜30%程度、Ryzen 7 7700Xのスコアが低い。ただいくつかのテストはCPU性能も加味されているので、では純粋にGraphics Testの結果は? というのがグラフ84で、こちらもやはり15〜30%ほどRyzen 7 7700Xの方が低めである。要するにIntelのUHD Graphics 770より2〜3割低い、というのが実力に見える。
Physics/CPU Test(グラフ85)はそもそもコア数も異なるからRyzen 7 7700Xのスコアが低めなのは当然だし、Combined Test(グラフ86)も当然これを反映したものとなる。
○◆テスト2: FF XIV 暁月のフィナーレベンチマーク(グラフ87)
FF XIV 暁月のフィナーレベンチマーク
SQUARE ENIX
https://jp.finalfantasyxiv.com/benchmark/
グラフ87
何もゲーム系を試さないのもどうかと思い、簡単なものを一つ。ということでFF XIV 暁月のフィナーレベンチマークを。測定方法などはこちらで示す通りだが、今回は
解像度:1.5K(1600×900)/2K/2.5K
プリセット:標準品質(デスクトップPC)
とした。またOCATは使わず、スコアだけを取得している。という事で結果はグラフ87の通り。こちらもRyzen 7 7700Xのスコアは、Core i9-12900K比で16〜18%ダウンとなっている。一応ベンチマークの目安で言えば、スコアが4000〜5999の範囲は「普通」で、標準的な動作が見込めるとしているので、建前上は2K解像度でのプレイは可能だが、まぁ快適か? と言われればちょっと厳しいというあたりだろうか。
そもそもIntel UHD Graphics 770そのものが、単体でゲームをやるのは厳しいという評価の性能でしかないから、ここから2割近く性能が落ちたらさらに厳しいのは明白である。もっともRyzen 7000シリーズの統合GPUはそうした目的のためのものではないから、まぁ最低限のレベルはクリアしているというあたりか。
○◆テスト2: 消費電力(グラフ88〜89)
グラフ88
グラフ89
CPU単体での消費電力は先ほどグラフ70〜76で示した通りなので、統合GPUの消費電力を確認してみた。ということで、グラフ88が3DMark FireStrike Demo実施中の消費電力変動である。グラフ89は稼働中の平均値をとったもので、御覧の通り僅かながらRyzen 7 7700Xの方が低めである。もっともFireStrikeのスコアを考えると、性能/消費電力比の観点ではCore i9-12900Kの方に軍配があがりそうではあるが。
●N5プロセスの特性と、Ryzen 7000 Seriesの評価まとめ
○◆消費電力追試、N5プロセスの特性(グラフ90〜91)
最後にもう一度消費電力測定だが、今度は絶対的な消費電力ではなく、ちょっとTSMCのN5プロセスの特性を調べてみるべく、動作周波数と消費電力の関係を測定してみた。ちょっと前になるが、Comet LakeとZen 2コア製品の比較と同じやり方だ。今回は表1の環境のまま、Ryzen 7 7700Xのみを対象に行ってみた。
グラフ90
グラフ91
やり方は簡単で、Ryzen Master(Photo40)を利用して動作周波数を600MHzから100MHzづつ引き上げながら、AIDA64を利用してCPUとMemoryに負荷を掛け、その際の温度変化をCoreTempを使って確認する、というやり方で確認した(Photo41)。消費電力そのものはシステム全体のものを測定している。負荷は概ね2分ほど掛け、うち最後の1分の平均を取った格好だ。
Photo40: これは2.5GHzでの状況。ちなみにRyzen MasterはZen 4に対応したBuild 2.10.0.2201を利用した。
Photo41: AIDA64の最新版でもCPU温度が測定出来なかったため、CoreTempを併用した。ただCoreTempの方も、消費電力測定の方は明らかにおかしかったので、こちらの数字は無視した。ちなみにこれがギリギリ駆動できた限界(4.9GHz)である。
で、そもそもZen 2の世代も、動作周波数と消費電力の関係が割とリニアというか、Intelと違ってあまり指数曲線的に増えない傾向があったが、ではZen 4は? というのがこちら(グラフ90)。なんでか1.4GHz→1.5GHzで消費電力が減る、という不思議な傾向があったのだが、それはともかくとして4.9GHzまで割とリニアに消費電力が増えてゆく傾向が今回も確認できた。ちなみに5GHzは、Ryzen Masterで設定する事は可能だったが、AIDA64で負荷をかけた瞬間にシステムリセットが発生したので、4.9GHzで打ち止めである。破線は近似であるが、傾きは15.827W/GHz程で、これはRyzen 7 3800X(21.541W/GHz)に比べてだいぶ低くなっている。また4.5GHzで打ち止めだったRyzen 7 3800Xから400MHzほど上に伸びているあたりも、プロセスそのものの変更が低消費電力化と高速化に貢献していることが確認できると考えて良いかと思う。
ちなみにグラフ91はCoreTempを用いて測定した、動作周波数とCPU温度のピーク値の関係である。こちらでも1.4GHz→1.5GHzで微妙に温度が下がっているのは、やはり消費電力が減ったためと考えられる。それはともかくとして、4.9GHzで105℃に達しており、このあたりが動作的に限界だったと考えられる。ただこちらも周波数に合わせて単調増加になっており、傾きは概ね13.389℃/GHzといったところ。OC動作とかになればまた跳ね上がるのだろうが、普通に使う分にはこの程度で収まっているのはやはり低いと言える(ちなみにこれは8コア全てがフル動作での温度なので、1〜2コアのMax Boostとはまた状況が異なる)。とは言え、これ360mmラジエターを搭載した簡易水冷クーラーでの数字である事を考えると、やはりもう少し消費電力を減らさないと発熱的に厳しい感じだ(そもそも5GHzに到達しなかったのは、消費電力よりも発熱がネックになったためと思われる)。
○考察
ということで駆け足にRyzen 7000シリーズの性能をご紹介した。簡単にまとめると
性能は確かに上がった。
その分消費電力も増えた。
という事に尽きる気がする。性能の向上はもう説明の必要もなく、Alder Lakeを凌いでいる。これで次のRaptor Lakeに勝てるか? というとまだ未知数な部分はあるが、モノによっては良い勝負になりそうに思える(Raptor LakeのSTで15%、MTで41%という性能向上はどんな場合にも通用するものでもなさそうだからだ)。
その一方で、場合によってはAlder Lakeを凌ぐ消費電力になってしまったのは、ちょっと残念である。どちらかと言えば、消費電力盛り盛りのX付より、この後登場するであろう65W/105WのXなしSKUの方が、ずっと幸せになれそうな気がするのは気のせいだろうか?
あとは、ご時勢なので仕方ないのだが、非常に残念なのが日本国内向けの価格である。AMDの公式発表によれば
Ryzen 9 7950X:\117,800
Ryzen 9 7900X:\92,500
Ryzen 7 7700X:\66,800
Ryzen 5 7600X:\49,900(いずれも税込み)
となっている。換算レートは(消費税の分を抜いても)\151/$〜\153/$と結構高めである。まぁこれは何といっても円安が影響しているという話もある訳で、AMDの責任ではないのかもしれないが、ちょっと厳しいところだろう。
既報の通り、米AMDが9月27日にRyzen 7000シリーズの発売を開始する(日本国内向けは9月30日から)。これに先立って、性能評価を行う機会に恵まれたので、まずは速報版をお届けしたい。
○評価機材
今回発表されるのは、Ryzen 5 7600X/Ryzen 7 7700X/Ryzen 9 7900X/7950Xの4製品である。今回はX付きのSKUのみで、この後X無しのSKUや(おそらくは)Ryzen 3なども追加される事になると思われる。
パッケージ(Photo01)は、Ryzen 9だけちょっと大きめでRyzen 5/7は結構コンパクトである。ちなみに今回Ryzen 5 7600XですらTDP 105Wということでヒートシンクは付属していない。このあたりは今後65WとかのSKUが追加されたら、Wraithクーラーを同梱したモデルも出てくると予想され、その際にはパッケージの厚みも増す事になると思われる
。
ちなみに以前も写真でご紹介したが、Ryzen 9のみ、豪華なパッケージになっている(Photo02)。実際奥行はRyzen 5/7の3倍はある感じだ(Photo03)。
Photo02: ちなみにこの奥は単にスポンジ。
Photo03: ここまで厚みがあるならCPUクーラーも入りそうではある。
CPUそのものはブリスターパッケージに入った形(Photo04)だが、微妙に従来と形状が変わっている(Photo04,05)。CPUパッケージそのものは既報の通り、ヒートスプレッダが複雑な形状になっているのが判る(Photo06〜09)。ヒートスプレッダを横から見るとこんな感じ(Photo10)。ほぼ真横から見るとこんな具合で、明確に間隙がある事が判る(Photo11)。ちなみに裏面、LGAのPadの形状は、Intelの楕円ではなく(やや角は丸まっているが)長方形になっていた(Photo12)。
Photo04: 下部に"AM5"と入っている。またステッカーにも"7000 SERIES"が追加されている。
Photo05: 裏面にはAMDのロゴが。
Photo06: Ryzen 9 7950X。意外にも全てのランドにパスコンが実装されている訳ではなかった。
Photo07: Ryzen 9 7900X。一見従来のAM4より厚くなっている様に見えるが、寸法そのものは変わらない。
Photo08: Ryzen 7 7700X。見える範囲で言えばパスコンの配置が同じというのにちょっとびっくり。
Photo09: Ryzen 5 7600X。ちなみに(c) 2021というあたり、製造は昨年中だった模様。
Photo10: 意外にバリが目立つ。
Photo11: ヒートスプレッダを外し、ハンダをより熱伝導率の良い液体金属のTIMに置き換えるという技法は、このヒートスプレッダだとちょっと難しそうである。
Photo12: Pad数は1718個。
さて、これに組み合わせるAM5マザーボードであるが、今回はASUSのROG Crosshair X670E Hero(Photo13〜22)である。X670E(これも名前がアレであって、当初はX670 Extremeという説明だったのが、今はX670Eになっている。B650の方はB650 Extremeだったりするのが更に謎である。そのうちシラっと名称が変わっても不思議ではない)チップセット搭載の製品だ。
Photo13: いつもの如く、大きくて重いパッケージ。
Photo14: 基板全体をフルカバードというのが最近の流行であり、ROG Crosshair X670E Heroもかなりのカバー率になっている。
Photo15: CPUソケット周辺。SocketのレバーはThreadRipperと異なり1本だけ。
Photo16: カバーを展開するとこんな感じ。電源は22 Phaseになっている。
Photo17: CPUを装着するとこんな具合。CPUクーラー取付の爪はSocket AM4と同じく。
Photo18: バックパネルは一体式。USB Type-Cポートが増えた一方、思ったほど普及が進まないためか10GBase-Tポートは省かれた。
Photo19: SATAは6ポートのまま。
Photo20: 底面はこんな感じ。カバーの陰に隠れる様に、PCI Express x1スロットが配されている。
Photo21: メイン電源コネクタは24pin+6pinに。これはATX12VO 2.0で定められている+12V1ではないかと思う。
Photo22: 補助電源の方は8pin×2。最大230W供給のSocket AM5向けということを考えれば妥当な構成だろう。
ところでSocket AM5はSocket AM4のCPUクーラーと互換性がある、という話は既に報じた。確かに嘘ではないのだが、正確でもない。正確に言えば、「バックプレートの交換を必要としないタイプのSocket AM4クーラーはSocket AM5で利用できる」である。理由はこちら(Photo23)。Socket AM4の場合PGAということもあり、CPUソケットそのものはマザーボード表面に半田付けの形で取り付けられており、なのでバックプレートは単にCPUクーラーを固定するためだけに用意されていた。ところがSocket AM5ではLGAタイプになり、固定に機械的リテンションを掛ける関係で、CPU Socketはマザーボードを挟み込むように表面と裏面の両方に部品が分かれており、もはやバックプレートの交換ができなくなっている。なので、簡易水冷クーラーでちょくちょくみられる、Socket AM4専用バックプレートを利用するケースでは利用できなくなっている。実際今回Ryzen 7000シリーズ用にThermalTake TH360を用意したものの、見事にこれに引っかかって装着できなかった。いずれは簡易水冷に独自バックプレートを利用している各メーカーともSocket AM5対応のアタッチメントを用意すると思うので、それが揃うまではSocket AM4のクーラーの流用は待った方が良いだろう。
Photo23: 結局ThermalTake TH360はあきらめて別の環境に転用し、別の環境で使っていたROG STRIX LC II 360 ARGBをSocket AM5向けに利用する事で何とかなった。
またメモリであるが、今回はG.SKILLのTrident Z5 Neoが用意された。定格はDDR5-4800だが、EXPO対応で最大DDR5-6000動作が可能とされる(Photo24,25)。
Photo24: 容量は16GB×2。
Photo25: SPDなどの情報は後ほど。シール以外、表裏全く同一のデザインとなっている。
○テスト環境その1(Discrete Graphics)
さて今回、速報版と銘打った理由であるが、時間の関係で全てのテストを行えていないためだ。具体的にはRyzen 9 7900Xは(機材こそ到着したものの)時間の関係でテストを見送った。また内部構造に踏み込んだDeep Diveテストも今回は見送りで、簡単なパフォーマンス測定+αに留めている。Zen 4の内部構造に関しては、追って掲載予定のDeep Dive編をお待ちいただきたい。まずテストその1であるが、表1の様な環境で行った。比較対象はRyzen 9 5950XとCore i9-12900Kである。Ryzen 7000シリーズそのものはCPU-Zで問題なく認識された(Photo26〜28)。
またメモリであるが、先に書いたようにG.SKILLのTrident Z5 Neoは定格DDR5-4800 CL42、EXPOでDDR5-6000 CL30をサポートする(Photo29)。ただ今回はこのEXPOフル動作ではなく、Ryzen 7000シリーズが定格でサポートする上限のDDR5-5200 CL44でテストを行った(Photo30)。
Photo26: Ryzen 9 7950X。Instructionsに"AVX512F(Fundamental)"が目立つ。合計16コア。
Photo27: Ryzen 7 7700X。8コア。そういえば「なんで7800Xは無くなったのか?」も聞いてきたので、Deep Dive編をお楽しみに。
Photo28: Ryzen 5 7600X。6コア。今回一番ローエンドにあたる。
Photo29: EXPO動作だと1.35Vまでメモリ電圧を引き上げての動作となる。
Photo30: AMDによれば、今年〜来年は定格でもDDR5-5200が一般的になるとの事。
グラフ中の表記は
i9-12900K:Core i9-12900K
R9 5950X :Ryzen 9 5950X
R5 7600X :Ryzen 9 7600X
R7 7700X :Ryzen 9 7700X
R9 7950X :Ryzen 9 7950X
となっている。また解像度表記は何時もの通り
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただく。
○◆テスト1: CineBench R23(グラフ1)
CineBench R23
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench
グラフ1
判りやすさ優先で、まずはCineBenchの結果を。Ryzen 7000シリーズはSingle Thread動作で遂に2000台が見える(というかRyzen 9 7950Xは2000を超える)ところまできた。そしてMulti Threadでは堂々の38000オーバーである。勿論OC動作とかすればもっとこれを超える性能は可能だろうが、OCせずにここまでの性能が出るのは流石である。以前の説明ではIPCが最大13%程度向上、Single Thread Performanceでは最大29%向上という数字が示されたが、これを裏切らない結果として良いかと思う。特にRyzen 9 5950X比で言えば、Multi-Threadで52%もの性能向上になっているからだ。
○◆テスト1: PCMark 10 v2.1.2563(グラフ2〜7)
PCMark 10 v2.1.2563
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
グラフ2
グラフ3
グラフ4
グラフ5
グラフ6
グラフ7
もう少し一般的なものでは? ということで次はPCMark 10。Overall(グラフ2)を見ると、なんかRyzen 9 5950Xが可哀想になる結果である。少なくともRyzen 7000はAlder LakeベースのCore i9-12900Kと十分互角以上の性能を発揮している事は間違いない。
もっともTest Group(グラフ2)を見ると、Essentials/Productivityは概ね同等で、差が出るのはDigital Contents CreationとGamingである。Gamingは要するに3DMark FireStrikeなので後で確認するとして、Digital Contents Creationで差が出ている格好だ。
Essentials(グラフ4)/ProductivityはRyzen 9 5950Xを除くとほぼ同等といったところ。Digital Contents Creation(グラフ6)はRenderingAndVisualizationRaytracing、つまりPOV-Rayのスコアが支配的であり、これが性能に影響している感じだ。
最後にOffice 365を利用してのApplication Score(グラフ7)を見ると、特にExcelでRyzen 7 7700XとCore i9-12900Kが同等であり、Word/Powerpoint/EdgeはそもそもRyzen 9 5950X以外横並びになっているあたり、明確にRyzen 7000シリーズの性能向上が示されたと考えて良いかと思う。
○◆テスト1: Procyon v2.1.459(グラフ8〜11)
Procyon v2.1.459
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon
グラフ8
グラフ9
グラフ10
グラフ11
まずOverallで見ると、Ryzen 9 5950Xが飛びぬけて低いというか、Core i9-12900Kに全然及ばない格好だったのが、概ね同等のレベルに達しているのが判る。比較的Ryzen 7000シリーズが有利なのがPhoto Editing(グラフ9)で、Lightroomを利用してのバッチ処理は微妙にCore i9-12900Kに及ばない(とは言え、6コアのRyzen 5 7600XがRyzen 9 5950Xを上回るスコアを出している辺りは凄まじい)が、Photoshopを使ってのImage RetouchingではCore i9-12900Kを上回るスコアを出しているあたり、ほぼほぼ互角というか、ややRyzen 7000シリーズの方がトータルでの性能は上に思える。
一方のVideo Editing(グラフ10)では、必ずしもマルチコアのメリットは生きてこない(これはPremierとAdobeのMedia Encoderの仕様だから仕方がない)が、それでもExport 2はほぼ同等。Export 1もかなり接近しているというか、少なくともRyzen 9 5950Xよりは大幅に改善されている。ちなみにグラフ10は所要時間なので、棒が短いほど高速である。あと、結果が2桁異なる関係で対数グラフにしている。
面白いのがOffice Productivity(グラフ11)。Ryzen 7000シリーズの中で最高速なのは8コアのRyzen 7 7700Xで、これに僅差でRyzen 5 7600Xが続くというのはどういうことか。意外にもRyzen 9 7950Xが3つの中では一番性能が低くなったのはちょっと不思議ではある。とは言え全般的に性能の底上げは明確で、ただしCore i9-12900Kには微妙に及ばないという程度。まぁ健闘しているとしても差し支えは無いだろう。
○◆テスト1: POV-Ray V3.8.2 Beta2(グラフ12)
POV-Ray V3.8.2 Beta2
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
グラフ12
今回Ryzen 7000シリーズではAVX512にも対応した事だし、そろそろNoise Functionには"avx2fma3-intel"が使われるかと思ったが、残念ながら相変わらず"avx-generic"であった。
それはともかく結果を見ると、One CPUではまだCore i9-12900Kに微妙に及ばない。理由の一つは上で書いた最適化の違いだが、それでも612PPSから740〜750PPSだから、21〜22%の高速化である。そしてAll CPUではRyzen 9 7950Xが遂に12000PPS超えを果たしており、このあたりでの性能向上は明確である。Ryzen 9 5950X比では5割弱の高速化であり、性能向上は明確である。
○◆テスト1: Stable Diffusion UI(グラフ13)
Stable Diffusion UI
cmdr2
https://github.com/cmdr2/stable-diffusion-ui
AIによる画像生成であるStable DiffusionはGPU上でNeural Networkを利用して、ユーザーの指定したキーワードをベースに画像を生成してくれるツールということで急激に人気を博しているが、このStable DiffusionをCPUを使って実施してくれるのがStable Diffusion UIである。
使い方は簡単で、上のURLからzipファイルを落として展開。インストーラを実施するだけである。インストールが終わるとhttp://localhost:9000 でこの画面(Photo31)が出てくる。ここでパラメータをセットして"Make Image"ボタンを押し、画像が生成されるまでの時間を測定するというわけだ。
Photo31: これは生成後の画面である。所要時間は画像の上に455.702secと出てくる。
パラメータであるが、Promptの"a photograph of an astronaut riding a horses"(初期値)は変更せず、ただしAdvanced SettingsでSeedの値は10000に固定した(それでも数回に1回は違う画像になるあたりがNeural Networkであるが)。また下の"Use CPU instead of GPU"のチェックも入れておく。
グラフ13
さて結果であるが、これも経過時間ということで、バーが短いほど高速である。やはり16コアのRyzen 9 7950は異様に高速で、Core i9-12900Kは大体Ryzen 7 7700Xと同等程度といったあたりか。
余談であるが、これをGeForce RTX 3080 Tiを利用して実行した場合、所要時間はわずか6.9secである。今回はベンチマーク目的だから敢えてCPUで実施しているが、普通に使うならGPUを使うべきだろう。
○◆テスト1: TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.23.25(グラフ14)
TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.23.25
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html
グラフ14
定番エンコーダであるが、結果(グラフ14)を見れば説明の要らないくらい、Ryzen 7000系が健闘しているのが判る。なんせ8コアのRyzen 7 7700Xと16コアのRyzen 9 5950Xがそんなに違わないのだ。そしてRyzen 9 7950Xは35fpsに達しており、リアルタイムでHEVCの4K画像を30fps以上でトランスコードできている事になる。何というか、Ryzen 7000系のCPU性能の伸びが良く判る。
○◆テスト1: 3DMark v2.22.7359(グラフ15〜18)
3DMark v2.22.7359
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
グラフ15
グラフ16
グラフ17
グラフ18
グラフ15が3DMarkの結果だが、興味深い。唯一NightRaidだけ他と異なるというか、Core i9-12900Kのスコアが突出している。ただ後はほぼ同程度に収まっており、FireStrikeとかではむしろRyzen 7000やRyzen 9 5950Xの方が上回るという面白い結果になっている。これはGraphics Test(グラフ16)も同じである。本来だとここでCPUの差が出てくるのはちょっと解せない(FireStrikeもここではほぼ同等)のだが。Physical/CPU Test(グラフ17)の結果は、NightRaidだけ妙にCore i9-12900Kのスコアが高い以外はまぁ妥当と言うべきものになっており、Combined Test(グラフ18)もこれに準ずる格好だ。NightRaidの振る舞いが若干謎な以外は、概ね妥当な結果として良いかと思う。
●テスト1:Discrete Graphics環境下の性能 - ゲームテスト
○◆テスト1: Borderlands 3(グラフ19〜25)
Borderlands 3
2K Games
https://borderlands.com/ja-JP/
ベンチマーク方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。設定は
全体的な品質:ウルトラ
アンチエイリアス:テンポラル
とした。
グラフ19
グラフ20
グラフ21
グラフ22
グラフ23
グラフ24
グラフ25
さて解像度は何時ものように2K〜4Kだが、性能差が一番出るのは当然GPUの負荷が軽い(≒CPU負荷が相対的に重くなる)2Kであって、実際結果(グラフ19〜21)でもバラつきが見られるのは2Kのみである。その2Kだが、Core i9-12900KとRyzen 9 5950Xがどちらも平均160fps台なのに対し、Ryzen 7000シリーズはいずれも170fps台というあたりで明確な違いが見られる。これはフレームレート変動からも明らかで2K(グラフ22)では75〜95secあたりが一番明確に違いが出ている部分だ。2.5K(グラフ23)になると、一応あちこちで差が見られるものの大きな違いではなく、3K/4K(グラフ24・25)ではほぼグラフが重なるあたりからもこの傾向が確認できる。
○◆テスト1: F1 22(グラフ26〜32)
F1 22
EA Sports
https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-22
おなじみEA SportsのF1シリーズだが、7月1日発売開始の2022年度版はF1 22に名称が変わった(昨年まではF1 2021と年号が4桁だった)。
さて設定方法などは従来を踏襲している。起動後、メインメニューに移行する(Photo32)。実はF1 22からプレイするためにはEA Accountへの登録が必須「らしい」。「らしい」というのは、ベンチマークをするだけならEA Accountへの登録なしに実行できるためだ。実際何度か登録/ログイン画面が出てくるが、キャンセルしてしまって構わない。
ここからカーソルキーとEnterキーを使い、Game Option(Photo33)→Settings(Photo34)→Graphics Settings(Photo35)に移行する。解像度などはこの下のVideo Mode(Photo36)で変更する。ちなみに今回はAnti-aliasはTAA Onlyとし、Dynamic ResolutionもOffにした(Photo37)。
解像度の設定が完了したら、Graphics SettingsメニューからBenchmark Mode(Photo38)に移行。ここで"Run Benchmark Test"を実施するとベンチマークがスタート。完了するとサマリーが表示される(Photo39)と共に、ログが"My Documents\My Games\F1 22\"の下に自動生成されるという訳だ。
Photo32: EA Accountへのログインをキャンセルしてここに来ているため、左のメニューに"RETRY CONNECTION"(ログインのやり直し)項目が出ている。
Photo33: このメニュー要らないというか、これも次のOption項目に含めて1階層減らした方が操作的には便利なのだが。あと相変わらずマウスでの操作ができない。
Photo34: 遂にメニューが2次元配列に。
Photo35: 描画クオリティオプションがここに移動したのはF1-2021からであるが、Ray Tracing関連が充実した感がある。
Photo36: NVIDIAのDLSSとAMDのFSRに両対応している関係で、Anti-Aliasの選択項目が偉く増える事に。
Photo37: GPUの性能評価であればここでDLSSなりFSRを使っても良いのだろうけど。
Photo38: いつものようにバーレーンを1周だけする設定である。残念ながらベンチマーク中の追い抜きなどは一切なし。
Photo39:
さて今回のベンチマークであるが、
解像度:2K/2.5K/3K/4K(全画面)
VSync:Off
Anti Alias:TAA only
Anisotropic Filter:16X
Detail Preset:Ultra High
とし、その他は全てデフォルト設定のままとした。
グラフ26
グラフ27
グラフ28
グラフ29
グラフ30
グラフ31
グラフ32
という訳でまずOverallがグラフ26〜28であるが、なぜかRyzen 7 7700Xのみ妙にスコアが低い(これはフレームレート変動でも確認済)。理由は不明(やり直しても同じ結果になった)だが、これを除くと2Kにおいてもあまり性能差が見られない。強いて言えば最小フレームレート(グラフ28)で多少2Kで変動が見られる程度か。フレームレート変動(グラフ29〜32)の方も、Ryzen 7 7700X以外は特に大きな差があるとも言いにくい。少なくともGeForce RTX 3080 Ti程度では、2Kでも有意な差が出るほどのGPU性能が無い、というあたりになるかと思う。
○◆テスト1: Far Cry 6(グラフ33〜39)
Far Cry 6
Ubisoft Entertainment
https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6
ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は
Quality:High
Antialias:TAA
DXR Reflections/Shadows On
としている。
グラフ33
グラフ34
グラフ35
グラフ36
グラフ37
グラフ38
グラフ39
まず平均フレームレート(グラフ33)を見ると明らかだが、こちらではCPU性能が割と如実に出ている。最高速は御覧の通りCore i9-12900Kで、これにRyzen 7000系が続き、一番遅いのがRyzen 9 5950Xといったところ。ただCore i9-12900KとRyzen 9 5950Xの2Kにおける平均フレームレートが30fpsほど差があったのに対し、Ryzen 9 7950Xではこれが13fps程度まで詰めており、まだ及ばないものの性能の底上げは著しく、かなり健闘したとして良いと思う。この傾向は最大/最小フレームレート(グラフ34・35)でも言える事で、まだ最高速はCore i9-12900Kだが、Ryzen 7000シリーズはかなり差を詰めたと言える。
フレームレート変動(グラフ36〜39)からもこれは明白で、一番差の大きい2K(グラフ36)でも、Core i9-12900KとRyzen 7000シリーズは明確にグラフが分離している。とは言え、その差は小さいし、2.5Kではかなり接近、3K以降では完全に1本の線になっているあたりからも、やはり性能差はRyzen 9 5950Xよりずっと小さくなったとして良いと思う。
○◆テスト1: Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ40〜46)
Metro Exodus PC:Enhanced Edition
4A Games
https://www.metrothegame.com/
ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定は
Shading Quality:Ultra
Ray Tracing:High
DLSS:Off
Reflections:Hybrid
Variable Rate Shading:4x
Hairworks/Advanced PhysX:Off
Tesselation:Full
とした。
グラフ40
グラフ41
グラフ42
グラフ43
グラフ44
グラフ45
グラフ46
平均フレームレートはグラフ40に示す通りで、2Kでのみ僅かにばらついており、一応Core i9-12900Kが最高速(130.4fps)だが、Ryzen 7000シリーズがのきなみ128fpsという事を考えると、言うほどの差があるとも思えない。2.5K以降は完全に1本の線になっている感じで、性能差なしとして良い様にも思える。といっても最高フレームレート(グラフ41)はCore i9-12900Kが最低ライン、逆に最小フレームレートはCore i9-12900Kが最高というのは、要するにCore i9-12900Kに比べるとRyzen 7000シリーズはやや性能のバラつきが大きくなるという意味でもあり、このあたりを鑑みるとフレームレートに反映されないレベルで、まだ若干の性能差はあるのかもしれない。
フレームレート変動を見ると、2K(グラフ43)はやはりCore i9-12900Kとその他が分離して見える部分が多いあたりは、それなりに性能差がある(ただし僅か)、というのが正しい評価な気はする。
○◆テスト1: Tom Clancy's The Division 2(グラフ47〜53)
Tom Clancy's The Division 2
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/division2/
ベンチマーク方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。設定は
品質:高
とした。
グラフ47
グラフ48
グラフ49
グラフ50
グラフ51
グラフ52
グラフ53
結果(グラフ47〜49)こちらも2Kでのみ性能差が明確で、2.5K以上では収束する(最大フレームレートは2.5Kあたりまでやや乱れる)が、その2Kで最高速なのはRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700Xで、これにRyzen 9 7950Xが続き、Core i9-12900Kはその次といったあたり。Ryzen 5 5950Xからの性能向上は明白として良いかと思う。これは2Kのフレームレート変動(グラフ50)からも明白で、完全にCore i9-12900Kを上回る性能となった。もっとも2.5K以上は、「ちょっと太目の1本の線」といった感じになっているので、ここでは性能差を見る事は難しいのだが。
○◆テスト1: Shadow of the Tomb Raider(グラフ54〜60)
Shadow of the Tomb Raider
SQUARE ENIX
https://tombraider.square-enix-games.com/en-us
ベンチマーク方法はこちらに準じる。設定は
Quality:Highest
Ray Tracing:Off
とした。
グラフ54
グラフ55
グラフ56
グラフ57
グラフ58
グラフ59
グラフ60
まず結果(グラフ54〜56)を見ると、2Kのみ差があるのだが、ここで最高速はRyzen 9 7950X、ついでRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700XとCore i9-12900Kがほぼ同じスコアで並び、Ryzen 5 5950Xが大差を付けて最下位といった具合。2.5K以上はほぼ収束してしまっているので、性能差はこの2Kで見るのが正しいだろう。
実際フレームレート変動(グラフ57)を見ると、80secあたりまではほぼ1本の線なのが、110secあたりまでは明確に性能差が出ている。このあたりが一番GPU負荷が軽く、CPUネックになりやすいところで、ここで50fps以上の性能差が出ている以上、Ryzen 7000シリーズのCore i9-12900Kに対するアドバンテージは明白である。
○◆テスト1: Watch Dogs:Legion(グラフ61〜67)
Watch Dogs:Legion
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/
ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は
Quality:Very High
RT Reflection:Off
DLSS:Off
とした。
グラフ61
グラフ62
グラフ63
グラフ64
グラフ65
グラフ66
グラフ67
さて結果(グラフ61〜63)を見ると、再びこちらはCore i9-12900Kが最高速である。といっても、Ryzen 7000シリーズもかなり健闘しており、Ryzen 5 5950Xからの性能の向上は明らかである。最大/最小フレームレートはちょっと暴れている事もあって読み取りが難しいが、2Kで平均119fps程度だったRyzen 9 5950Xから、Ryzen 5 7600Xですら130fps、Ryzen 9 7950Xでは135fpsまで性能を引き上げている辺りがこれを裏付けている。
フレームレート変動を見ると、2K(グラフ64)では明白に3つ(Core i9-12900K/Ryzen 7000シリーズ/Ryzen 9 5950X)に分離しているあたり、確たる性能差があることは間違いない。ただ2.5K(グラフ65)以降は「Ryzen 9 5950Xとその他」みたいになっているあたり、Core i9-12900KとRyzen 7000シリーズの性能差そのものは大きくない事もまた明らかである。
●テスト1:Discrete Graphics環境下の性能 - メモリ性能と消費電力
○◆テスト1: RMMT 1.1(グラフ68〜69)
RMMT 1.1
Rightmark.org
http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml
グラフ68
グラフ69
SandraやRMMAの結果は今回見送りとさせていただいたが、RMMTの結果だけ示しておきたい。まずグラフ68がReadであるが、絶対的なメモリ帯域の大きさよりも面白いのはメモリコントローラの特性そのものだ。Core i9-12900Kは8Thread動作、この場合で言うと8つのP-Core上に一つづつThreadが動作し、それぞれが40MB/secのMemory Read Requestを出すという状況でピーク性能の75.7GB/secを叩き出している。これに対してRyzen 9 7950Xは、5 Threadで動かしている時が一番性能が高く、95.5GB/secに達している。DDR5-4800だと理論帯域で96GB/secだからCore i9-12900Kのメモリコントローラの効率は78.9%ほどで、これも結構高いのだが、Ryzen 9 7950Xの方はDDR5-5200だから実に91.8%もの効率の高さである。ただしそれが5Threadというあたりが謎で、そこから急速に下がっているのが判る。この妙なカーブはWrite(グラフ69)も同じで、しかも1ダイのRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700Xには見られない辺りは、IODの作り方というか、Infinity Fabricの内部構成も関係している様に見える。要するに、Ryzen 7000シリーズのメモリコントローラは、複数のThreadから大量のリクエストを同時に受ける事を余り想定しておらず、ある閾値(これが5Thread程度なのだろう)を超えると急速に性能が下がる様に見受けられる。またこれにはInfinity Fabricも絡んでおり、ダイ1つからのリクエストを集中的に受けるとボトルネックになりやすいようだ。これが効率的に動くのは、2つのダイからそれぞれ2〜3Thread分のリクエストを動く状況で、それが2+3Threadという事になる様に見える。
この辺りはもう設計思想の違いで、大容量(32MB)のL3を搭載している状況で、大量のメモリアクセスリクエストが複数のコアから同時に発生する事は、少なくともコンシューマ向けのRyzenではあり得ないという前提のもとに設計が成されている様に見える。実際、5Threadに続いて帯域が大きいのは、2つのダイでそれぞれ1 Threadが動く2 Threadの状況で、ここも86GB/sec前後の帯域になっている。このあたりはEPYC向けのGenoaでは、また違ったメモリコントローラの特性になっていると考えられるだけに、どんなチューニングが施されているのか楽しみである。
WriteはReadに比べるともう少しコンサバティブではあるが、5 Threadの所にピークがあるのは同じである。もっとも最高性能は1 Threadの時、というのはDDR5であってもWriteではBurst転送が効かない事を考えれば妥当な結果である。逆にCore i9-12900Kは、5 Threadあたりが最高速と言うのは、L3→MemoryのWritebackのメカニズムがまたAMDとは全く異なる事を示唆している。しかしこれだけThread数と帯域の関係が異なるのでは、AMDとIntelの両方に最適化したメモリへのデータ書き出し手法というのが結構異なる事になる訳で、アプリケーションエンジニアにとってはちょっと頭が痛い話かもしれない。
○◆テスト1: 消費電力測定(グラフ70〜76)
テストその1(Discrete Graphics環境)の最後は消費電力測定である。まずグラフ70がSandraのDhrystone/Whetstone実施中、グラフ71がCineBench R23(All CPUとOne CPUの両方)、グラフ131がProcyon 2.0のOffice Productivity、グラフ72がTMPGEnc Vide Mastering Works 7で4streamのX.265エンコードの最初の180秒、グラフ73が3DMark FireStrike、グラフ74がMetro Exodus Enhanced Editionの、やはり2Kでのベンチマークの実効消費電力変動を示したものである。グラフ75がそれぞれの平均消費電力(と一部ピーク時消費電力)、それと待機時の消費電力をまとめたもの、グラフ76が個々の消費電力と待機時との差をまとめたものである。
グラフ70
グラフ71
グラフ72
グラフ73
グラフ74
グラフ75
グラフ76
まずグラフ75を見て頂くと判るが、そもそもRyzen 7000シリーズはどれも待機時の消費電力が高めである。Core i9-12900Kに比べて30W、Ryzen 9 5950Xに比べても20Wのアップである。理由の一つは、ハイエンドマザーボードということで色々消費電力が増加する要因がありそうという事だし、メモリもDDR5-5200動作はJEDECの標準ではなくEXPOモードでの動作になるので、この分も加味されていると考えて良いかと思う。ただそれにしても、SandraのDhrystone/WhetstoneでRyzen 9 7950Xは他を圧倒する消費電力の多さであり、流石TDP 170Wの製品だけの事はある。それに比べるとRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700Xは概ね200W程度と、Ryzen 9 7950Xよりも120Wほど低い消費電力に収まっており、同じ105W TDPのRyzen 9 5950Xと比べても20Wほど低めになっているのは優秀と言える。
CineBenchやTMPGEncでは、最初の数十秒だけ跳ね上がるのはまぁPrecision Boost/PL2の宿命であるが、問題はその後の定常状態で、ここでもRyzen 9 7950Xはかなり高め。対してRyzen 5 7600X/Ryzen 7 7700Xはかなり低めに設定されており、割と性能/消費電力比は悪くないように感じる。面白いのはFireStrikeやMetro Exodusでの消費電力で、ここで最大なのはRyzen 9 5950Xで、これにRyzen 9 7950Xが続き、残りの3製品といった感じである。
こうした傾向は、それぞれの平均値をとったグラフ75を見ると明白である。とにかくRyzen 9 7950Xは、性能も高いが消費電力もまた相当に大きい。待機状態との差を取ったグラフ76で見ると多少緩和されるが、消費電力の多さで鳴らしたCore i9-12900Kとほぼ同等、という消費電力である(Dhrystone/WhetstoneではCore i9-12900Kを上回っている)。これはもう動作設定を効率優先よりも絶対性能優先に振ってしまっており、それだけ消費電力が大きいと考えられる。
もっともでは効率そのものはどうか? というと、これが面白い事にRyzen 9 5950XとRyzen 9 7950Xの効率がほぼ同等であった。表2にDhrystone/Whetstoneでのスコアとそれぞれの実効消費電力差をまとめてみたが、御覧の通り効率そのものは実はRyzen 9 5950Xが最高で、それとほぼ同等なのがRyzen 9 7950X、続いてRyzen 7 7700X、Ryzen 5 7600Xと続く格好だ。Core i9-12900Kは?というと、丁度Ryzen 7 7700XとRyzen 5 7600Xの中間程度(強いて言えばRyzen 5 7600X寄り)という辺りで、なのでCore i9-12900Kに比べるとずっと効率が良いのは間違いないのだが、思ったほどには高くないというか、性能の方に振ってしまった感じが見える。恐らくX付きSKUはこうした性能優先であり、効率優先は今後登場するであろうX無しSKUで実現する格好だろうか。これに関してはちょっと残念であった。
●テスト2:Integrated Graphics環境下の性能
○テスト環境その2(Integrated Graphics)
続いては統合グラフィック環境での比較である。Ryzen 7000シリーズはIODの方にNAVI 2ベース(というかRDNA2ベース)のGPUを統合するが
2CU、すなわち1 WGP構成。
Infinity Cacheは無し。
Ray Tracing Unitも無し。
という事で、性能の方はかなり低いと考えられる。今回は時間の関係で表3に示すように、Core i9-12900K vs Ryzen 7 7700Xという環境で、どちらも統合GPUを利用しての比較を行った。
○◆テスト2: PCMark 10 v2.1.2563(グラフ77〜82)
PCMark 10 v2.1.2563
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
グラフ77
グラフ78
グラフ79
グラフ80
グラフ81
グラフ82
まずは通常のアプリケーションがちゃんと動くのか? ということでPCMark 10を実施してみたが、結果から言えばRyzen 7 7700XはNGだった。具体的に言えば、Digital Contents CreationとGamingが現状のドライバではなぜか動作しない。まだRC6というバージョンだから動作しない事そのものはあり得る話だが、Digital Contents Creationが動かないのはちょっと不可解だし、Gamingに至っては3DMark単体ではちゃんと動作する事を考えると、まだ品質が低いと言わざるを得ないのがちょっと残念だ。そんな訳でスコアが出るのはPCMark 10 EssentialsとPCMark 10 Applicationsのみである(グラフ77)。
Test Group(グラフ78)を見ると、EssentialsとProductivityは悪くない。Essentials(グラフ79)ではなぜかApp StartupのみRyzen 7 7700Xが異様に高く、他はやや低めという妙なバラつきを見せるが、トータルすると大体同等。一方Productivityでは、特にOpenCL周りが驚異的に高速な関係で、性能が大きく異なる。ちなみに具体的に数字で示すと
テスト項目 Core i9-12900K Ryzen 7 7700X
SpreadsheetMonteCarloOcl 77.41 2.18
SpreadsheetEnergyMarketOcl 16.92 0.8 (数字は経過時間(秒))
で、もうCore i9-12900KではCPUで処理を行っているOpenCL周りを、Ryzen 7 7700XではうまくGPUでオフロードできているのがこの差の要因と思われる。ただその一方で、Digital Contents Creation(グラフ81)を見ると、何でかRendering & VisualizationとVideo Editingの両方が動作せず、なのでそもそも比較が出来ない。Gamingも同様である。
Applicationに関しては大きな差では無いが、全般的にCore i9-12900Kの方がやや優勢といった感じである。先のグラフ7ではCore i9-12900KとRyzen 7 7700Xの性能差がそこまで無かった事を考えると、これは統合GPU側の問題と考えて良いかと思う。
○◆テスト2: 3DMark v2.22.7359(グラフ83〜86)
3DMark v2.22.7359
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
グラフ83
グラフ84
グラフ85
グラフ86
流石に統合GPUでFireStrike UltraとかTimeSpy Extreme、更にはPort Royalとかを実施するのは無謀なので見送り、若干減らしたテストを実施してみた。さてまずはOverall(グラフ83)だが、全般的にRyzen 7 7700Xの方が低めである。純粋にスコアで言えば、15〜30%程度、Ryzen 7 7700Xのスコアが低い。ただいくつかのテストはCPU性能も加味されているので、では純粋にGraphics Testの結果は? というのがグラフ84で、こちらもやはり15〜30%ほどRyzen 7 7700Xの方が低めである。要するにIntelのUHD Graphics 770より2〜3割低い、というのが実力に見える。
Physics/CPU Test(グラフ85)はそもそもコア数も異なるからRyzen 7 7700Xのスコアが低めなのは当然だし、Combined Test(グラフ86)も当然これを反映したものとなる。
○◆テスト2: FF XIV 暁月のフィナーレベンチマーク(グラフ87)
FF XIV 暁月のフィナーレベンチマーク
SQUARE ENIX
https://jp.finalfantasyxiv.com/benchmark/
グラフ87
何もゲーム系を試さないのもどうかと思い、簡単なものを一つ。ということでFF XIV 暁月のフィナーレベンチマークを。測定方法などはこちらで示す通りだが、今回は
解像度:1.5K(1600×900)/2K/2.5K
プリセット:標準品質(デスクトップPC)
とした。またOCATは使わず、スコアだけを取得している。という事で結果はグラフ87の通り。こちらもRyzen 7 7700Xのスコアは、Core i9-12900K比で16〜18%ダウンとなっている。一応ベンチマークの目安で言えば、スコアが4000〜5999の範囲は「普通」で、標準的な動作が見込めるとしているので、建前上は2K解像度でのプレイは可能だが、まぁ快適か? と言われればちょっと厳しいというあたりだろうか。
そもそもIntel UHD Graphics 770そのものが、単体でゲームをやるのは厳しいという評価の性能でしかないから、ここから2割近く性能が落ちたらさらに厳しいのは明白である。もっともRyzen 7000シリーズの統合GPUはそうした目的のためのものではないから、まぁ最低限のレベルはクリアしているというあたりか。
○◆テスト2: 消費電力(グラフ88〜89)
グラフ88
グラフ89
CPU単体での消費電力は先ほどグラフ70〜76で示した通りなので、統合GPUの消費電力を確認してみた。ということで、グラフ88が3DMark FireStrike Demo実施中の消費電力変動である。グラフ89は稼働中の平均値をとったもので、御覧の通り僅かながらRyzen 7 7700Xの方が低めである。もっともFireStrikeのスコアを考えると、性能/消費電力比の観点ではCore i9-12900Kの方に軍配があがりそうではあるが。
●N5プロセスの特性と、Ryzen 7000 Seriesの評価まとめ
○◆消費電力追試、N5プロセスの特性(グラフ90〜91)
最後にもう一度消費電力測定だが、今度は絶対的な消費電力ではなく、ちょっとTSMCのN5プロセスの特性を調べてみるべく、動作周波数と消費電力の関係を測定してみた。ちょっと前になるが、Comet LakeとZen 2コア製品の比較と同じやり方だ。今回は表1の環境のまま、Ryzen 7 7700Xのみを対象に行ってみた。
グラフ90
グラフ91
やり方は簡単で、Ryzen Master(Photo40)を利用して動作周波数を600MHzから100MHzづつ引き上げながら、AIDA64を利用してCPUとMemoryに負荷を掛け、その際の温度変化をCoreTempを使って確認する、というやり方で確認した(Photo41)。消費電力そのものはシステム全体のものを測定している。負荷は概ね2分ほど掛け、うち最後の1分の平均を取った格好だ。
Photo40: これは2.5GHzでの状況。ちなみにRyzen MasterはZen 4に対応したBuild 2.10.0.2201を利用した。
Photo41: AIDA64の最新版でもCPU温度が測定出来なかったため、CoreTempを併用した。ただCoreTempの方も、消費電力測定の方は明らかにおかしかったので、こちらの数字は無視した。ちなみにこれがギリギリ駆動できた限界(4.9GHz)である。
で、そもそもZen 2の世代も、動作周波数と消費電力の関係が割とリニアというか、Intelと違ってあまり指数曲線的に増えない傾向があったが、ではZen 4は? というのがこちら(グラフ90)。なんでか1.4GHz→1.5GHzで消費電力が減る、という不思議な傾向があったのだが、それはともかくとして4.9GHzまで割とリニアに消費電力が増えてゆく傾向が今回も確認できた。ちなみに5GHzは、Ryzen Masterで設定する事は可能だったが、AIDA64で負荷をかけた瞬間にシステムリセットが発生したので、4.9GHzで打ち止めである。破線は近似であるが、傾きは15.827W/GHz程で、これはRyzen 7 3800X(21.541W/GHz)に比べてだいぶ低くなっている。また4.5GHzで打ち止めだったRyzen 7 3800Xから400MHzほど上に伸びているあたりも、プロセスそのものの変更が低消費電力化と高速化に貢献していることが確認できると考えて良いかと思う。
ちなみにグラフ91はCoreTempを用いて測定した、動作周波数とCPU温度のピーク値の関係である。こちらでも1.4GHz→1.5GHzで微妙に温度が下がっているのは、やはり消費電力が減ったためと考えられる。それはともかくとして、4.9GHzで105℃に達しており、このあたりが動作的に限界だったと考えられる。ただこちらも周波数に合わせて単調増加になっており、傾きは概ね13.389℃/GHzといったところ。OC動作とかになればまた跳ね上がるのだろうが、普通に使う分にはこの程度で収まっているのはやはり低いと言える(ちなみにこれは8コア全てがフル動作での温度なので、1〜2コアのMax Boostとはまた状況が異なる)。とは言え、これ360mmラジエターを搭載した簡易水冷クーラーでの数字である事を考えると、やはりもう少し消費電力を減らさないと発熱的に厳しい感じだ(そもそも5GHzに到達しなかったのは、消費電力よりも発熱がネックになったためと思われる)。
○考察
ということで駆け足にRyzen 7000シリーズの性能をご紹介した。簡単にまとめると
性能は確かに上がった。
その分消費電力も増えた。
という事に尽きる気がする。性能の向上はもう説明の必要もなく、Alder Lakeを凌いでいる。これで次のRaptor Lakeに勝てるか? というとまだ未知数な部分はあるが、モノによっては良い勝負になりそうに思える(Raptor LakeのSTで15%、MTで41%という性能向上はどんな場合にも通用するものでもなさそうだからだ)。
その一方で、場合によってはAlder Lakeを凌ぐ消費電力になってしまったのは、ちょっと残念である。どちらかと言えば、消費電力盛り盛りのX付より、この後登場するであろう65W/105WのXなしSKUの方が、ずっと幸せになれそうな気がするのは気のせいだろうか?
あとは、ご時勢なので仕方ないのだが、非常に残念なのが日本国内向けの価格である。AMDの公式発表によれば
Ryzen 9 7950X:\117,800
Ryzen 9 7900X:\92,500
Ryzen 7 7700X:\66,800
Ryzen 5 7600X:\49,900(いずれも税込み)
となっている。換算レートは(消費税の分を抜いても)\151/$〜\153/$と結構高めである。まぁこれは何といっても円安が影響しているという話もある訳で、AMDの責任ではないのかもしれないが、ちょっと厳しいところだろう。