東大生はどのようにお金を稼いでいるのか。現役東大生の黒田将臣さんは「世間は『東大』というブランドが大好きだ。『東大』をタイトルにした本を出したり、『東大生が教える』が売りの塾を経営したりすれば、あっという間にサラリーマンの平均年収を超える売上が手に入る」という――。

※本稿は、黒田将臣『ビジネスとしての東大受験 億を稼ぐ悪の受験ハック』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/BongkarnThanyakij
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BongkarnThanyakij

■日本人は「東大」ブランドが大好き

2021年には日曜劇場『ドラゴン桜』が大流行しました。ハッシュタグ「#ドラゴン桜」は何度もツイッターでトレンド入りし、受験モノの企画・ドラマは令和の時代にも強い、ということが証明されました。

日本人は、受験や東大というものが好きです。

テレビでは「東大王」「さんまの東大方程式」などのバラエティで東大生タレントが登場し、「QuizKnock」のような東大生YouTubeチャンネルも多く存在していて、そのまま卒業後もYouTuberとして活躍する例がいくつもあります。

東大生としてテレビ等にも出演している伊沢拓司・河野玄斗・水上颯・西岡壱誠らの勉強法は、多くの日本人が参考にしています。

なぜこれだけ一般入試が廃れてきている中で彼ら彼女らの勉強法がウケているのかというと、答えは簡単です。受験生ではなく、大人が東大というブランドに惹かれているからです。

河野玄斗さんの『シンプルな勉強法』(KADOKAWA)は10万部売れ、図解版も発売されてさらに売れているわけですが、この本の客層を見ると読者層の8割が20代以上です。

西岡壱誠さんの『東大読書』(東洋経済新報社)は20万部売れている本ですが、この本の客層も、9割の層が20代以上です。

■東大生は圧倒的に稼ぎやすい

大人の学び直しは、今や大きな市場です。「東大に合格するような学力をつけている人から学びたい」という需要があるのです。

はっきり言いましょう。今や、一般入試で東大をはじめとする有名大学に入る意味は、「圧倒的に稼ぎやすい」ということなのです。一般受験は教育ビジネスや受験産業で活躍したい人が名を上げるための場と言っても過言ではありません。ただ東大に合格したいだけなら、推薦で入学する方が遥かにラクなのですから。

それでも、世間的な評価として、東大に一般入試で進学して「ちゃんと勉強した人間」だと認めてもらえるということは非常に価値が高いのかもしれません。

例えばこんなに時代が変わっても社会には学歴フィルターが厳然と残っており、就職活動でも通っている大学が評価されます。こんなに入試が変わってきているにもかかわらず、日本人にはやはり未だ根強く、「東大生」を評価したがる「東大信仰」が生き残っているのです。

■「東大生」はもはや職業

もっといえばやはり、AOや推薦合格者よりも一般入試に合格した人の方を企業としても採用する場合が多いです。「一般入試で頑張って有名大学に合格した人間」を評価したがる、「努力神話」が根付いているのです。

ここであえて極論しましょう。受験とは、「就職活動」の一環だと定義してしまっても差し支えないのではないでしょうか。

だって考えても見てください。東大生って、立派な「職業」ですよ。

「東大王」HPより

東大生タレントがたくさんいて、それだけでお金儲けしています。東大生で勉強法の本を出す人間がたくさんいます。「東大生が作った塾です!」とか「東大生が集まって起業しました!」というような会社であればいろんな投資家からの出資が見込めます。

■有名大卒であれば時給5000円のバイトにもありつける

ここまで「東大は儲かる」という話をしてきましたが、東大とお金儲けが直観的に結びつく方は少ないのでしょうか。

僕も、東大生に「机上の勉強はできるけど実社会のビジネスには疎い」というイメージがあることは否定しません。正直、周囲の東大生を見ていて、「学歴を使えば社会でいろいろなことができるのにもったいないなあ」と思うことはよくあります。多くの東大生ですら東大の価値を知らないのです。

ただ、東大が「儲かる」ことに気付いた一部の目ざとい東大生は、非常に合理的に東大ブランドを使って商売をしています。

まず、誰でもわかる簡単な話から始めましょう。「東大生 バイト」と検索すれば時給5000円で家庭教師のバイトにありつくことができます。時給5000円ということは、月100時間やれば50万円です。大学に通いながらでも、年収600万を手にすることができます。

これは東大に限りません。京大生や早稲田生や慶應生も、同じように高単価なバイトにありつけます。

そして恐ろしいのが、これがほんの序の口でしかないということです。東大ブランドをさらに使い倒す方法があるのです。

僕は東大生という肩書きの使い方は大きく3つあると考えています。「イメージ」「人脈」「最低保証」です。この記事では、最初の2つについてお話しします。

■受験本で30万部が売れると約5000万円の印税収入

まずは1つ目、東大の「頭がいい」というイメージを使ってどれだけ稼げるかを暴露してしまいましょう。

先ほどもテレビやYouTube、書籍などで勉強法を売り出す東大タレントの名前を挙げましたが、僕が所属する会社の代表を務める西岡壱誠がどのようなビジネスモデルで活動しているかを見ていきましょう。

彼は自らの大学受験で培ったノウハウをもとに、2018年に出版した読書術の本『東大読書』で20万部を売り上げ、さらに翌年の2019年には東大ブランドを使って1年間で9冊もの本を出しました。

これがどれくらいのお金になっているか、ざっくりした概算を出してみるとこうなります。

『東大読書』の20万部に加え、ヒット作のおかげで西岡壱誠という著者が有名になり、同じ西岡さんの別の著書も注目度が上がって1冊あたりおよそ1万部程度売れました。10冊合計で約30万部です。

ビジネス書の定価が1冊およそ1500円、印税率が10%なので、30万部×1500円×10%=4500万円の収入になります。これに電子書籍の印税が加わるとだいたい5000万円です。

「東大生は頭がいい」というイメージを活かし、東大生という賢い人間が実践している読書術を本にすることで、5000万円の儲けが出るのです。

東大の頭の良さというパブリックイメージがどれだけお金につながるか、これでご理解いただけたのではないでしょうか。

写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

■「東大生」というだけで出版のハードルは下がる

もっとも、それは西岡壱誠が特殊な文章の才能を持っていただけじゃないか、と思う人もいるかもしれません。

しかし、それは違います。勉強術の本は常に一定のニーズがありますし、特に今は、東大関係の書籍はニーズが高まっています。あなたが東大生として「東大に受かったノウハウをまとめた勉強法の本を出したいです」と出版社に持ち込みに行ったら、話を聞いてくれる出版社が必ず見つかるはずです。その何よりの証拠に、あなたが今読んでいるこの本(『ビジネスとしての東大受験 億を稼ぐ悪の受験ハック』)は、まさに西岡壱誠がプロデュースした東大生の受験本なのです。

とはいえ、「本を書くと言ったって、何を書けばいいのかわからない」という方も少なくないでしょう。ただ、東大生になってしまえば書くべきことはいくらでも見つかります。詳しくは次の「人脈」の節でお教えしましょう。

書籍で何十万部というベストセラーを狙って出すことは簡単ではありませんが、東大生というだけで出版デビューのハードルはぐっと下がります。頑張って宣伝をすれば1万部くらい売れて、100万〜150万円程度の印税を得ることも夢ではありません。

ちなみに東大需要は本に限りません。ネット記事での東大ブランドも圧倒的です。

webメディアではPV数が重視されますが、勉強ノウハウを教えるコラムのタイトルに「東大」の2文字を入れるだけで、そうでない記事に比べて閲覧数が平均50%もアップします。「東大の勉強法だ」というだけで人は読みたくなるのです。

このように、知識産業において東大とは圧倒的なブランドなのです。

■東大生の「勉強用BGM」は3700万回再生

みなさんが日常的に触れているYouTubeにおいても東大の肩書きは効果抜群です。

90万人以上の登録者を有する、トップ東大生YouTuberの一人である河野玄斗のYouTubeチャンネルで最も再生回数の多い動画は何だと思いますか?答えは「勉強用BGM」です。何の変哲もないオルゴールが2時間流れるだけの動画が、東大生が投稿したというだけでなんと3700万回(※執筆当時)も再生されているんですよ。

高学歴YouTuberの人気コンテンツには「一緒に勉強」というジャンルが存在します。ユーザーが勉強する時に配信者が勉強している動画を流して、一緒に勉強している気分を味わえるというものです。

この手の動画はリピート率が高いので、簡単に数十万再生(=数十万円の広告収入)を達成します。そして配信側からすると、ただ勉強している様子を録画してアップロードすればいいだけなので、動画の手間や原価はほぼゼロです。

YouTubeは競争が激しい世界ですし、地上波テレビに出るくらい有名なタレントになるのは至難の業ではありますが、学歴を武器にして大きな利益を得ることもできるのです。

■塾経営を軌道に乗せれば桁違いの収入を得ることも可能

もっと効率よくお金を稼ぐことに特化するなら、塾や家庭教師といった教育ビジネスでは簡単に、安定してすごい数字が叩き出せます。東大生は受験勉強をしていたので当然受験勉強を教えることができ、参入障壁はとても低いのですが、これがなんと下手にベンチャーを起業するより儲かってしまうんです。

東大生は1学年が3000人程度ですが、そのうち10人くらいが必ずやっているビジネスがあります。それが学習塾の経営です。

東大生は勉強ができる、勉強を教えるのもうまいはずだというイメージは非常に強く、「東大生が勉強を教えます」と言うと確実にニーズがあります。具体的な数字を出すと、5人から10人の生徒は簡単に集まります。1人あたりの年間授業料の相場は70〜80万円程度なので、10人の生徒に教えるとすれば、それだけで年収700万〜800万円と平均的なサラリーマンの収入を超えてしまいます。

30人の生徒を集めてクラスを作れば、それだけで年間収入は約2000万円です。人を雇ってさらに規模を拡大し、5クラスほど運営すればなんと年商1億円です。ここまで軌道に乗せるのは大変ですが、東大ブランドがいかに儲かるかはご理解いただけたと思います。

そして、東大の中でも最難関の医学部(理3)は別格です。東大理3に合格させるためには出費を惜しまないという受験生の親は少なくありません。家庭教師が教え子を理3に合格させた場合の成功報酬は、人にもよりますが、だいたい1000万円と言われています。もちろん通常の授業料は別で、こちらは1年で500万円ほどです。これだけでも安くはありませんが、もし仮に5人の受験生を家庭教師として理3に合格させることができれば、年収7500万円ですよ。まさに桁違いです。

■「東大生の友達」はお金に換算するといくらか

こんな話は初めて聞いた、という方も少なくないと思います。というのも学習塾や家庭教師の情報をオープンするメリットは基本的にないので、誰も公言しないからです。こういうビジネスがどうやって成り立っているかというと、主に口コミや知人の紹介で広まっています。

というわけで、次は東大ブランドの2つ目の価値である「人脈」です。

黒田将臣『ビジネスとしての東大受験 億を稼ぐ悪の受験ハック』(星海社新書)

当たり前の話として、東大に入ったら「東大生の友達」が多く手に入ります。大体クラスが一緒になる友達が30〜40人で、それ以外の部活やサークルで絡もうと思えば1サークルにつき15〜20人。ちゃんと授業に行ってサークルに1つか2つ入っていれば70〜80人は友達ができるはずです。

年間70〜80人の友達ができるとしたら、4年間で300人は友達を得ることができるでしょう。

東大生の友達が将来出世して偉くなった時に面識が活きてくるわけですが、具体的にどんなメリットが生まれるかはケースバイケースで、人脈の力はなかなか説明しにくいものがあります。

なので、下世話な話ですがお金に換算してみましょう。この人脈をお金で買おうと思ったらいくらかかると思いますか?

例えば難関大学卒の男性との婚活マッチングサービスというものがあります。1人紹介してもらうごとに、だいたい5000円の手数料がかかります。難関大学に入らないで300人と知り合うためには5000円×300人で150万円かかる計算です。実は大学で作れる人脈だけで、学費の元は取れてしまっているんですよね。

また、東大生のうち約17%はキャリア官僚になり、いろんな省庁に行くことになります。先ほどと同じ理屈で、これらの人とビジネスマッチングでつながろうと思うと、いくらかかるでしょうか?

■優秀な東大生は金を出してでも欲しい

今の日本に官僚とビジネスマッチングできるサービスはありませんが、とある企業の社長さんに「こういうサービスがあったらいくら払います?」と聞いたことがあります。すると「大体1人につき50万は払っていいかな」という回答をもらいました。

将来キャリア官僚になる東大の友人を持つことの金銭的価値を計算すると、50万×300人×17%=約2500万円です。つまり東大で普通に学生生活を送っているだけで、2500万円儲けたことになるのです。

今一つ実感が湧かない人のために、さらに露骨な例を出しましょう。東大生が創業した求人広告会社は、将来有望な学生と企業のビジネスマッチングを実際に行っているそうです。いわゆる青田買いです。そこでこの会社は1件仲介するごとに手数料として1000万円を受け取っているという噂があります。優秀な東大生1人との面識は、市場価値にして1000万円ということですね。

どうです、これだけで東大に行く価値があると思えてきませんか?

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黒田 将臣(くろだ・まさおみ)
現役東大生
東大合格者0人の高校で、高校入学当初は下から数えた方が早い順位だったが、東大受験に合格するためのテクニックをハックし、2浪して東大に合格した。いまだに努力神話の建前が根強い一方で、進学校や予備校などの高額な教育産業が受験ノウハウを独占している受験の世界を変えるため、東大生集団「カルぺ・ディエム」に所属して、自分で受験のゴールを設定し、自力で東大合格できる受験生を一人でも増やすために活動している。
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(現役東大生 黒田 将臣)