「休日だから予定は立てない」は間違っている…心理学者が「休日こそ予定を決めるべき」と主張するワケ
※本稿は、シュテファニー・シュタール著、繁田香織翻訳『「本当の自分」がわかる心理学――すべての悩みを解決する鍵は自分の中にある』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■休めば休むほど動けなくなる
あなたもおそらく一度は次のような経験をしたことがあるでしょう。休めば休むほど動けなくなり、動けば動くほど活動的になる。
じつは、このことは「慣性の法則」に関係しています。つまり「動いていない物体(身体)は、外部からの力(動く理由)がないかぎり静止し続ける。動いている物体(身体)は、方向や速度を変えたり動きを停止させたりする力(理由)がないかぎり、そのまま動き続ける」といった法則です。
私も学生のころに、この法則を強く実感したことがあります。そのときのことをお話ししましょう。
ずっと前から楽しみにしていた期末休暇が始まったときのことです。試験が終わったら集中してやろうと思っていたことは、山ほどありましたから、最初の3週間は、ToDoリストに記したさまざまなことを行い、活動的に過ごしました。
ところがその3週間のうちに、ToDoリストに記したことをすべてやり切ってしまい、その後はすべきことがなくなってしまったのです。
長い、いや長過ぎるフリータイムの始まりです。朝にきちんと起きて、身支度を整えなければいけない理由もありません。コーヒーを淹れて、ベッドに戻り、寝転がったまま小説を何時間も読み続けました。
すると、動かないことで血の巡りが悪くなり、昼頃に身体がだるくなってきたのです。そのため、また少し寝てしまいました。
午後に起きたのですが、そのときにはさらに血の巡りが悪くなっていました。気分はどんより。またコーヒーを飲んで、なんとか気持ちを奮い立たせてリビングへ行き、少し気分転換しました(こういった気分転換さえしないこともありました)。
そして夜には、「今日は、なんの成果もない一日を過ごしてしまった……」と後悔し、自分のことを情けなく思っていました。動かなければ動かないほど、怠け者になっていったのです。
■休日にもスケジュールが必要
休暇が終わるころには私の活動レベルはかなり下がっていました。
やるべきことといえば、洗濯することぐらいしかないのに、それさえ気が重かったのです。このままではいけないと思っていたので、大学の授業が始まって、ほっとしました。授業が始まれば、いや応なしに活動することになるからです。
学校が始まって、再び活動的になり、見事にストレスにもさらされ、勉強をしながら、親の手伝いとして不平を言わずに洗濯機を毎日3回も回すようになったのです。
外部から動くきっかけを与えられたり、一日の予定が決められていたりすると動けるようになるのは、私だけではありません。大半の人がそうなのです。
そして、よりラクに活動を続けるコツは、その活動をやめないことです。月曜日が一週間の中でもっとも嫌な日になるのは、すべきことがたくさんあるからではありません。週末の過ごし方が平日とあまりにも違うからです。
そのため、月曜日のほうが火曜日よりもはるかに多くの原動力を必要とします。水曜日になると、仕事をするのがもっとラクになり、金曜日には、なぜ月曜日にあれほど嫌な気分だったのか、想像さえできなくなります。
仕事以外でも、克服したり努力したりする必要のある活動には、同じことがいえます。ある活動を定期的にすればするほど、ラクにできるようになるのです。
ですから、一日の予定をきちんと立てることは、怠惰を予防する最良の方法です。あなたもぜひ、プライベートタイムを含めた一日の予定表と週間予定表をつくってみましょう。
■予定があるからこそ自由時間が取れる
私自身も“予定表通りに”行動し、それゆえ自由時間も十分に取れています。
私は、朝食前に軽くスポーツをして、午前中に原稿を書き、昼休みに少しぼーっとして、それからピアノの練習をします。午後は心理療法士の仕事をして、18時には仕事を終えます。きちっとし過ぎていますが、怠け防止には有効です。
これは、前述した私自身の経験から得たスキルです。あなたもまずは、何をすべきなのか、何が自分にとって重要なのかをよく考え、それらを組み込んだ一日予定表と週間予定表をつくってみましょう。
この予定表はToDoリストのようなもので、物事をきちんと行うのに非常に役立ちます。
■決断を下す必要がない
また、自分自身への過小要求と同じくらい良くない、自分自身への過大要求も回避できます。
時間配分が下手な人はしょっちゅうストレスを抱え、一杯一杯になっています。それは、デッドライン間際に多くのことを片づけなければいけなくなるために、つねに切迫感にさいなまれているからです。
日々の行動を決めておくメリットとして、何度も新たな決断を下す必要がなくなるといった点もあります。これは大きなメリットです。
なぜなら、意志力と決断力は密接に関係しており、どちらも過剰に要求されると完全に失せてしまうからです。このことは、心理学のさまざまな実験で証明されています。
■行動に規則性を持たせると人生がラクになる
ある実験では、車を運転するドイツ人にコンピュータ上で新車の装備(色や内装、エンジン)を選んでもらい、その決断の仕方が検証されました。その結果、決断する回数が多ければ多いほど、決断することが困難になり、標準モデル(最低価格よりも平均1500ユーロ高いにもかかわらず)を選びがちになることがわかりました。
予定が決まっていれば、「その予定に従う」という一つの決断を下すだけで済みます。もちろん、例外があってもかまいません。私だって、つねに前述した予定をすべてきちんとこなせるわけではありません。ただ、基本的な行動パターンを決めておけば、いつでもそのルーチンに戻ることができます。
あとは、最初の一歩を踏み出せるかどうか、だけです。これが一番難しいかもしれません。そのためには、ものすごい原動力を必要とするからです。
でも最初の一歩を踏み出せれば、次はそれよりもラクにできます。そして、始めた行動を変えずに、そのまま定期的に行っていけば、どんどんラクにできるようになっていきます。
逆に、「やらなければ、やらなくなる」のです。これは、セックスにもいえます。とくに、安定した関係が長く続いているカップルで、相手に対する情熱が冷めてきた場合は、これが原因だといえるでしょう。
行動に規則性をもたせることは、さまざまな意味で人生をラクにしてくれるのです。
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シュテファニー・シュタール(Stefanie Stahl)
心理学者、心理療法士
約30年間の心理療法士、心理学者としての経験、および家庭裁判所鑑定人としての経験にもとづいて、「人とつながることに対する不安」「自己価値感」「内なる子ども」に関する数多くの書籍を執筆。わかりやすく読者の心に寄り添うように書かれた著書の多くがベストセラーになっている。膨大なカウンセリング経験と長年の研究から生み出された、心を改善する著者独自の手法は具体的かつ実践的であるため、専門家の間でも絶賛されている。ドイツのみならず他国でもセミナーを開催。専門家としてのテレビ、ラジオ出演、雑誌の寄稿も多数。
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(心理学者、心理療法士 シュテファニー・シュタール)