タブーとされてきた旧統一教会と自民党の関係を追及し続けてきたジャーナリストの鈴木エイト氏と、この問題の情報を発信し続けているひろゆき氏が初対談。旧統一教会問題の急先鋒の二人が、ツッコミどころ満載の自民党の自主“点検”リストの問題点を喝破する。(第1回)

※本記事の情報は対談を収録した2022年9月9日時点のものです。

撮影=松永学(右)

■氏名公表の基準がおかしい“点検”リスト

――お2人で対談をするのは初めてですか?

【ひろゆき】「サンデージャポン」や「ABEMA Prime」で何度か共演はしているのですが、1対1で話をする機会はなかったですね。

【エイト】よろしくお願いします。「ABEMA Prime」では旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の現役2世信者のお二人に、ひろゆきさんと僕が質問をするという企画でしたね。

――今回は、旧統一教会問題について発言、発信されている急先鋒の二人に、テレビなどとはまた違った視点で、ざっくばらんにこの問題を斬っていただけたらと思います。

【エイト、ひろゆき】よろしくお願いします。

――まず、自民党は、旧統一教会やその関連団体との関係をめぐる“点検”で、党所属国会議員379人のうち、何らかの接点があった議員が179人いたことを公表しました。鈴木さんは調査段階から、議員への質問内容が不十分などとして、今回の点検を「ポーズに過ぎない」と指摘されていましたが、公表された結果をどのように見ていますか。

【エイト】結構ひどいですよね。今回、氏名が公表されているのは、旧統一教会の関連団体のイベントに出て、そこで挨拶をした人からなんですよね。ただ出席しただけの議員や祝電を出しただけの議員は名前を出していない。

【ひろゆき】それで179人というのは、すごいですね。

【エイト】旧統一教会のイベントに出席した人は、挨拶をしていなくても名前を公表しているのですが、関連団体のイベントの場合は、挨拶をしていない限り、出席していても名前を公表されない。変なところで線を引いているんです。

【ひろゆき】そうすると、安倍晋三元首相が2021年9月にビデオメッセージを出したのはUPF(天宙平和連合)主催のイベントなので、今回の線引きで言えば名前が出ないということですか?

【エイト】安倍元首相が存命中だったら、名前を出されていない。

■詳細が一切ないのは「検証逃れ」

【エイト】しかも、文書では開催日や会合名を書くようになっていたんですが、今回公表したのは名前だけで、各議員がいつどのイベントに出たのか、詳細が一切ないんです。

【ひろゆき】この公表結果を見て、各議員がどのイベントで何をしたのかをメディアが調べようとしてもできない。

【エイト】そうなんです。たとえば、僕はこれまで、ある議員が旧統一教会系のイベントに出たり、祝電を送っていたとわかれば、必ず質問書を出していたんです。たとえその議員が教団系のイベントと知らずに出席したとしても、僕の質問書を見た時点で、それが統一教会系のイベントだったとわかるわけです。そうしたら、もしそれ以降に同じようなイベントに出たら、旧統一教会系のイベントだと知らなかったとは言えないはずなので。

だから、どの議員がいつどんなイベントに出たかを把握しているかは非常に重要なポイントなんですが、それすらも検証できない。「検証逃れ」と言われても仕方がない。

【ひろゆき】名前が公表された一人ひとりに、「いつ出席したんですか?」と質問書を送って、答えるのを待つしかないんですね。

【エイト】ただ、実際、メディアがぶら下がりとかで質問しても、答えない議員が結構多いそうです。党からの点検にさえ答えれば、それで終わりみたいな。

茂木(敏充)幹事長が、旧統一教会の関連団体の会合に出席した9割近くの党議員が「関連団体であるという認識がなかった」と発言していましたが、「その9割と1割、逆じゃないの?」と突っ込みたくなりますよね。

【ひろゆき】さすがに政治家をやっていて、旧統一教会と関連があるかをまったく知らないというのは考えにくいですよね。生稲(晃子)さんは1割に入れてあげてもいいと思いますけど。

【エイト】おそらく、おニャン子好きのおじさんに会いに行かされた、ぐらいのニュアンスでしょう。

■自民党はこれを出してどうする気なのか

【エイト】そもそも、議員に報告を求めた文書の冒頭には、「党として組織的な関係は一切ないことは既に確認済み」と書いてあるので、組織性があることをまず書けないんですよね。

しかも2枚目の質問内容も8項目しかなくて、一番重い質問でも「選挙の支援を受けたか」というレベルです。

秘書を受け入れていたか、教会関連の泊りがけの講習を受けたか、教団に便宜を図ったか、政策に影響を与えてきたかといった肝心な質問は一切ありません。最初から一定の枠を決められていて、これ以上のことは書くなよという前提のもと出された点検結果ですよね。

そもそも自己申告制という時点で、すでに報道されている以上のことは出ないだろうとは想定していたのですが、単に名前だけで、それも一部しか公表していないので、これは点検と言えるのかなと。

【ひろゆき】おそらく、これを見て国民もメディアも、「これなら自民党、大丈夫だよね。この件は終わり」とはならない。逆に、自民党はこれを出してどうする気なんですかね。

【エイト】でも、茂木幹事長は「他党よりも詳細な項目で事実確認した」とやたら自信満々なんです。党改革実行本部がタスクフォースを作って、きちんとチェックする体制を整えて、「今後は一切関係を持たないということを徹底をしていきたい」と言っている。

でも実際は、安倍元首相にも細田(博之)さんにも切り込めないし、安倍派はもう放任状態なんですよね。

写真=時事通信フォト
旧統一教会と所属議員の接点に関する点検結果を公表後、厳しい表情で記者の質問を受ける自民党の茂木敏充幹事長=2022年9月8日午後、東京・永田町の同党本部 - 写真=時事通信フォト

■わざと支持率を下げたいのではないか疑惑

【エイト】しかも、この点検結果をどの範囲まで公開するか、どの議員まで名前を出すかを岸田首相や麻生(太郎)さんと相談しているんですが、そのメンバーの中には萩生田(光一)さんもいるんです。

もちろん政調会長という党の要職に就いているので、そこに居ることはおかしくはないんですが、“ズブズブの関係”と報道されている人がそういう判断をするところに入っていていいのか、と当然なりますよね。

【ひろゆき】これで、今後は関係を持たないのであればいいのですが、旧統一教会との関係を誇りに思っていると発言した北海道の議員とかいましたよね。茂木さんとしては、党として今後は一切関係を持たないということを徹底すると言った以上、自民党として除名とかをせざるを得ないじゃないですか。でも、そんな話は出てこない。

【エイト】地方議員にも徹底すると言っていますが、本当に実行力があるかというと疑問は残ります。

【ひろゆき】おそらく、茂木さん自身は関わりがないから自信満々だと思うんです。ただ、この調査結果で国民が納得して内閣支持率が上がるかというと、その可能性はほぼゼロだと思うんですけど。

【エイト】そもそもこの点検をやったのは、内閣支持率がここまで下がってヤバいから、支持率を上げようとしたからです。その対応策がこれなのか、という話ですよね。

【ひろゆき】こうなると、「わざと支持率を下げたいのではないか疑惑」が出てもおかしくない。

■「マザームーン」山本議員の名がリストにない

【エイト】今回の点検結果で、選挙の支援を依頼したり組織的支援や動員を受け入れたと公表されたのは2人で、そのうちの一人は井上義行参院議員です。教団の集会で「信徒になりました」と言われた音声が出ているので、もう逃れようがないですからね。

もう一人が斎藤洋明衆院議員で、今まではあまり名前が出てこなかった人です。旧統一教会系の議員連合に2年連続で参加していたことはおさえていたのですが、前回、前々回の衆院選では50票差で負けているんです。昨年の衆院選は旧統一教会の支援を受けて、組織票でなんとか当選したという人です。

どちらかと言えば、この人は今回の調査で正直に答えちゃったんですよね。組織的支援や動員を受け入れたと。選挙支援を受けた人が2人だけのはずがないので。

【ひろゆき】韓鶴子氏を「マザームーン」と呼んだ山本(ともひろ)さんが抜けているのが、すごいですよね。

【エイト】正直者がバカを見ている。選挙支援を受けたのはこの2人ですってバーンと発表されてしまって。他にもっといるのに、なんかかわいそうですよね。

【ひろゆき】井上さんは、もともと安倍元首相の秘書官ですからね。

【エイト】そうです。そっちのラインなので調べない限りいろいろな疑惑は出てこないと思うんです。

今回の調査結果で、山本さんは関連団体の会合で挨拶をしたリストには名前があるんですが、マザームーン発言をしたのは関連団体じゃなくて統一教会本体の式典だったんです。なのに、「旧統一教会主催の会合への出席」のリストには名前がない。

マザームーン発言をした記憶がないのか、思い出したくないのかわかりませんが、とにかくあらゆる面で杜(ず)撰(さん)です。

【ひろゆき】これで逃げ切れると思っているってことですよね。「会合でマザームーン発言しましたよね?」と質問されたら、ノーコメントで逃げ回るか、電話してるフリをするか。

(※編集部注 山本事務所は「当初、関連団体の案内であったが、改めて確認したら教団本体の会合と判明した」として自民党が結果を公表した翌日に党本部に修正を報告)

■直撃取材されて警察を呼んだ防衛副大臣

【エイト】僕が2017年の秋の衆院選で山本さんに直(じか)当(あ)てした時も、そんな対応でした。

鈴木エイト『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)

最初は普通に気さくな感じで話していたのが、マザームーンという言葉を出した途端に顔がこわばって。こちらが出した名刺を二つ折りにしてポケットにしまって、秘書に「警察を呼べ」と言って、危うく警察に捕まりそうになりました。

その時、山本さんは防衛副大臣だったんですが、ジャーナリストの追及を受けて警察を呼んだ防衛副大臣なんです。さすがに自衛隊は呼べなかった。

その後すぐに「直撃取材に警察を呼んだ“自己防衛”副大臣」という記事にしました。

【ひろゆき】質問をしたジャーナリストを逮捕したとなったら、結構大きな問題になりますよね。

西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)

【エイト】向こうとしては、選挙活動を邪魔されたという言い分なんでしょう。まあ、確かに食い下がって、ずっと質問は投げていたんですが。選挙妨害で捕まえようと思えば逮捕された可能性もありました。

【ひろゆき】エイトさんって、リスクをずっと負い続けていますよね。

【エイト】まあ、そうですね。でも、国政選挙の時ぐらいしか議員に直当てはできないんです。ふだんは取材を申し込んでも逃げ回られるので、唯一本人に直接取材できるチャンスが選挙の時なんですよね。

ただ、安倍元首相の銃撃事件があって、政治家の警護はかなり厳重になると思うので、今後やりにくくなるのは確かです。

(第2回に続く)

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鈴木 エイト(すずき・えいと)
やや日刊カルト新聞主筆
滋賀県生まれ。日本大学卒業。2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表〜主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め『週刊朝日』『AERA』『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)
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ひろゆき(ひろゆき)
2ちゃんねる創設者
東京都北区赤羽出身。1999年、インターネットの匿名掲示板「2 ちゃんねる」を開設。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。YouTubeチャンネルの登録者数は155万人。著書に『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)、『なまけもの時間術』(学研プラス)などがある。
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(やや日刊カルト新聞主筆 鈴木 エイト、2ちゃんねる創設者 ひろゆき)