【ママスタセレクト】アルバルク東京・安藤周人選手後編イラスト

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前回からの続き。プロバスケットボールチーム「アルバルク東京」に所属する安藤周人(あんどう しゅうと)選手へのインタビュー。後編では、安藤選手がプロバスケット選手になるまでの道のりと、プロバスケットボールの魅力について伺いました。夢や目標に向かい、スポーツを頑張っている子どもたちに伝えたいことや、そのサポートをする親へのメッセージとは?



最初からプロバスケット選手を目指しているわけではなかった

――安藤選手がバスケットボール選手になろうと思ったのはいつごろですか?

安藤選手(以下、安藤):実は大学2年生になるまでは、正直将来のことをあんまり考えていなかったんです。父と兄が通った同じ高校に入り、2人と同じように卒業したら就職をして、普通のサラリーマンになれればいいかなと、すごく簡単に考えていて。しいていえば、バスケをしっかりやりつつ働けるところに就職したいという希望しかありませんでした。高校に入ったばかりの頃は身長も低かったから、親からも「プロはちょっと厳しいんじゃないか」とも言われていましたしね。

――やはりというか、バスケットボール選手として、身長を伸ばすことが課題になったのですね。

安藤:小さかったんですよね。身長を伸ばしたくて、高校3年生までは21時には寝て翌朝6時に起きる生活をしていました。親の500mlのビールジョッキに、牛乳をひたひたに入れて毎朝飲んでいましたね。

高校に入ると急に身長が伸びはじめて、最終的には今と同じ190cmになりました。そうしたら、当時の高校の担任が「就職するともったいないから、大学に行って上を目指しなさい」と声を掛けてくれたんです。高校3年生の6月頃の話で、みんな進路希望を出していた時期だったから、「どうしたらいいだろう」と悩みましたね。

海外での試合で受けた刺激が、プロを目指すきっかけに

――その後、青山学院大学へ進まれました。

安藤:そうです。先が何も見えない状態で悩んでいた頃に、青山学院大学から「うちでバスケをしないか」と話をもらって。そこからは、親や先生に相談しながらさらにいろいろ悩みましたね。

結局進学することにしたんですけど、進学したからといってプロになると決めたわけではなかったんですよね。大学を卒業したら関東の企業に就職して、「バスケができたらいいな」くらいにしか考えていませんでした。

――Bリーグ(国内男子プロバスケットボールリーグ)での活動は考えていなかったのですか?

安藤:高校生から大学生のはじめごろまでは、プロになるという考えはありませんでした。というのも、Bリーグができたのは、僕が大学4年生のときだったんですね。しかも当時プロバスケは全然人気がなく……。なにがなんでもプロになりたいという強い思いはありませんでした。

――プロになるつもりがなかったところから、プロになりたいと考えが変わったきっかけは、何だったのですか?

安藤:大学3年生 のとき、世代別の日本代表に選ばれたんです。そのとき韓国のチームと試合をしたんですけど、すごくいろいろな刺激を受けて……。そこからですね、「もっとやりたい」という気持ちが芽生えたのは。プロとしてやってみたい、プロの舞台を目指そうと決意しました。

プロへの道のりには家族のサポートが大きかった

――プロを目指しだしてからの家族のサポートはどのような感じだったのですか?

安藤:そもそもひとり暮らしがはじめてだったので、関東に引っ越して2週間くらいは母がつきっきりでサポートしてくれていました。ひとりで生活していくためのアドバイスをしてくれたり、料理の作り方を書いておいてくれたり。2〜3年も経てばひとりの生活にも慣れてきたので、母は試合を見に来る程度になりましたね。

毎週末試合があったんですけど、わざわざ故郷の三重県から見に来てくれて。試合の後は一緒にご飯を食べたり、料理の作り置きや生活用品の買い出しをしてくれたりと生活のサポートもしてくれました。

――大学の試合に遠方から来てくれるとは、お母様は相当大変だったのではないですか?

安藤:そうだと思います。金曜の17時に仕事を終え、車移動に4〜5時間。22時頃に東京について、そのあと2日間試合の応援をしたら日曜の晩に帰る……というような生活をずっとしてくれていました。

大学4年生になると、「もう最後だから」と言って、リーグ戦の20試合を全部見に来てくれたんですよ。その頃にはプロの道へ進むことは決めていたんですけど、「大学生で試合に出ている姿を見られるのはこれが最後だから行くね」と言われていたんです。

――お母様は安藤選手の活躍を見られる機会を大切にされていたのですね。

安藤:よく来てくれていましたね。プロになってからも、試合があればどこであろうと応援に来てくれるんですよ。「子育てが終わって自分たちのためにお金を使えるようになったから、試合を見るのも楽しみだし、現地でいろいろな体験ができるから逆にすごく感謝しているよ」と言われたこともあります。

そんなふうに言ってもらえるんだったら、プロになってよかった、活躍している姿を親に見せられてよかったなと思いますね。

選手同士仲が良く、メリハリもきっちりついている環境



――そんな経緯があってプロバスケの世界に入られて、今はアルバルク東京にて活躍されています。アルバルク東京の選手の皆さん、ものすごく仲がいいそうですね。

安藤:同じチーム同士、仲は良いですね。他チームでも大学のときに一緒にやっていた選手や仲良くなった選手とは、試合会場で話すこともあります。どのチームも、仲が悪い、チームの雰囲気が悪いということはないですね。

――仲が良いということは、選手同士で何か共通点があるのでしょうか?

安藤:趣味や好きなことに没頭する人が多いですね。だからこそバスケにも集中できるのかなと思います。

あとやっぱり肉は好きなんじゃないですかね(笑)。僕らは体が資本なので、しっかり食べるようにしています。

――バスケに関して、ケンカすることはないのですか?

安藤:ケンカはしませんが、みんなバスケに対して負けたくない気持ちが強いので、意見を言い合ったりすることはあります。でもバスケが終われば普通に和気あいあいと会話していて、オンとオフがしっかりしています。

――良いチームメンバーやスタッフに囲まれているのですね。

安藤:そうですね。それとみんな、それぞれの家族のことに対してもすごく協力的です。先日、試合当日にうちの子どもが生まれたんですよ。それをチームのみんなが知った途端、「試合のことはいいから奥さんを手伝ってあげな〜」と言ってくれるんです。正直、自分が抜けるとまずい大事な時期だったんですが。それにもかかわらず「ここは気にしなくていいから行ってこい」と言ってくれたので、すごく助かりました。

プロバスケットボールの魅力とは

――さて安藤選手にとって、バスケットボールの魅力はどんなところだと思いますか?

安藤:競技としてスピード感があるところですね。あと他のスポーツと比較すると、選手とファンの距離が近いことも魅力です。会場によっては選手が控えているすぐ横に応援席が設けてあることもあります。距離が近いから、選手の声やバッシュ(バスケットシューズ)が床を鳴らす「キュキュッ」という音、選手同士がぶつかり合う音もリアルに聞こえて、迫力がありますよ。

エンターテインメント性もすごいですよ。会場に大きなビジョンにいろいろな映像が流れたり、選手をライトで照らしたり、チアリーダーが目の前で踊ったり。バスケットボールだからこその魅力がたくさんあるんじゃないかなと思います。

――会場にお客さんが来て応援してくれるのは、やはり嬉しいものですか?

安藤:そうですね、嬉しいです! 応援してもらえている分、もっと頑張らないといけない、勝たないといけないと思えます。

プロの試合が見られる環境も増えていますから、アルバルク東京をはじめBリーグ全体をぜひ応援してほしいです! 会場にはいろいろな食べ物や子ども向けのグッズも売っていますので楽しめると思います。試合を観戦してから晩ごはんを食べに行くこともできますよ。

子どもたちのやりたいことに、親が全力でサポートを

――最後に、スポーツに打ち込む子どもたちや、サポートするママやパパに対して一言お願いします。

安藤:子どもたちには、やりたいことはとことんやってほしいです。とくに小中学生の子どもたちは、将来のことなんて今は気にしないで、毎日やりたいことをやって、楽しんで生活してもらえたらいいなと思います。

親御さんたちには、子どものやりたいことを一生懸命応援して ほしいですね。親御さんのサポートが子どもの成長にもつながり、なおかつ子どもが活躍する姿も見られるので、きっと「サポートしていてよかった」と思えるはずです。できる範囲で子どもたちの応援をしっかりしてあげてほしいなと思います。

(編集後記)

前後編でお送りしたアルバルク東京・安藤周人選手のインタビュー。バスケがただ大好きだった少年時代の顔、そして家族からあたたかい愛情を注がれて育ち、今を生きるプロバスケット選手としての顔……。さまざまな表情が垣間見られましたね。

スポーツに打ち込む子どもをもつママ・パパにとって、今後の子どものサポートについてとても参考になるお話ばかりでした。明日のアスリートを目指す子どもたちのために、ママやパパは惜しみない応援をしていけるといいですね。

取材・編集部 文・櫻宮ヨウ