2022年9月4日、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の世界大会「VALORANT Champions Tour 2022 Champions」(以下、VCT 2022 Champions)にて、日本代表チーム「ZETA DIVISION」が今大会で初の勝利を飾りました。

対戦相手は、APAC地域のラストチャンス予選「VCT APAC 2022 LCQ」を勝ち抜き、「VCT 2022 Champions」への出場権を獲得した、APAC代表インドネシアチーム「BOOM Esports」。インドネシアから、初の国際大会出場を果たしたチームです。

この試合は、グループステージの敗者復活トーナメントにあたる、ロワーブラケットでの対戦。両チームにとって、負ければ大会敗退という大きなプレッシャーのかかる一戦でした。

「ZETA DIVISION」は1マップ目で敗北し、後がない状況に追い込まれましたが、2マップ目からの見事な逆転勝利をつかみました。本試合の模様と、試合直後のプレスカンファレンスの内容をお届けします。

今大会の初勝利を手にした「ZETA DIVISION」

■試合結果

ZETA DIVISION [2-1] BOOM Esports

1マップ:11-13(ヘイヴン)

2マップ:13-11(パール)

3マップ:13-2(フラクチャー)

【ヘイヴン】好調なスタートを切るも、逆転負けの展開に

1マップ目は、「BOOM Esports」がピックしたヘイヴン。「ZETA DIVISION」は、2ndラウンドでのスリフティやLaz選手によるクラッチプレイなどで、ラウンド取得を重ねる好調なスタートを切ります。前半の守りではラウンド差をキープし、8-4での折り返しを迎えました。

しかしながら、後半の攻めでは「BOOM Esports」の守りに阻まれる苦しいラウンドが続き、11-11の同点へと追いつかれてしまいます。「ZETA DIVISION」は、その後も流れを取り戻すことができず、11-13での逆転負けを喫することとなりました。

これにより「ZETA DIVISION」は、次のマップで敗北すれば大会敗退という、後がない状況に追い詰められます。

Laz選手がオペレーターとヘッドハンターでのクラッチプレイを披露

「BOOM Esports」BerserX選手のオペレーターが猛威を振るった

【パール】Laz選手の見事なエースで勝利を決める!

続く2マップ目では、今大会からマッププールに追加されたばかりの新マップ・パールを「ZETA DIVISION」がピック。「ZETA DIVISION」がパールでの試合を披露するのは初めてで、どのような展開になるのか予想がつかないなかでの試合スタートとなりました。

1マップ目と同様に、パールでも「ZETA DIVISION」は前半で好調な戦いぶりを見せ、再び8-4での折り返しへ。しかし、後半の守りでは「BOOM Esports」の連取を許してしまい、終盤は手に汗握るギリギリの接戦が続きました。

そして、11-11のタイムアウト後、先にラウンドを取得したのは「ZETA DIVISION」。最終ラウンドでは、なんとLaz選手がエースを獲得して勝利を決めきるという、劇的な展開で「ZETA DIVISION」が2マップ目の勝利をもぎ取りました。

crow選手のガイディングライトによる索敵で、Dep選手の背後の敵に気づかせるファインプレー

最終ラウンド、Laz選手が見事なエースで勝負を決めきった

42.4%という驚異のヘッドショット率を叩き出したLaz選手

【フラクチャー】終始圧倒、主導権を握ったまま勝利へ

運命の3マップ目は、フラクチャーでの戦いとなりました。「ZETA DIVISION」の得意マップとされるフラクチャーでは、2マップ目までの試合展開とは打って変わって、「ZETA DIVISION」が終始圧倒する展開を見せます。

「ZETA DIVISION」は前半の守りで10ラウンドを取得し、10-2での折り返しへ。後半では、相手に1ラウンドも取らせることなく、13-2で圧勝。これにより、マップカウント2-1で「ZETA DIVISION」が今大会の初勝利を手にしました。

「ZETA DIVISION」らしいとも言える、崖っぷちまで追い込まれてからの逆転劇。前回の「VCT 2022 Stage1 Masters」で見せた、数々のドラマチックな勝利を彷彿とさせる戦いぶりだったといえるでしょう。

3マップ目でも、抜群のパフォーマンスを誇ったLaz選手のチェンバー

13-2の圧倒的なスコアで「ZETA DIVISION」が勝利

試合を終えた直後の「ZETA DIVISION」にインタビュー

「BOOM Esports」との試合直後、合同で行われたプレスカンファレンスに「ZETA DIVISION」の選手5名とXQQコーチが登壇しました。

プレスカンファレンスでは、「BOOM Esports」戦を振り返る内容や、復帰したばかりのTENNN選手のパフォーマンス、そして次に控える「LOUD」とのリベンジマッチなどについての質問が投げかけられました。その模様をお届けします。

プレスカンファレンスに登壇した「ZETA DIVISION」

○頭を抱えるシーンもあった、苦しい状況からの逆転劇

――1マップ目のヘイヴンでは惜しい戦いだったと思いますが、「BOOM Esports」のどんなところが上手いと感じましたか?

Laz:ジェットを使うBerserX選手のオペレーターがすごく上手くて、驚異的でした。ブリーチのTehbotoL選手の配置も少し特殊で、そこにもうまく対応することができませんでした。それでいて、細かい連携の合わせもスピーディで上手かったと思います。

――2マップ目のパールでは、XQQコーチが頭を抱えているシーンが印象的でした。あのとき、どのようなことを考えていたのでしょうか?

XQQ:あの試合は、頭を抱えたシーンがかなりあったので、どのタイミングかわからないですが、おそらく9本で止まって相手に連取されたところでしょうか。その場面では、もともと用意していたAセットの守り方が通らず、どうしようかと頭を抱えていました。

2マップ目の試合中、頭を抱えるXQQコーチ

――パールでは、11-11のラウンドが逆転のきっかけになったと思います。そこで相手がタイムアウトを取ったとき、どのような話をしていましたか?

XQQ:あまりよく覚えていないのですが、あのタイミングはずっとAサイトを攻められていて、それにカウンターできる形をつくっていたので、できるだけそれを継続しようと話していたと思います。

――パールでのLaz選手のエースは、このマッチにおける象徴的な場面でした。エースを取ったときの心境や、チームの反応を教えてください。

Laz:エースに関しては、2〜3発くらいヘッドハンターやオペレーターを外した記憶があるので、もうちょっと上手くできたなと思っています。チームの反応は、「来たな!」という感じでした。

2マップ目の最後でエースを獲得し、勝利を決めたLaz選手

○復帰直後のTENNN選手、パフォーマンスはまだ50〜60%

――TENNN選手は休養からの復帰後、短期間での準備はいかがだったでしょうか。また、ご自身としては、今どれくらい本調子が出せていると感じますか?

TENNN:練習期間が1週間くらいしかなく、僕は『VALORANT』を1カ月間くらいプレイしていない状態だったので、いきなりプロの強いチームと戦うのは、すごく大変でした。現状のパフォーマンスは、まだ50〜60%くらいしか出せていないと思っています。

――TENNN選手は復帰後、モニターとの距離が以前よりも離れているように見えますが、それによるプレイへの影響はありますか?

TENNN:もとはモニターとの距離が13センチでしたが、今は27センチくらいでプレイしています。やはり倍も距離が離れると、敵の見え方が全然違って、かなりやりにくい状態ではあります。

試合中のTENNN選手。目の疾患による一時休養から復帰しての出場

○次なるLOUD戦に向け、再戦には再戦なりの用意を

――試合を重ねるごとに調子が上がっているように見えますが、実際にプレイされていてどのように感じますか?

Laz:見てのとおり、試合が進むにつれて調子はどんどん上がってきています。パールの終盤も、つらい押され方をしていましたが、そこから巻き返すことができて「これは来たな」と感じました。

crow:アイスランドでの「VCT 2022 Stage1 Masters」の経験があったからこそ、全然まだ勝てるという気持ちが働いて、どんな状況でもいける感覚がありました。

――次は「LOUD」との再戦になります。初戦を振り返って、次の試合に向けて改善すべき点は何だと思いますか?

XQQ:前回の「LOUD」戦では、ミクロ面のミスがかなり目立っていて、そのため取れるラウンドを落としてしまい、結果的に惜しい試合になりました。その部分の修正をしたうえで、再戦には再戦なりの用意をして、戦いに挑もうと思っています。

――「VCT 2022 Stage1 Masters」では、世界3位に上りつめる快進撃がありました。今大会のチームの完成度は、前回と比較して今どれくらいでしょうか?

XQQ:「VCT 2022 Stage1 Masters」と比較すると、完成度は60〜70%くらいだと思います。理由としては、単純に今のロースターでの準備期間が短い点と、前回のようにメタにマッチした構成を全マップで用意できていない点が大きいです。

ただ、大会はすごく吸収できる場なので、このまま戦い続ければ、「VCT 2022 Stage1 Masters」のように勝ち上がっていけると思います。

Laz選手とXQQコーチ

○勝てばプレイオフ進出、9月7日26時より「LOUD」と再戦

「BOOM Esports」に勝利した「ZETA DIVISION」は、グループBのロワーブラケットでブラジル代表チーム「LOUD」と対戦することが決定しました。「ZETA DIVISION」は、グループステージの初戦で「LOUD」に敗北しているので、リベンジマッチです。

グループステージでは、各グループの上位2チームがプレイオフへ進出でき、次の試合で「ZETA DIVISION」が勝利すれば、プレイオフへの進出が決定します。試合は、9月7日(水)26時ごろより実施予定です。

DAY5終了時点で決定した対戦スケジュール

DAY5終了時点のグループごとのトーナメント表