末期の脳腫瘍と診断された女性教師(画像は『Daily Record 2022年8月21日付「Scots teacher with terminal brain cancer blames ‘blue water and toxic chemicals’ at school」(Image: Tony Nicoletti/Daily Record)』のスクリーンショット)

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スコットランド在住のある女性教師は昨年、末期の脳腫瘍であることが判明し余命18か月と告げられた。女性が以前働いていた学校は産業廃棄物処理場の跡地に建てられており、数年間で深刻な病気を患った職員や生徒が複数いたという。女性は病気の原因について化学物質で汚染された水道水が原因だと主張しているが、政府はその土地と病気との関連性を否定した。『Daily Record』『The Mirror』などが伝えている。

スコットランドのニューアートヒルで暮らすジーナ・ワットさん(Jeana Watt、48)は昨年6月、悪性の脳腫瘍である「膠芽腫」と診断された。彼女は自分が患った病気について、勤務先の学校の蛇口から流れていた有毒な水が原因だと考えているそうだ。

ジーナさんが数学教師として働いていたラナークシャーの「Skills Academy(スキルズ・アカデミー)」は産業廃棄物処理場の跡地に建てられており、ブキャナン高校、セント・アンブローズ高校とキャンパスを共有している。

学校では以前、蛇口から青い水が流れ出ているのが発見され、その影響からか複数の職員と生徒が深刻な病気にかかったと主張したという。それを受けたスコットランド政府は2019年、土地の調査を実施したが病気との関連性は認められず、学校は同年8月に再開した。

しかし昨年、脳腫瘍が発覚し余命18か月と宣告されたジーナさんは、学校で働いていた3年間に飲んだり、手を洗ったりした水に含まれていた化学物質によって病気が発生したとして、このように語った。

「スキルズ・アカデミーはブキャナン高校のすぐ前にあり、わずか数年間で私を含む2人の教師が末期がんと診断されました。それに学校の蛇口から青い水が流れていることが判明した時にも、同じ敷地内のブキャナン高校で働いていた4人の教師が膀胱がんと診断されたのです。政府による調査では偶然の一致と報告されましたが、私は信じません。昔から健康だった私がこの学校で働きはじめて1年後に様々な体調不良に見舞われるようになり、そして昨年にがんと診断されたのです。私の脳腫瘍は青い水と地面の汚染に関係していると思います。私たちはみんな学校の水を飲み、手を洗い、学校の食べ物を食べていたのですから。」

なお現在校舎が建っている場所は、1945年から1972年まで「Gartsherrie Ironworks(ガートシェリー製鉄所)」が鉛やヒ素などの産業廃棄物を処理するために埋立地として使用していたという。そのため2012年の開校前には敷地を安全に使用できるよう、表土に新しい土を入れるなどの措置が行われたそうだ。

しかし2019年の調査報告書で敷地は安全だという結論を下したとはいえ、同調査によってキャンパス周辺で禁止化学物質であるポリ塩化ビフェニルの濃度が上昇していたことも判明していた。

ジーナさんは現在、ドイツのケルンでがん免疫療法(IO)の専門医の治療を受けるための資金25万ポンド(約4000万円)を集めると同時に、政府に2回目の土地調査を求めている。

それに対し、スコットランド政府の広報担当者は2019年の調査結果を擁護し「学校と敷地は安全で、体調不良とキャンパスに関連はない」と語っており、ノース・ラナークシャー評議会の広報担当者も「調査結果に反するいかなる主張も、単に事実無根です。この職員が雇用主にこのような主張をしたことは一度もありません」 と述べた。また公衆衛生コンサルタントであるジョン・ローガン氏(John Logan)も「学校や敷地と教師や生徒の体調不良との間には何の因果関係もない」と主張している。

なおこのニュースについて、世間から「禁止化学物質の濃度が上昇していることが浮き彫りになったにもかかわらず、なぜ政府は安全だと言い切れるのか」といった意見があがっている一方で、「学校では他に何人もの人が同じ水源で手を洗っている。もし水が原因なら全員が病気になるのでは」など疑問視する声も出ている。

画像は『Daily Record 2022年8月21日付「Scots teacher with terminal brain cancer blames ‘blue water and toxic chemicals’ at school」(Image: Tony Nicoletti/Daily Record)(Image: Supplied)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)