「本当に就職に強い大学ランキング」上位に入った大学

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2022年卒生を対象にした実就職ランキングで3位に入った福井大学の文京キャンパス正門(写真:PIXSTAR/PIXTA)

コロナ禍が本格化してから2年目の就活となった、2022年3月卒の大学別の就職状況がまとまった。大学通信が、医学部と歯学部の単科大学を除く全大学を対象に実施している就職状況調査では平均実就職率は86.1%。2021年卒を0.7ポイント上回った。

文部科学省が発表した「令和3年度大学等卒業予定者の就職状況調査(4月1日現在)」によると、2022年卒の就職率は95.8%。ただし文科省の調査は対象大学が62大学と少なく、集計対象は就職希望者に限られる。

対して本調査は、対象大学が554大学で、卒業生から大学院進学者を引いた人数を対象としているので、より厳しい数値が出る。それでも、前年の平均実就職率を上回っているので、就職状況は上向いていると捉えてよさそうだ。

就活プロセスのオンライン化で負担軽減

この背景には、コロナ禍でも企業の採用意欲が衰えていないことがある。航空や観光、飲食など、採用を中止もしくは大幅に縮小した業種もあったが、リクルートワークス研究所の調査によると、2022年卒の大学生の求人倍率は1.50倍だ。多くの就活アナリストは、「1人当たりの求人が1社に満たなかったバブル崩壊直後に比べれば高い。若年労働者の減少による人材不足の企業が多いことから、大学生の売り手市場は続いている」と口をそろえる。


コロナ禍の就活も2年目となり、就活プロセスのオンライン化がさらに進んだ。この点も、大学生にとってプラスの側面が大きかったようだ。

就活にかかる時間や経費などの負担が軽減され、企業に対して効率的にアプローチが可能になった結果、大学生就活の選択肢が広がった。こうしたメリットは、特に地方の学生に大きかった。オンライン化により、一人当たりの内定数が増え、そこから入社先を絞ることに悩む学生が多くなったようだ。

こうした状況下で就活が進んだ、2022年卒の「卒業生数1000人以上の実就職率ランキング」を見ていこう。

1位の金沢工業大学は、このカテゴリーで6年連続トップ。「自ら考え行動する技術者の育成」を目指し、問題発生から解決にいたる過程や方法について、チームで実践しながらPBL(Project Based Learning)形式で学ぶ、「プロジェクトデザイン教育」を学びの中心に据える。このプログラムは、経済産業省が提唱する、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」といった社会人基礎力の養成と親和性が強く、社会人基礎力を身につけたエンジニアの養成が、高い実就職率の背景にある。

2位の愛知工業大学も昨年と同じ順位。大正元年(1912年)に創立した名古屋電気学講習所を起源にもつ伝統校で、多くの学生が地元企業を中心に就職している。

3位の福井大学は、卒業生数1000人以上かつ、複数の学部を持つ国立大の中で15年連続のトップ。

4位は大正11年(1922年)創立の関西工学専修学校からはじまる大阪工業大学。伝統の力に加え、卒業時に身につけておくべき能力を可視化し具体的な目標を設定したカリキュラムにより、「卒業時の質保証」を進めていることも高い実就職率を支えている。

工科系大学がランキング上位に入る理由

ランキング上位には工科系大学が多く、名古屋工業大学(8位)、千葉工業大学(11位)、広島工業大学(13位)、東京理科大学(16位)、芝浦工業大学(20位)などが入った。

大学関係者は「主たる就職先のメーカーの採用規模が大きいことに加え、IT関連技術が無関係でいられる企業が皆無となる中、理系人材は、金融業やサービス業など、いわゆる文系的な職種からも引く手あまた」と話す。

総合大学では、前出の福井大学のほか、私立総合大学でトップの名城大学(5位)、群馬大学(6位)、中部大学(9位)、三重大学(17位)、岐阜大学(18位)などが上位にランクイン。中部圏の大学が多いことが特徴だ。

ランキング7位は昭和女子大学。卒業生1000人以上の女子大の中で、12年連続でトップを続けている。メガバンクの採用減に加え、一時的にせよ航空や観光、飲食などが採用を控えるという、就活環境が悪化した中でも高い実就職率を維持している背景に「社会人メンター制度」がある。社会人との交流を通し長期的な視点でキャリア感が醸成されることが、就活環境の変化に対応できた一因ではないか。

実就職率が高い女子大は多く、実践女子大学が前年の実就職率を3.8ポイント上回って12位に入ったほか、14位の安田女子大学、19位の東京家政大学などがベスト20入りした。

東西の女子大御三家では、東京女子大学(56位)、日本女子大学(68位)、同志社女子大学(72位)、京都女子大学(76位)がランクイン。津田塾大学(87.4%)と神戸女学院大学(87.0%)は、卒業生数1000人未満のため未掲載となっている。

実就職率が上がりにくい難関大

今度は難関大の順位を見てみよう。旧七帝大に東京工業大学、一橋大学、神戸大学を加えた難関国立10大学の最高位は31位の一橋大学で、九州大学(58位)、名古屋大学(87位)、東京工業大学(91位)、神戸大学(130位)、北海道大学(139位)、東北大学(146位)が続く。ランキング圏外では、大阪大学が79.8%で169位、京都大学が79.4%で170位。東京大学は未公表となっている。

私立大を見ると、早慶上智(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学)でランクインしているのは127位の慶應義塾大学のみで、早稲田大学は82.0%で155位、上智大学は80.1%で164位。

MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の最上位は74位の明治大学、中央大学(85位)、青山学院大(94位)、法政大学(97位)がランクインし、立教大学は82.2%で152位。

関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)のトップは関西学院大で、全体ランキングは66位。以下、関西大学(92位)、同志社大学(116位)、立命館大学(125位)が続いた。

このようにランキングの上位に入った難関大は少ない。この要因について、難関大のキャリアセンター職員は「起業や文系学部卒業生が医師を目指し医学部に学士編入するなど、多様な方面に進む学生が就職者に算入されないため、実就職率が上がりにくい」と分析している。




(井沢 秀 : 大学通信 情報調査部部長)