タイガース戦に先発したエンゼルス・大谷翔平【写真:ロイター】

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試合直前、ブルペンで監督代行に体調不良を告げたものの…

■タイガース 4ー0 エンゼルス(日本時間22日・デトロイト)

 二刀流で奮闘を続けてきた大谷翔平も体調不良には勝てなかった。21日(日本時間22日)の敵地・タイガース戦に「3番投手兼DH」で出場。4回5安打3失点2三振で8敗目を喫した。自身2連勝での今季11勝目を狙ったマウンドで制球に苦しみ、対した打者21人中8人が3ボールカウントになり85球を費やした。5回未到達は6月2日のヤンキース戦以来12登板ぶりとなった。打撃では四球と空振り三振で1打数無安打に終わった。

 意外な降板理由だった――。

「ウイルス性の胃腸炎」。流れたアナウンスに記者同士で確認をする小さな声が漏れた。5回表の3打席目を前に代打カート・スズキが告げられ、大谷は試合から完全に退いた。会見場に現れた大谷の目の下にはクマができていた。

 試合開始前のブルペン投球終了後、大谷はネビン監督代行に体調不良を告げた。それでも揺るがなかったのは、自軍の投手陣を不測の事態に引き入れることを嫌ったからだ。

「ゲームの直前の直前だったので、もう行くしかないですし。結果がどうのこうのではなくて、できる限りの調整をしてマウンドに行ってなるべく抑えてくるというゲームだったかなと思います」

 その“調整”の中にはイニング間の投球練習もあった。1回裏の敵の攻撃を前にした投球練習を、許された制限時間2分15秒に20秒も残す早いテンポで終え、1番のグリーンを打席に迎え入れた。そして4回は山なりのスローですませ、体力の消耗を極力抑えた。

「自分の中では4回投げられると思っていなかった」

 覚悟を決めて立ったマウンド。それでも行先はまったく見えていなかった。

「自分の中で4回まで投げられると思っていなかった。満塁にしたりとか制球が定まらなかったりとか、そういうところがありきの80球(85球)近くなので。逆に投げられるとは思ってなかったので。もう少し最後の最後抑えて4回を投げて5回までいければ、もう少しチャンスのあるゲームだったかなと思いますね」

 5月に食あたりで数試合の欠場を余儀なくされたスタッシー捕手は「できるだけ長いイニングを投げられるようにリードした」と振り返ったが、こうも言った。

「健康体であっても、腰の張りだとか蓄積した疲労や睡眠不足などもあったりする。それでも戦いの場に出て、仲間たちのために自分の持てる力を出す。自分の体の一部を犠牲にするかのような姿勢でチームに貢献しようとするのがプロ魂というものじゃないかな。ショウヘイがしたことはそれ。最大限の努力をしたんだ」

 移動日なしで乗り込む22日(同23日)からのセントピーターズバーグでのレイズ戦に向けて大谷は歯切れよく言った。

「ウイルスではないかなとは思うので。単純な疲れで、もどしてはいないので、大丈夫かなと思います。また切り替えていきます。頑張りたいなと思います」

 前日の試合で、自打球を右足つま先付近に当てて悶絶の表情を浮かべた大谷は、そこにも触れ「爪だったので、はがれなければ大丈夫かなと思っていたので」と振り返っている。投打の二刀流を続ける中で起きた体調不良での出場に否定的な声もあろう。しかし、この日の大谷の姿には、「気概」では到底足りないトップアスリートとしての精神の豊饒さを感じた。

 会見を終えた大谷は、ロッカーの椅子に背を向けて座り軽い食事を口にした。大谷翔平は大丈夫だ。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)