投高打低の年に突出した打棒 今季の山川穂高と2011年の中村剛也、どっちが凄い?
中村は11年前、リーグ全体の1割を上回る48本塁打をマーク
西武の山川穂高内野手がパ・リーグ本塁打ランキングのトップを独走している。球界全体が投高打低の傾向にある中、自身3度目のタイトルへ視界良好だ。今年の打撃は、投高打低の傾向が顕著だった2011年に、チームメートの中村剛也内野手が見せた打撃を思い起こさせる。今回は2011年の中村と今年の山川の活躍ぶりを紹介し、この2シーズンの2人の活躍を比較する。(記録は8月9日終了時点)
中村が2011年に見せた活躍は出色だった。自己最多タイとなる48本塁打を記録し、本塁打王と打点王の2冠を獲得。本塁打で2位だったソフトバンク・松田宣浩内野手は25本で、23本もの大差がついた。同年のリーグ全体の本塁打数は454本。中村は1人で、リーグ全体の1割を上回る数の本塁打を記録した。統一球導入の影響でリーグ全体の打撃成績が低下する中で規格外の打撃だった。
山川は2018年に47本、2019年に43本で2年連続本塁打王になった。今季は故障離脱がありながらハイペースで本塁打を量産。3度目の本塁打王獲得は濃厚となっている。
2011年の中村はリーグ全体の本塁打数の1割以上を1人で叩き出していた。この年にロッテが記録したチーム本塁打(46本)を1人で上回ったことも話題になった。一方、山川の現在の数字を143試合に換算すると、シーズン46本塁打に到達する計算となる。
指標「wOBA」や「wRAA」で突出した数字をマーク
次に、打者が1打席あたりどの程度チームの得点増に貢献していたかを示す指標「wOBA」、リーグ内における平均的な打者と比較した際にどれだけ多くの得点をチームにもたらしたかを示す「wRAA」をもとに2人の貢献度を確認する。(※wOBAは失策出塁を加味しない簡易的な計算式を使用)
wOBAはおよそ.330が平均値とされているが、2011年と2022年のリーグwOBAはいずれも本来の平均値を大きく下回り、2011年が.291、今季が.294。この2シーズンが投高打低の状態にあることが数字でも証明されている。一方で2011年の中村と今年の山川はその影響を受けることなく、平均を大きく上回る数字を記録(中村は.412、山川は.433)している。
wRAAに目を向けても、中村は60.88で山川は56.27。wRAAは平均的な打者の数値がちょうど0になる指標であるため、2人は平均的な選手よりも50点以上多くの得点をチームにもたらしている計算になる。wOBAは1打席ごとの期待値を示す指標であり、打席数の大小は評価の対象とはなりにくい。wRAAはシーズン全体の貢献度を求めるため、打席数が多い打者ほど数値が高くなりやすい。そのため全試合出場を達成した中村の方が、故障離脱があった今季の山川よりも高い数値を記録している。
今季の山川が143試合にフル出場していたとしたらwRAAは65.12となり、中村を上回る。本塁打数もフル出場であれば年間54本に到達するペース。序盤戦での離脱が惜しまれるところだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)