2022年に入ってからR35型日産 GT-Rの中古車価格が急上昇しています。

今では中古車価格が新車価格を超え、NISMOモデルにいたっては約6,000万円の値付けがされている高騰ぶりは、まさに狂乱ともいえる状態です。

さらにおかしいのは低年式・過走行車のGT-Rが中古車市場から軒並みなくなっていること。あれだけあった中古のGT-Rは一体どこへ消えたのでしょうか。

R35型 日産 GT-Rの中古車相場が暴騰中!

R35型GT-Rニスモ
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R35型日産 GT-Rの中古車価格の上昇が止まりません。2021年以前も上昇傾向にはあったものの、2022年に入ってから価格急上昇し、今や中古車価格が新車価格を超えています。

とくに数量限定の高性能モデル「NISMOスペシャルエディション」の2022年モデルは、販売価格のおおよそ2倍となる5,000万~6,000万円もの高値がつけられている異常事態です。

2007年の登場当初は777万円で販売されたGT-Rの中古車平均価格は、数年前まではベースグレードで300~400万円。高いものでも500万円程度でした。それが、いまでは最低でも800万円程度にまで価格高騰が進み、非常に入手しづらい状態が続いています。

R35 GT-Rはそんなに価値があるクルマなの?

2007年に登場したR35型GT-Rは、日産 スカイラインGT-Rを継承する高性能クーペです。

最高出力480psを発揮する3.8L V型6気筒ツインターボエンジンを搭載し、リア側に配置された2ペダル6速MTと4WDシステムを介して出力を路面に伝え、0-100km/h加速タイム3.0秒を叩き出す性能は、歴代GT-Rの名に恥じないものといえるでしょう。

GT-Rは「だれでも、どこでも、いつでもハイパフォーマンスが楽しめるマルチパフォーマンス・スーパーカー」であり、盤石の安定性により「300km/hで走行しながら会話ができる」のがコンセプトとのこと。

2013年には600psまで最高出力が引き上げられ、2,7秒で100km/hに達する高性能モデルのNISMOが登場。ベースグレードの価格が1,000万円を切る値段でありながら、その2倍以上もするスーパーカーと渡り合える性能を誇るGT-Rは、世界的に見ても希少な存在であることは間違いありません。

■GT-Rは2022年モデルで生産終了となる可能性が高いから?

スカイラインもハイブリッド搭載エンジン「VQ35HR」が音量規制をクリアできないとしてオーダーを終了とした

毎年改良によって毎年性能アップされて登場するGT-Rも、登場からすでに14年が経過しています。

2021年9月に2022年モデルが発表されましたが、同時にオーストラリアでは最新の衝突安全基準を満たせないことから2022年モデルをもって販売終了が報じられました。

また、欧州でも厳しくなる新音量規制に対応できないものとして、2022年3月に販売終了の旨が報じられ、日本でも2022年10月からの実施が検討されている音量規制に先駆けて生産終了との見方が強く、現在は注文できない状態になっています。

終売の噂による希少性の高まりによって、GT-Rが世界中で注目を集めているのは確かです。GT-Rの2023年モデルが登場しない場合、音量規制や排ガス性能の基準をクリアするために次期GT-Rは電動化せざるを得なく、2022年モデルが純ガソリンエンジンによる最後のGT-Rになってしまいます。

しかし、それが理由にここまで価格上昇が進むとは考えられません。高騰の理由は他にあります。

異常価格は日本だけ! 中古GT-Rはどこへ消えた?

GT-Rの希少性が価格上昇の理由であれば、海外での価格も上がっているはずです。

しかし、海外でも半導体不足による中古車需要の高まりでGT-Rの価格も高騰してはいるものの、北米・欧州ともおおむねグレードや走行距離相応の値付けがされています。

そもそもR35GT-Rはグローバルカーとして全世界同スペックで販売されているため、25年ルールでアメリカに輸出されるスカイラインGT-Rのような異常高騰など起こるはずがありません。

MOBY中古車サイトでも「支払総額が高い順」にソートすると、5,000万円台の個体がヒットする(2022年8月時点)

日本の中古車市場をよく観察すると、GT-Rの中古車相場が高騰しているだけでなく、低年式・過走行車がほとんどなくなっています。さらに数年前に比べて全体の販売台数も大きく減っているうえ、走行距離による価格差も少ない状態です。

コストパフォーマンスに優れたスーパーカーであるGT-Rとはいえ、日常的に使うには無理があります。また、いくら新車が手に入らないからといって、維持費が過大にかかる過走行のGT-Rを好んで購入する人はそれほどいません。

では、たくさん流通していた大量の中古GT-Rはどこへ消えたのでしょうか。

価格異状の原因は円安による海外輸出の増加

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低年式・過走行のGT-Rが消えた先は、おそらく東南アジアやアフリカなどの海外です。

2021年から転じた円安基調により海外からの買い付けが増え、2022年3月から急激な円安が進んだことで海外輸出されるGT-Rも増えたため、急激な異常高騰に至ったと思われます。

GT-Rは世界中で販売されていますが、新車価格や販売グレードは国によって異なり、インドやシンガポールではGT-Rの新車価格は日本の数倍です。

世界的な中古車需要の高まりに加え、終売するGT-Rの話題性。さらに円安になれば海外から仕入れにかかる費用も安くなり、販売価格が高い国で売ればさらなる利益になります。

中古車輸出販売業者からすれば、2022年になってからの状況はまさに渡りに船でしょう。

その結果、日本の中古車市場からは低年式・過走行のGT-Rは軒並み海外に輸出され、平均中古車相場を一気に押し上げたものとみられます。

ホンダ NSX

2022年12月で生産終了が発表されているNC型ホンダ NSXもGT-Rと似た状況になっており、状態の良い中古NSXも新車価格並の中古車価格を維持しています。

世界的な半導体不足に円安が加わって、GT-Rに限らず中古スポーツカーの価格高騰は今後しばらく続くとみられます。