山間部や森林近くを走っていると、枝や葉っぱに埋もれて見えづらくなっている標識を見かけます。見えづらい標識を見落として交通違反となってしまった場合、考慮してもらえることはあるのでしょうか。

見えづらい標識、違反を取り消してもらえる?

標識は、車両や歩行者が、前方から見やすいよう設置・管理しなければならないと、「道路交通法施工令1条の2第1項」によって定められています。

そのため、街路樹などの障害物によって標識が見づらい場合や、一瞬しか目に入らない場所に標識がある場合、違反にはならないケースもあるようです。

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街路樹が原因となったケースではありませんが、過去には似たような判例も存在します。

2016年、見通しの悪いカーブを走行していた大型バイクの男性運転手が、通行禁止違反によって兵庫県警に摘発されました。しかし男性は「標識が運転者から見えづらい状態だった」として、違反の取り消しを求めて訴訟を起こしたのです。

2019年、神戸地裁は、運転者からは短時間で標識が見えなくなってしまっていたことを指摘。標識の設置に問題があったとして、バイク運転手の訴えを認める判決を言い渡しました。

このように、実際に違反となった場合でも、標識の認識が難しい状況を客観的事実として主張することができれば、違反が取り消される可能性も大いにあります。つまり、街路樹などによって標識が見えづらくなっていた場合も、客観的な証明が可能であれば、同じような判決となる可能性が高いのです。

ただし、「見えづらく感じた」、「標識があることを知らなかった」などの主観的な理由では、まず主張は認められず違反となりますので注意してください。

違反切符を切られたら現場で掛け合ってみよう

仮に標識が見えづらい場所で違反切符を切られた場合、主観的な理由でない限りは、その取り締まりの正当性について争うのも1つの手段です。

標識の認識が困難であることを客観的に証明するためには、ドライブレコーダーの映像が有効だといえます。

映像証拠を提出しても警察官が違反であると主張する場合は、反則金を支払わず、裁判で争うことも可能です。

ただし、裁判において、標識の設置・管理の妥当性を争ったものの標識に問題はないと判断された場合は、罰金刑を科されることになります。そのとき、「前科」がつくことになってしまいます。

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また、切符処理後に反則金を納めてしまうと、手続きが全て終了することとなり、その後に都道府県に対して違反取り消しを求める訴訟を起こすことになります。この方法は非常に時間と手間がかかりますので、自分に非がないと主張する際は気をつけましょう。

以上のことから、違反の取り締まりを受けた際、安易に法的手段を選択するのは避けたほうがよいといえますが、明らかに標識を認識することが難しかったという状況であれば、現場で警察官に掛け合ってみましょう。

その際に、客観的な事実を明らかにするためには、ドライブレコーダーの映像を確認してもらうのが最も確実です。