アダルトコンテンツが盛んに共有されているSNSのOnlyFansが、InstagramやFacebookの運営会社であるMetaの従業員に賄賂を送り、OnlyFans以外のプラットフォームで活動する2万人以上のアダルトコンテンツのクリエイターを「テロの監視リスト」に登録させていたとして、クリエイターや競合プラットフォームから集団訴訟を起こされました。

OnlyFans bribed Meta to put porn stars on terror watchlist: lawsuits

https://nypost.com/2022/08/09/onlyfans-bribed-meta-to-put-thousands-of-porn-stars-on-terror-watchlist-suits-claim/

OnlyFans ‘bribed’ Meta employees to put pornstars on terror watchlist, lawsuit claims | The Independent

https://www.independent.co.uk/news/world/americas/onlyfans-facebook-meta-porn-stars-terrorists-b2143039.html

Lawsuits: OnlyFans bribed Instagram to put creators on “terrorist blacklist” [Updated] | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2022/08/lawsuits-onlyfans-bribed-instagram-to-put-creators-on-terrorist-blacklist/

2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで多くの人々が自宅で長時間過ごすようになったことで、オンラインのアダルトコンテンツ共有プラットフォームが急成長しました。中でも成長が著しかったのがOnlyFansであり、2022年の純利益は2020年の5倍に達するとも予測されています。

OnlyFansが成長するにつれて、その他のプラットフォームで活動するアダルトコンテンツのクリエイターからは、「FacebookやInstagramは自分たちのコンテンツを積極的にブロックしているが、OnlyFansで共有されるコンテンツはそれほど熱心にブロックしていない」という不満の声も上がるようになったとのこと。この件についてクリエイターや競合プラットフォームが調査を進めた結果、OnlyFansがMetaと共謀して「テロの監視リスト」を悪用し、競合プラットフォームのクリエイターが作成したコンテンツをSNSから排除していた可能性が浮上したそうです。

そして2022年、アダルトコンテンツのクリエイターやOnlyFansの競合プラットフォームが、OnlyFansとMetaを相手に集団訴訟を起こしました。訴訟によると、OnlyFans以外のプラットフォームでアダルトコンテンツを販売したクリエイターは、Instagramアカウントが「テロリストに関連するコンテンツが含まれている」と誤ってタグ付けされ、ビジネスを宣伝する能力を失い、収入が大幅に減少してしまったとのこと。

OnlyFansが自らの優位性を確立するために悪用したとされているのが、2017年にFacebook・Microsoft・Twitter・YouTubeによって設立されたGlobal Internet Forum to Counter Terrorism(テロリズムに対抗するためのグローバル・インターネット・フォーラム/GIFCT)です。GIFCTはテロリストに関連する動画や画像のハッシュをデータベース化し、各プラットフォームと共有することで、テロ関連コンテンツの拡散抑止に役立てるというもの。参加しているプラットフォームのいずれかが、ユーザーによって投稿された画像や動画に「テロ関連のコンテンツ」とフラグを立てると、ハッシュがその他のプラットフォームにも共有される仕組みとなっています。

ところがOnlyFansの親会社であるFenix Internationalは2018年、Metaの上級幹部に香港の子会社経由で賄賂を送り、競合プラットフォームのクリエイターがInstagramに投稿したコンテンツに誤ったフラグを立てさせ、GIFCTのリストに登録させたと原告は主張しています。一度GIFCTに登録されてしまえば、TwitterやYouTubeといったプラットフォームでもコンテンツが禁止される可能性が大幅に高まります。

もちろん、これらのクリエイターはテロとは何の関係もありませんでしたが、コンテンツ削除やアカウント停止によってクリエイターの宣伝能力および収入は低下し、競合プラットフォームのトラフィックも急激に減少してしまったとのこと。アダルトコンテンツのクリエイターで原告の1人であるアラナ・エヴァンス氏は、「私のコンテンツがテロ監視リストに載っているかもしれないと聞いた時は憤慨しました」と述べました。

原告を代表するミルバーグ・コールマン・ブライソン・フィリップス・グロスマン法律事務所は、「原告らのブラックリスト入りにより、OnlyFansは市場シェアを劇的に拡大させ、競合他社は停滞または衰退しました」「被告は、競争上の優位性を得るためにテロリストのブラックリストを悪用する計画に従事しました」と主張。また、同事務所は被害を受けた2万1000件以上のInstagramアカウントのリストを持っていると述べています。弁護士のデイビッド・アザール氏は日刊紙ニューヨーク・ポストへの声明で、「クライアントやそのコンテンツがテロリスト向けのデータベースに本当に登録されているかどうか、またどのようにすれば登録解除できるかを把握するため」に、MetaやGIFCTに対して記録の公開を求めています。

Metaは訴訟の却下を求める申し立ての中で、アダルトコンテンツを適切な方法で検閲することは憲法修正第1条と通信品位法によって保護されていると主張すると共に、ユーザーをInstagramやFacebookからOnlyFansへ追いやることのメリットはないと述べています。また、Fenix InternationalもMetaと同様の法律で保護された権利があると主張し、訴訟の却下を求めています。

こうした主張に対して弁護団は、原告が問題にしているのはコンテンツがブロックされたことではなく、「不公平なビジネス慣行とテロ監視リストの悪用」であり、Metaが訴えている憲法修正第1条も通信品位法も適用されないと反論しました。

なお、GIFCTの広報担当者は海外メディアのArs Technicaに対し、コンテンツのハッシュが登録されたとしても、他のプラットフォームで自動的にコンテンツが削除されるわけではなく、各プラットフォームはテロ組織の種類やコンテンツの重大度などを独自に考慮して検閲対象になるかどうかを判断すると主張しています。しかし、GIFCTのテロ監視リストは一般に公開されておらず、ハッシュの削除や異議申し立ては参加するプラットフォームがフィードバックツールを通じて行うしかないとのこと。

デジタル社会における言論の自由の保護を訴える電子フロンティア財団は2020年の時点で、「GIFCTデータベースの普及により、ある動画・写真・投稿が『テロ』コンテンツだと誤って分類されると、ソーシャルメディアプラットフォーム全体に波及し、ユーザーの表現の自由が一度に複数のプラットフォームで損なわれてしまいます」と記し、検閲に使われる単一のデータベースが存在することに危機感を示していました。