@AUTOCAR

写真拡大 (全4枚)

BEV専用プラットフォームのアルティウム

アメリカの上級ブランド、キャデラックとして初のバッテリーEV(BEV)モデル、リリックが誕生した。これからのブランド成長を叶えるうえで、重要な役割を担う新モデルといえる。新しいデザイン・テイストの確立も狙われている。

【画像】新時代キャデラック リリック 欧州で競合するBEVと比較 CT5-V ブラックウイングも 全112枚

ライバルモデルとして挙げられるのは、アウディeトロンやBMW iXなど。2023年初頭には、北米のキャデラック・ディーラーへ並ぶ予定にある。


キャデラック・リリック RWD(北米仕様)

基礎骨格としているのは、親会社のゼネラル・モーターズ(GM)が開発した、BEV専用プラットフォームのアルティウム。ボディサイズの大きいカテゴリーを前提としながら汎用性にも優れ、複数のモデルで利用される予定にある。

既に生産が始まっているGMC ハマーEVや、開発中のBEV版シボレー・ブレイザー、シボレー・シルバラードなども、アルティウムの上に成り立つ。ブライトドロップ 600という新しい商用バンも。

今のところ、英国へ正規に導入されているキャデラックは、CT5-V ブラックウイングなど、一部のモデルに限られている。だが、BEV化でそれも変わるかもしれない。実際、リリックは英国へ上陸する可能性が高いと予想されている。

今回、筆者はデトロイトの西、ミシガン州にあるGMのミルフォード試験場で、真新しいリリックへ試乗する機会を得た。走行が許されたルートは限定的で、いろいろな制限も掛けられていたが、充分に概要は確かめることができた。

従来の型を破ったスタイリング

近年のキャデラックは、お膝元の北米市場で少々苦戦気味。欧州ブランドに対して、不満のない競争力を発揮できていなかった。プレミアム・サルーンのカテゴリーでも、大型SUVのカテゴリーでも。

キャデラックの経営陣は、そんな状況を打破する切り札として、BEVに期待を寄せている。アルティウム・プラットフォームを採用したモデルが、ブランドを改革できると考えている。


キャデラック・リリック RWD(北米仕様)

リリックのスタイリングは、新しいキャデラックを象徴するものとして従来の型を破っている。このテイストが、順次進展されていくようだ。まだコンセプトモデルの段階だが、シューティングブレークのセレスティクにも与えられている。

ちなみに、このセレスティクは、ベントレーやロールス・ロイスのサルーンに対抗することが目指されている。2024年頃から職人によるハンドビルドで製造され、英国価格は24万6000ポンド(約4108万円)前後が見込まれている。

SUVのリリックは、既存のエスカレードに並ぶような、よりメジャー側に位置するモデル。キャデラックが輝いていた1950年代や1960年代のデザイン要素を取り込み、モダンに展開されている。

特徴といえるフロントグリルに当たる部分は、近年のモデルと共通して、上下に薄い5角形を踏襲する。だが、冷却機能が不要になったことで塞がれており、システムオンで多数のLEDが優しく点灯するパネルと化した。

アメリカンSUVらしい堂々としたサイズ

リア側では、ピラー部分にまで回り込んだ、L字型の大きなLEDテールライトが印象的。往年のキャデラックにも通じる、独特の存在感を漂わせている。

堂々としたボディサイズは、アメリカンSUVそのもの。BEVでありながらボンネットが比較的長いプロポーションを持ち、クリーンなサイドの面構成が新鮮でもある。


キャデラック・リリック RWD(北米仕様)

全長5380mmもあるエスカレードの隣に停めると小ぶりに見えるリリックだが、それは目の錯覚。全長は4996mm、全幅は1976mmもある。全高は1623mmで抑えられているものの、英国や日本では気を使うサイズといっていい。

ちなみに、アウディeトロンより95mm長い。ホイールベースも、65mm長い3093mmとなっている。

車内空間はアルティウム・プラットフォームの特性を活かし、明らかに広い。高級感にも不足はない。内装の設えは、細部に至るまでキャデラック以外のGM製モデルとは別水準。コートフックのような小さな部品まで、ブランドの専用品だという。

ダッシュボード上には、33インチという大画面のタッチモニターが鎮座し、メーターの表示と、インフォテインメント・システムのインターフェイスを兼ねる。緩やかにカーブを描いているが、モニター自体が湾曲しているという。

インフォテインメントのOSは、充分スムーズに動作していた。グーグルのサービスも利用可能だそうだ。

この続きは後編にて。