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電動化時代 マクラーレンの進む道は?

2010年に設立された英マクラーレン・オートモーティブは、世界で100店舗の正規ディーラー店を構えるまでに成長した。

【画像】アルトゥーラのデザイン/内装とポール・ハリス氏【細部まで見る】 全111枚

12年の歩みのなかで大きな節目のモデルとなるのが、先ごろ日本で正式にローンチされた「アルトゥーラ」だろう。


マクラーレン・アルトゥーラ    マクラーレン・オートモーティブ

同社の量産シリーズとして初の電動スーパーカーであり、新しい生産拠点「MCTC」で製造される新たな車体構造を初採用する。

日本を含めたアジア太平洋・中国エリアの全事業の責任を担うポール・ハリスさんが来日した際に、AUTOCAR JAPANはインタビューする機会を頂いた。

ロールス・ロイス、マクラーレンといったラグジュアリーカーの分野でキャリアを重ねる男は、電動化という節目をどのように捉えているのだろう。

近年スーパーカーのブランドを始め、様々なメーカーが電動化戦略を打ち出していますが、どのように受け止めていますか?

ーー多くの大規模な自動車メーカーが電動化の方向へ歩みを進めています。将来的に、自動車業界は電動化に向かわなければならない状況だと思います。

しかしながらマクラーレンはここで、フル・エレクトリックに向かう前に、いったんハイブリッドに集中していこうと思います。

わたし達もフル・エレクトリックという方向に自分たちをアジャストしていかなければなりませんが、短期的・中期的にはハイブリッドでやっていくことになります。

創業者の精神とアルトゥーラの走り

マクラーレンが早い時期から電動化に積極的だった(P1の登場は2013年)のは、なぜですか?

ーーおそらくそれは、マクラーレンの精神、スピリットが関わっています。

そもそも、ブルース・マクラーレンはドライバーとしても、クルマの開発者としても、パイオニア精神に溢れる人でした。


若いころからマクラーレンに注目してきたというポール・ハリスさん。今年から同社アジア太平洋・中国マネージング・ディレクターを務める。彼の故郷は、本部があるウォーキングのそば。    マクラーレン・オートモーティブ

そうしたものが、血となり肉となり、このブランドに息づいていると考えています。

常にわたし達が模索しているのは、既存のものではなく、何がマクラーレンとして適切か、何をもってマクラーレンとするのか、という点です。

例えば軽量であること、常に効率を追求していること、機能性に優れていることですね。

そして大切なのは、他にはないものをマクラーレンは提供しなくてはならない、という点でしょう。

こうした資質を、“濾過”して、“昇華”して、皆様にお届けできるようになったのがアルトゥーラです。マクラーレンにとって、次の章を切り開くモデルと考えています。

ポールさんは、アルトゥーラを試乗していますか?

ーー幸運なことにテストドライブすることができました。

一般道ではなくサーキットだったのですが、走り出した瞬間に「これはもう、1つの現象(イベント)ではないか」と感じたのです。

本当に爽快で、それに蠱惑的な体験でしたよ。

とにかく、すべてにおいて普通ではない。いい意味で異例だと感じたのです。

クオリティもそうですし、いわゆるハイブリッドとは信じられないようなパフォーマンスを発揮して、乗っていてワクワクしました。

1番の狙いは、「キレイな出力曲線」

ワクワクするハイブリッドとは、どんなものでしょう?

ーーマクラーレンのハイブリッドの成り立ちを考えてみると、パフォーマンスを満たし、さらに増強するために使ってきたという歴史があります。

これは、ハイブリッド技術の成り立ちとしてはレアな存在と考えております。


アルトゥーラ試乗の第一印象を「爽快」という言葉で表現したポールさん。走りの話には熱が入る。日本のKAWASAKIのバイクも複数台所有していると打ち明けてくれた。    マクラーレン・オートモーティブ

とくに内燃エンジン、プラグインハイブリッド、電動モーターとのインテグレーションを作り込んでおりますし、EVモードならモーターだけで走れるのは大きいと思います。

しかしながらマクラーレンにとっての電動化、ハイブリッド化というのは、“トルクを埋める”という意味があります。

出力曲線をよりスムーズにするというのが、最大の目的です。

もちろんマクラーレンは軽量エンジニアリングで知られていますので、その考えのもとで搭載できるハイブリッドユニットを開発しました。

わたし自身も一般道で試乗できる機会を心待ちにしているほどです。

日本市場の反響は? 若い世代の反応は?

電動モデルとなるアルトゥーラを、日本の皆さんにどのように紹介していきますか?

すでに、見込み客となるカスタマーの皆様から、アルトゥーラを是非体験したいという声が届いております。

そのため、日本にいち早く実車をお持ちし、乗って頂けるように手配を進めております。


マクラーレン・アルトゥーラ    マクラーレン・オートモーティブ

幸いなことにかなりの受注を頂いておりますが、お乗りになる前にオーダーされた方は既存のマクラーレン・オーナーが多いです。つまり、マクラーレンについて自信をお持ちの方、このブランドを信頼なさっている方々です。

力を入れるべき点としては、アルトゥーラのビジビリティ(認知度)を高めていかなければなりません。その策の1つとして、一般道での試乗会、サーキットでの走行会を開いていくことになるでしょう。

日本に限らず、消費者の関心は「モノ」から「コト」へ、「コト」から「トキ」へ移っていると言われます。この変化のキーとなるのがミレニアル世代と呼ばれる若者たちです。彼らの目に、アルトゥーラはどのように映るでしょうか?

ーーその考えについては全面的に賛成しますよ。すでにミレニアル世代へのアピールはある程度成功していると考えています。

新しいセグメントのお客様からオーダーを頂いておりますし、ご興味を持って頂いています。

しかし、さらに幅広くしっかりとエンゲージメントを強めていかなければなりません。そのために教育機関との関わり方を強化しています。

例えば、テクノロジーの教育をする方々とタッグを組んで、直接エンジニアリングをアピールできる場を設けていきたいのです。

マクラーレンは、スーパースポーツカー・メーカーの中で、最もオープンな心を持っているフレンドリーなブランドで、新しい人々と出会うことを厭わないですし、むしろ歓迎しています。

それに、若い世代は自分たちがユニークであることを重視し、「自分たちを見てくれ!」「僕たちは違うだろ!」という価値観をお持ちですね。

そうしたユニークな素質がマクラーレンにはありますし、パーソナライゼーションのプログラムが充実しているので彼らの望みは何でも叶えられるでしょう。

アルトゥーラ スペック

全長:4539mm
全幅:1913mm
全高:1193mm
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.0秒
CO2排出量:104g/km
車両重量:1498kg
パワートレイン:2993cc V6ツインターボ+モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:7.4kWh(実容量)
最高出力:680ps/7500rpm(システム総合)
最大トルク:720Nm(73.4kg-m)/2250rpm
ギアボックス:8速DCT


マクラーレン・アルトゥーラ    マクラーレン・オートモーティブ