女子砲丸投げで2位に入った生光学園・川口由眞(3年)【写真:荒川祐史】

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地元開催のインターハイ陸上女子砲丸投げで2位

 陸上の全国高校総体(インターハイ)は徳島の大塚スポーツパーク・ポカリスエットスタジアムで5日間にわたる熱戦が繰り広げられた。大会期間中は多くの徳島の選手が地元の声援を受け、躍動した。女子砲丸投げで2位に入った生光学園・川口由眞(3年)は度重なる怪我を乗り越え、2年ぶりに14メートルの大台を突破。うれし涙に暮れた。卒業後は国公立大の医学部看護学科を志し、助産師を目指す。

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 大切なことは、順位じゃなかった。川口は泣いていた。2位という結果以上に、その数字がうれしかった。

 14メートル4。

「1年生で出してから、ずっと14メートルが越えられなかった。それが、インターハイという大きい舞台で出せたことがうれしくて……」

 涙が止まらなかった。

 ラスト1投でドラマが待っていた。予選を全体2位で迎えた決勝。1、2投目は汗で滑り、思うように砲丸が飛ばない。5投目を終えて全体4位。「首の皮一枚つながった状態。めちゃくちゃ緊張していた」と明かす。

 迎えた運命の6投目。

 ふっと大きく息を吐いた。ここは地元・徳島。緊張する必要なんてない。「最後なので、思い切って投げよう」。自然と肩の力が抜けた。全身を使って放たれた砲丸は14メートルをわずかに越えた。沸き上がる歓声。最高の瞬間だった。

 優勝には届かなかったが、堂々の2位だ。

「1年生の時は何も考えずに出せた記録だったので。14メートルをここで投げられたことに価値があると思います」

努力の尊さを教えてくれた最後の夏「私にとっては順位どうこうではない」

 重圧と闘い続けた2年半だった。

 1年秋、全国高校陸上で14メートル37を出して優勝。一気に注目を浴びた。しかし、その注目は重圧に変わり、眩いスポットライトは心に影を作った。度重なる怪我もあり、記録は伸びないどころか、14メートルにも届かず。どん底にいた。

「正直、直前の練習も全然良くなくて……」。それでも、期待は高まった。

 まして徳島開催のインターハイ。取り上げられた地元のテレビ局には「優勝を目指す」と言っていたが、本当は違った。「まずは入賞。その後は順位を少しでも上げられればいい」。それほど、自信が持てない状態だった。

 苦しい時も二人三脚だった顧問の豊永陽子教諭も「1年生以降は手首に手の甲、脚に腰に……怪我ばかりで、しんどかったと思う」と涙した。

「諦めない気持ちが今日につながった」。特進クラスに在籍し、学業優秀。将来の夢は助産師で、今後は国公立大の医学部看護学科の合格を目指す。「マジメでとことん努力する。(受験も)大丈夫と思わせるような子」と顧問も認めている。

「私にとっては順位がどうこうではなくて、努力してきて良かったって思います」と川口。

 努力の尊さを教えてくれた最後の夏。そう言える経験は、これからどんな人生にも生きてくる。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)