●主演としての心持ち「笑顔で現場を盛り上げていけたら」

子役時代から頭角を現し、近年目覚ましい活躍を見せている若手女優、桜田ひより。今年、ドラマ『卒業タイムリミット』(NHK)、『彼女、お借りします』(ABCテレビ・テレビ朝日)で立て続けにヒロインを務める一方で、映画『おそ松さん』(22)ではまさかのちび太役を好演、そして8月9日スタートの新ドラマ『生き残った6人によると』(MBS:毎週火曜24:59〜、TBS:毎週火曜25:28〜)では主演に抜擢された。そんな桜田は、すでに小学生で「女優として生きていく」と腹をくくっていたそうだ。桜田を直撃し、これまでの道のりについて話を聞いた。



まず、『おそ松さん』の反響を聞いてみると「映画を観てくださった方が『あんな坊主でちょろちょろ動きまくっていたやつが、実はこんな感じだったんだ!』と驚かれました(笑)。それを聞いて、本当に俳優としてやってきて良かったなと思いました」と屈託なく笑う桜田。

「確かに私があの役をやるという発想はなかなか思いつかないですよね。私自身もそうですが、事務所も変わっているなと思いました(笑)。でも、すごく信頼の厚い監督(英勉)からオファーしていただいたので、やるからには全力で! と思いました。私自身は心の底から楽しめたので、めちゃくちゃいい経験させていただきました」とうれしそうに語る。

最新作『生き残った6人によると』は、突如パンデミックとなり、感染者がゾンビとなって街中を徘徊するなか、ショッピングモールで籠城する若い男女が、極限下で恋をしていくという、ゾンビ×ラブコメディをかけ合わせた異色作だ。桜田はヒロインの水上梨々役を演じ、佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、中村ゆりか、倉悠貴、郄石あかり(高ははしごだか)ら若手俳優陣と共演する。



桜田が主演を務めるのは初めてではないが、今回の現場にはどんな心持ちで臨んだのか?

「閉店後のショッピングモールでのロケということで、深夜の撮影になるから、きっと昼間の仕事とは疲労のたまり具合が違うだろうと覚悟をしました。だから、現場に入る前に決めていたことがありまして。眠いし辛いのはみんな同じなので、自分は絶対にそういう疲れは見せず、笑顔で現場を盛り上げていけたらいいなと思いながら撮影に挑みました」と実に頼もしい。

まさに桜田が演じた若いけど意志が強そうなヒロイン、梨々と重なるが「そうですね。梨々ちゃんもしっかりしている女の子だし、周りに左右されない部分はけっこう似ているかもしれないです」とうなずく。

もともとポジティブな性格なのか? と尋ねると「人とお話をするのはすごく好きで、明るい方だと思いますが、考え方はネガティブになりがちです」と告白。「私はいろんなことをマイナスに考えてしまったりしますが、それを無理矢理ポジティブに受け止めるのも違うというか、無理している感じが自分のなかでありました。だから今はすべてを受け止め、それでもきっと大丈夫だと、自分に言い聞かせるようにしています。何かに押しつぶされそうになっても、その重荷を外せるのは結局自分だけだと気づきました」

それは子役からやってきた経験の積み重ねによって得られた境地らしい。「徐々に変わってきたんだと思います。少しずつ、今回のような主演という形でお仕事をさせていただくことも増えてきました。最初はどうしたらいいんだろうとか、もしもこうなったら怖いなとか、先のことを心配することが多かったのですが、場数を踏んでいくことで、それを解決する糸口が見つかっていった感じです」

○■経験を重ねて演技における選択肢が増えてきた

子役時代の出世作となったのは、芦田愛菜、鈴木梨央らと共演したドラマ『明日、ママがいない』(14)だろう。気がつけば、今年20歳という節目を迎える桜田。“子役”から“女優”へとスイッチが切り変わった瞬間はあったのか? と尋ねると「あまり感じたことがなくて。強いて言うならば、高校を卒業して社会人になる時、大学に進学する道ではなく、この仕事でやっていくと決断した時でしょうか。言葉では言い表せないような責任感みたいなものが実際に生まれた時かなと」と答えてくれた。

演技への情熱や面白さの変化についても尋ねると「変わらないですね。ずっと楽しいという感覚です。楽しくなかったらたぶんやめていたと思います」と真っ直ぐな目線を向ける。

加えて「年々やりやすくなってきた感覚があります。たぶん他の人とは全然違うと思いますが、いろいろな選択肢が増えていった感覚がすごくあります。壁があったとして、それの乗り越え方が以前は1つだったとすれば、いつしか2つ3つと対処法が増えていった感じです」

それは、ゲームで言えば、少しずつ武器や使える道具を得て、パワーアップしているということだろう。「そうです! もともと木の剣と盾しか持ってなかったのが、金の盾や炎が追加されたり、魔法が使えるようになったりする感じです。だんだん敵も強くなりますが、それに対応できる能力も身についていくかなと。でも、まだ手にしていない武器はたくさんあります。きっと伝説の武器などもあると思うので、それを探しながら頑張っていきたいです」

●「努力してきたと胸を張って言える」それが強みに



10代のうちにやっておきたい役柄について聞くと「制服が着られるうちに着ておいたほうがいいよと言われましたが、そこも叶いましたし、私は顔が童顔なタイプなので、これからも制服を着ていける自信はあります。でも、今年20歳になると言うと、周りからも『そんなに大きくなったんだ!』と驚かれることが多いので、お世話になった方とまた現場でお会いして、いろいろお話ができるようになればいいなと思っています」と語った。

すでに15年のキャリアを誇るが、これまで仕事を休みたいと思ったことは一度もないそうだ。「それはきっと私はこの仕事以外、ポンコツ過ぎて何もできないからではないかと。楽器も弾けないし、運動も特別できるわけでもないし、頭もたいして良くないです。やれることといえばこの仕事しかなかったので、私は小学生時代から『私は大学に行きません。もうこの仕事でやっていきたいから、余計な勉強はしません』と親に宣言していたくらいです」

つまり子役時代から、この道ひと筋で来たということか。まさに女優になるべくしてなったという感じだが、それを伝えると「アハハハ」と照れ笑いする。

桜田は才能に恵まれ、着実にステップアップしてきたように思えるが、彼女は決してそうではないと言う。「『演技ができるのは才能だね』と言われることもありますが『いやいや』と思っちゃう部分があります。才能だけでのし上がれるような世界ではないと思っているし、人それぞれ、努力をしていて、頑張らなきゃいけない部分は頑張ってやっていると思うので」

そして、「私は5歳から始め、何百というオーディションを受け、数え切れないくらい落ちてきました。そんななかで、休める日を見つけてはレッスンに通い、演技をやってというのを繰り返してきたので、そこが自分にとって芯になっている部分だなとも思っています。だから努力してきたと胸を張って言えます。また、そういう自分の強みが1つあるだけで、私はこの世界にいられて幸せ者だなとも思えます」

しっかりと地に足をつけて、演技の道を探究し続けている桜田ひよりのさらなる活躍に期待したい。

■桜田ひより

2002年12月19日生まれ、千葉県出身。女優。連続ドラマ『明日、ママがいない』(14)で注目され、以降数多くのドラマや映画に出演。2017年にドラマ『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』で初主演し、同作の映画版でも主演を務める。劇場アニメ『薄暮』(19)では声優初挑戦ながら主演に抜擢。近作のドラマは『卒業タイムリミット』(22)や『彼女、お借りします』(22)など。近作の映画は『未来へのかたち』(21)や『ショコラの魔法』(21)、『おそ松さん』(22)など。

(C)「生き残った6人によると」製作委員会・MBS