女子4×400メートルリレーで優勝した市船橋の(左から)篠原美咲、宮地利璃香、志水芹菜、佐藤葵唯【写真:荒川祐史】

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インターハイ陸上、篠原・宮地・志水・佐藤の4人で掴んだ1600mリレー日本一

 陸上の全国高校総体(インターハイ)最終日の第5日は7日、女子4×400メートルリレー決勝が行われ、市船橋(千葉)が3分44秒04で優勝した。中京大中京(愛知)が3分44秒97で2位、山形中央(山形)が3分45秒41で3位となった。

 市船橋カラーの緑の校旗の前に、この夏最高の笑顔が4つ並んだ。中京大中京、山形中央ら全国の強豪を抑え、マイルリレー優勝。「優勝するぞと決めていた。最後のマイルで1位を獲れて、本当にうれしいです」。アンカーを務めた佐藤葵唯(3年)が4人の感情を表現した。

 信じ合い、高め合う。市船橋の強さが凝縮された224秒だった。 

「絶対、私が1位で渡す」

 そう決めて、スタートラインに立ったのは3年生の1走・篠原美咲。個人400メートルで準決敗退、優勝を狙った4×100メートルリレーは2位。悔しかった。「絶対、マイルでは勝ってやろう」。強い想いを胸に、号砲から飛び出した。

 “イチフナ”だったから、強くなれた。「選手層が厚く、練習1本1本で互いに競り合って強くなれる高校」。日々の練習で成長できる。その3年間の集大成。7レーンから外をいく選手も抜かした。「今までで一番走れたんじゃないか」。堂々の1番で帰ってきた。

「夢の舞台が現実になった」

 2走の宮地利璃香(2年)は夢の中を駆けていた。中学の時は全国に行けず。「私にとっては夢のインターハイ」。その舞台を走れる喜びが力になった。篠原からバトンを受け、覚悟を決めた。「よし、行く!」。スタートから積極的に飛ばし、オープンレーンで先頭を取った。

 この陸上部の絆が大好きだった。誰かが苦しくて泣いていても「大丈夫だよ! 楽しんで!」と自然と声かけができる。「日本一のサポートをみんなしてくれる。感謝しかない」。そうして生まれた仲間への信頼感。1秒でも速く、このバトンを――。最後まで、勢いは落ちなかった。

篠原「このメンバーのために頑張ろうと思うから、走ることができる」

「利璃香はパワフルで、最後の強さがある。渡せばどうにかなる、という安心感」

 同級生をそう信頼して、待っていた3走・志水芹菜(2年)はきつい冬季練習を思い返した。「すべての想いの頂点が、この場所。ここで絶対1位になりたかった」。苦しい時に支え合った4人で、この夏の最後に走れることがうれしかった。

 後ろから3、4コーナーで中京大中京、山形中央に迫られた。しかし、ラスト50メートルで粘り、もう一度、突き放した。そして、「普段はふわふわしているけど、試合になると集中していてギャップが凄い」と憧れる先輩に想いを託した。

「絶対、後ろに負けない」

 アンカーの3年生・佐藤は3人に感謝していた。同級生の1走・篠原が1番で持ってきてくれた時点で「いける」と思った。「利璃香が差をしっかり広げて、芹菜がしっかり粘って1位で渡してくれた」。残された役割は、たった一つ。先頭でゴールすることだけ。

 3人がつないでくれた緑のバトンを左手で握り締め、腕を振った。400メートルリレーで優勝を逃した想いは篠原とも同じ。「本当に、本当に悔しかった」。先頭でゴールに飛び込み、待っていた3人と抱き合った瞬間、すべての努力が報われた気がした。

 女子最終種目。市船橋が全員で掴んだ金メダル。

 リレーにはリレーにしかない、楽しさがある。

 そして、その学校のカラーがよく表れる。

「仲間がいることが私は心強くて。アップの時から3人いる、サポートメンバーを含めてみんながいる。このメンバーのために頑張ろうと思うから、走ることができる」
 
 そう表現した1走の篠原は、最後に少し照れくさそうに笑った。

「みんな、本当に信頼できて、もう大好きです」

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)