女子走り高跳びで8位入賞した地元の鳴門・佐藤安里紗【写真:荒川祐史】

写真拡大 (全2枚)

地元開催のインターハイ陸上女子走り高跳びで8位入賞

 陸上の全国高校総体(インターハイ)は7日、徳島の大塚スポーツパーク・ポカリスエットスタジアムで繰り広げられた5日間の熱戦が幕を閉じた。大会期間中は多くの徳島の選手が地元の声援を受け、躍動した。女子走り高跳びで8位入賞した鳴門・佐藤安里紗(3年)も、その一人。6日に行われた決勝、インターハイの大舞台で自己ベストを更新する1メートル70を跳び、最高の夏になった。

 ◇ ◇ ◇

 見慣れた地元の夏空が、過去の自分より2センチ高く跳ばせてくれた。

 決勝、1メートル70の3回目。失敗すれば終わりの運命の1本、佐藤は今までにないくらい集中していた。「自信を持って跳びなさい」。直前、恩師に言われた言葉を胸の中で反芻する。そして――。

「やっと、ちゃんと自分の思い描いたジャンプができた」

 成功。166センチの身長より4センチ高いバーを越えた。一段と大きな歓声が客席から上がる。自己ベストも2センチ更新。「もう、うれしすぎて……」。差し込む西日に、はにかんだ笑顔が光った。

 1メートル73は失敗したが、1メートル67、70ともに3回目で成功。逆境で強さを発揮した。決勝進出を目標にしていた舞台で堂々の8位入賞。「今まで支えてくれた人たちに恩返しができた」と振り返った。

 福井で開催された1年前は1メートル64で予選落ち。しかし、今回は慣れ親しんだスタジアム。風、助走など経験がある。何より客席には多くのチームメート。「遠征があまり得意ではないので」。ホテルではなく、いつも通り自宅から通えることも後押しになった。

「私は徳島が大好きなので。ちょっと田舎だけど、海も山もあって、自然が綺麗で。凄く良い場所です」

苦しかった減量との闘い「やれることは全部やろうと」

 ハイジャンプに捧げた高校3年間。走り高跳びならではの苦しさもあった。

「ダイエットをしなきゃいけなかったけど、なかなか体重が落ちなくて。やれることは全部やろうと」

 ジュースなど糖類が多いものは断ち、夕食は鶏のささみを中心に米の量を減らした。ハードな練習と、空腹との闘い。年代的に減量も難しくなる時期。「慣れるまで1年くらいは大変でした」。一時は53キロあった体重も最後の夏は48キロまで絞り、ベストな体を作り上げた。

 苦しくても頑張ることができたのは、支えてくれた家族、恩師に恩返しがしたかったから。3年間の目標にしてきた地元開催のインターハイ。やっと緊張感から解放され、競技を終えた後は「徳島ラーメンが食べたいです」と茶目っ気たっぷりに笑った。

 卒業後も地元・徳島の大学で競技を続け、全国トップレベルの選手を目指す。次の目標は1メートル75。

 この種目の魅力を聞くと「跳べた時のふわっと浮いている感じが楽しくて」と佐藤。

 最後の夏に味わった最高の感覚を更新するため、これからも徳島の空を跳ぶ。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)