男子200、400メートルに出場した早大本庄の森田陽樹【写真:荒川祐史】

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陸上インターハイの“文武両道アスリート”男子200&400m 早大本庄・森田陽樹(3年)

 陸上の全国高校総体(インターハイ)が3日に開幕し、5日間にわたって熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は文武両道に励み、全国の大舞台に出場した選手たちをピックアップ。男子200、400メートルに出場した埼玉の難関私立、早大本庄の森田陽樹(3年)は中学時代オール5も経験し、自己推薦で高校進学。「授業中に寝ない」という心がけとともに、オンとオフの切り替えの手段としての勉強と部活の効果を明かした。

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 エンジの「W」には、やはり誇りがある。

「早稲田ということで、周りの人からも注目される。そういう面でプレッシャーを感じてしまうこともあるけど、それを力に変えている。いろんな人が見てくれるんだと僕は思ってプラスに考えて走れるようにしてます」

 3年生で出場した最初で最後のインターハイ。200メートルは22秒20の組5着、400メートルは48秒29の組3着で準決勝に進めず、「全国の舞台で自分の走りをする難しさを体感した」と唇をかんだが、それもこの場所で戦った者しか味わえない感情だった。

 埼玉・本庄市にある早大本庄は、偏差値76ともいわれる県内No.1の難関校。大半は早大に内部進学する。

 森田も3年間、大学受験にとらわれず競技に集中できる環境に魅力を感じた。吹上中(埼玉)時代はオール5を経験したこともあり、自己推薦で進学。評定は「平均より上くらい」と謙遜するが、「正直、大変なこともある」という勉強と部活の両立に励んできた。

 心がけの一つは「授業中に寝ない」。当たり前のように思えるが、全国を目指す競技と並行するのは簡単ではない。

「どうしても、放課後は部活が時間を取ってしまうので、帰ってから勉強するのも疲れて厳しい時もある。できるだけ授業中に理解しようと思っています」

 その分、部活が1週間オフになる試験勉強期間には「授業をちゃんと聞いていれば、自分がどこが分かっていないか把握できているので、そこを重点的に絞って勉強すればいい」とメリットを強調。陸上に集中できる環境を自分で工夫し、整え、競技力を伸ばしてきた。

オンオフ切り替えの手段が勉強&部活「ゲームや音楽ではない」

 勉強をすることで、部活に生きることは「きっとあると思います」と言う。

「やっぱり、オンとオフの切り替えが凄くはっきりできるのが勉強。部活をずっとやっていても疲れてしまう時もあるし、勉強も勉強で疲れてしまう時もある。両方を頑張ることで、2つを良い具合に力を高められるかなって」

 普通の高校生なら“切り替え”の手段として、部活以外はゲームや音楽に没頭したっていい。しかし、森田は「中学時代に全中に出られず、早大本庄でインターハイに出たいと思って来た。だから、ゲームや音楽ではなく、部活と勉強と決めている」と明かす。

 強い覚悟で両立に励み、辿り着いたのが、この夏のインターハイ。

 実は、早大本庄陸上部で400メートル障害をしていた2つ上の兄で、現在は早大の創造理工学部に2年生として通う浩紳さんが高3夏、コロナ禍でインターハイが開催されず、目指すことすらできなかった舞台でもあった。

「兄も徳島まで応援に来てくれたし、いろんな先輩方も来てくれた。そういう部分でも、エンジの『W』がインターハイで見せられて凄く嬉しかったです」

 卒業後は早大に内部進学し、競技を継続する予定。理系学部を希望している。「大学も2つのバランスを取りながら、自分を高めていきたい」と森田。学び舎を「都の西北」に移しても、文武両道の日々は続く。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)