どうなるDC - 写真は映画『ジャスティス・リーグ』より
 - Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

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 製作費9,000万ドル(約122億円・1ドル135円計算)をかけたDC映画『バットガール(原題) / Batgirl』をお蔵入りさせた件について、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのCEOデイビッド・ザスラフが現地時間4日、投資家向けの収支報告で説明を行った。ザスラフは「われわれはリセットしたのです。われわれが今後注力するビジネスを再編し、DCのみに特化した10年計画のためのチームを編成します」とDCブランドを再編する予定であると発表した。

 目指すのは、ディズニーの下で成功したマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)だ。新たな10年計画について、ザスラフは「それは、アラン・ホーン(ウォルト・ディズニー・スタジオの元会長)、ボブ・アイガー(ウォルト・ディズニー・カンパニーの元会長)、ケヴィン・ファイギ(マーベル・スタジオの社長)がディズニーでとても効果的に作り上げた体制ととても良く似ています。われわれは、より強力で持続可能な成長事業をDCから構築できると考えています」とコメント。新たなチームを誰が率いるかなどは明かさなかったが、ザスラフはすでにアラン・ホーンをアドバイザーとしてワーナーに招聘している。

 『バットガール(原題)』はもともと米 HBO Max 用の映画として制作されていたが、今年4月にワーナーメディアとディスカバリーが統合して新たにワーナー・ブラザース・ディスカバリーが誕生し、コストカッターとして知られるザスラフがCEOに就任したことで大きく方向転換。HBO Max を優先させていた前上層部とは違って、新たな方針は「DC映画は配信用ではなく、劇場公開用として作るべき」「HBO Max オリジナル映画の製作費は3,500万ドル(約47億円)以下に抑えるべき」というものだ。

 『バットガール(原題)』は完成間近ではあったものの、映画館公開のための追加の宣伝費用をかける価値があるほどの大作ではなく、かといって HBO Max 用にするには製作費をかけすぎているとしてお蔵入りに。収支報告での説明はなかったものの、ザスラフは『バットガール(原題)』の製作費を完全な損失として計上することで税負担を減らし、会社全体の利益を上げるという戦略的な選択をしたと考えられている。

 DCを取り巻く新たな体制では、クオリティーに重点を置くつもりとのこと。ザスラフは「不完全な映画を公開するつもりはありません。DCは、われわれがより良いものにしていくことができるものなのです」「目的はDCブランドを、そしてDCキャラクターを成長させることです。しかし同時に、われわれの仕事はDCブランドを守ることでもあるのです。それこそ、わたしたちがこれからすることです」と繰り返し、『バットガール(原題)』は彼が認めるクオリティーに達していなかったとほのめかしていた。(編集部・市川遥)