男子4×100メートルリレーで連覇を達成した洛南(左から田村莉樹、南本陸斗、山本嶺心、大石凌功)【写真:荒川祐史】

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インターハイ陸上男子4×100mリレー決勝で連覇を飾った洛南

 陸上の全国高校総体(インターハイ)第3日は5日、徳島の大塚スポーツパーク・ポカリスエットスタジアムで行われ、男子4×100メートル決勝で洛南(京都)が大会新記録の39秒71で連覇を達成。アンカーを務めた主将の大石凌功(3年)は、V2の裏に王者の重圧と葛藤があったことを明かした。

 終わってみれば、洛南強し。しかし、その裏に王者しか知らない感情があった。

「年中、SNSでいろんなことがつぶやかれていて、そういうのを見るたび、プレッシャーになっていました」(大石)

 大会新記録39秒86をマークした準決勝で1走を務めた1年生・村松悦基に代え、100メートル7位入賞の田村莉樹を起用した決勝。2走の南本陸斗、3走の山本嶺心、そしてアンカーを務めた主将の大石を含め、オール3年生の「今、考えられるベストメンバー」(大石)でファイナルに挑んだ。

 バトンパスで詰まるミスがあったが、2位市立船橋(千葉)、3位中京大中京(愛知)らライバルを抑えて完勝。叩き出したタイムは大会記録をさらに更新する39秒71。単純計算ではあるが、1人10秒でも40秒かかる400メートル、高校生4人で39秒台を揃えるのは抜きん出た実力の証しだろう。

 しかし、桐生祥秀らも着た伝統のユニホームをまとう4人に満足感はない。

「記録より勝負に勝つことを目標にチーム内で決めていた。記録を出す時期はもう少し先。そのステップで39秒7台はいい弾みになったと思います」(大石)

 V2までは苦しい道のりだった。

SNSで触れた「これは洛南の2連覇確定だな」の声

 昨夏のインターハイは3年生は1人だけのメンバーで優勝。3人が残った。以来、大会に出るたび、主将の大石はSNSでこんな言葉を見るようになった。

「これは洛南の2連覇確定だな」

 スポーツの世界に絶対がないことは選手自身が知っている。まして、リレーはバトンパス一つで結果が大きく入れ替わる繊細な種目でもある。

 しかし、大石は「初めて見たときはずっしり重かった」と言う通り、見えないプレッシャーになった。ただ、今の洛南は誰が走ってもタイムが落ちない層の厚さが強み。同校伝統のリレーについても「気持ちで負けるな」と主将は口酸っぱく部員に伝えてきた。

「個人の調子がどうであっても、リレーメンバー6人で作る種目。『気持ちで負けない』と心に置いておくことで多少調子が悪くてもカバーできる」(大石)

 最近はSNSでそんな言葉に触れることがあっても動じることはなくなったという。速さも強さも手にした洛南が掴んだ夏の日本一。さらに目指すのは、2017年に洛南の和田遼、宮本大輔、井本佳伸、平賀健太郎という先輩4人で出した日本高校記録39秒57の更新だ。

「走っていて、とてつもない記録だと思ったけど、今日もかなりあったバトンミスを詰められれば、届かない記録じゃないと思います」(大石)

 王者・洛南にとっては、通過点の夏だ。

【洛南4×100メートルリレー優勝コメント】

1走田村莉樹「優勝したことはうれしいけど、1年生がここまでつないでくれたので、その分の気持ちも持ちながら走れた」
2走南本陸斗「素直にうれしいです。決勝は最後に3年生4人で走れたことがよかったし、つないでくれた田村に感謝したい」
3走山本嶺心「個人的に、去年と同じように個人種目がうまくいかず、リレーに懸けていたので連覇できてうれしかった」
4走大石凌功「2連覇を期待され、主将で4走を任される重圧で一時期は苦しい時もあったけど、チームの雰囲気に救われた」

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)