部活後に「毎晩8〜11時まで勉強」 偏差値70の桐朋から誕生、8種競技日本一高校生の思考【インターハイ陸上】
陸上インターハイの“文武両道アスリート”男子8種競技 桐朋・高橋諒(2年)
陸上の全国高校総体(インターハイ)が3日に開幕し、5日間にわたって熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は文武両道に励み、全国の大舞台に出場した選手たちをピックアップ。4、5日に行われた男子8種競技では、昨年度東大合格者11人を輩出した東京の進学校、桐朋・高橋諒(2年)が大会2連覇を達成。週5日の練習の傍ら、毎晩8〜11時まで勉強をする習慣があるといい、「近くにいる頭の良い人に自然と感化される」と明かした。
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五輪などの10種になると、勝者は「キング・オブ・アスリート」とも称される過酷な混成種目。8種競技の魅力を、高橋はこう語る。
「もし1種目に絞って、記録が伸びないことがあると、悩むこともある。でも、8種目あると、あまり練習ができない種目もあるんです。いわば、自分がゼロに近い状態。いろんな種目をやって、極めていないからこそ、どれも自分がちょっとずつ伸びていくのが楽しいんです」
2日間を戦い抜いて5992点を記録し、1年生に続いて大会連覇という快挙を飾った。
一橋大もほど近い東京・国立市にある桐朋は、偏差値70といわれる私立進学校。政財界、学者など多方面に人材を輩出し、作家・赤川次郎の母校としても知られる。昨年度は東大11人など、既卒を含め150人の国公立大合格者が生まれた。
高橋は、中学から桐朋の門を叩いた。
中学受験した3つ上の姉に影響され、小4から塾に通った。陸上はクラブに所属せず、個人で東京陸協所属で大会に出場。競技と並行しながら桐朋中に合格した。「校舎を見に行ったら、めちゃくちゃ綺麗で。男子校で雰囲気も良さそうだなって」と学び舎を選んだ。
競技で転機となったのは中1の冬。指導者のススメで4種競技に転向し、高い身体能力を持ったオールラウンダーの素質が花開いた。
内部進学した桐朋1年夏に出場したインターハイで高1歴代最高の5528点を叩き出し、いきなり日本一。「今年も歴代記録を狙いたかったけど、3月に肉離れをしたり、怪我が多い時期があった。記録を狙うには厳しくてもインターハイ1位、大会2連覇を狙っていた」との宣言通り、V2を達成した。
クラスには東大志望もいる環境「自然と感化されている」
8種目の練習をこなす過酷な競技。それでも、学業も手を抜かない。もともと勉強は「嫌いではない」。化学が好きで、成績も学年300人で上位30番に入る。
週5日の練習。平日は部活を終え、家に帰ると毎晩8〜11時は勉強に充てる。クラスには東大志望の同級生もざらにいる環境。「桐朋は、勉強する人はとことん勉強する。近くに頭の良い人、勉強する人がいると、自然と感化される」と笑う。
昨年10月に愛媛で出場した大会2日後に試験があり、苦労したこともある。両立は大変じゃないのか。そう問うと「もし、自分が部活をやっていなかったら、もっと勉強するかというと、そうでもない気がするので」とサラリと言ってのけた。
文武両道を貫くことのメリットは「切り替え」にあるという。
特に、その力は8種競技の特性ともリンクする。「8種目をやっていると、ダメな種目があっても、すぐ次に切り替えないと、負の連鎖でどんどん悪い方にいってしまう。1種目悪くてもあまり考えすぎずに。そこは勉強も同じ」と考えている。
現在2年生。卒業後は競技と両立できる大学を検討している。「将来の夢もはっきりしていないし、自分の就きたい仕事の業種も決めていない。それを大学で見つけたいので、いろんな分野が学べる大学に行きたい」と次のステージを思い描く。
まだ続く高校生活。極めるまでに道の長い8種競技の神髄を追い求めながら、高橋は自分自身を成長させることをやめない。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)