野球用品メーカーのフィールドフォースが開発した「勝手に整理整頓シート」【写真提供:フィールドフォース社】

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野球用品メーカー「フィールドフォース」が製造・販売

 見た目は極シンプルなシートが、少年野球の子どもたちや指導者の悩みを解決する。野球用品メーカーのフィールドフォースが、「勝手に整理整頓シート」を開発した。少年野球の現場から上がった声を商品化したもので、名前の通り指導者や保護者が指示しなくても、子どもたちが持ち物を自然に整頓する工夫が詰まっている。

 少年野球のグラウンドに行くと、必ずと言えるほど目にする光景がある。地面やブルーシートの上に、乱雑に置かれたカバンや野球用品。子どもたちは自分の荷物をどこに置いたか分からなくなってキョロキョロし、指導者からは「きれいに並べろ」、「いつまで荷物を探しているんだ」などの声が飛ぶ。見かねた保護者が荷物を整頓する。

 滋賀県にある少年野球チーム「多賀少年野球クラブ」では、荷物の整理整頓に工夫を凝らしていた。最初はブルーシートをそのまま使っていたが、正方形に近い形をしているため子どもたちは荷物を四隅に置き、真ん中のスペースが空いてしまう。そこで、ブルーシートを細長く切った。さらに、仕切りをつけて背番号を書いたシールを貼り、各選手が決められたスペースに荷物を置けるようにした。

 辻正人監督は「下駄箱のイメージでブルーシートに手を加えたら、子どもたちが自然と整理整頓するようになりました。無駄な時間が減って練習時間の確保につながります」と効果を口にする。ただ、解決できない問題があった。ブルーシートは折りたたんで収納するため場所を取る。また、風が強い時に杭を打って固定すると破れてしまう。

シート1枚で10人分のスペース 使用後は丸めてバットケースに収納

 辻監督の悩みを解決したのが、親交のあるフィールドフォースの吉村尚記社長だった。改良を重ねて「勝手に整理整頓シート」を完成させた。しわが付きにくく、強度が高いポリエステルの生地を厚めのコーティングで仕上げた。シートの四隅にはハトメを付け、強風の時は杭を打ち込めるようにした。

 長さ5メートルのシートには50センチ刻みでラインが引いてあり、10人が自分専用のスペースを使用できる。養生テープに背番号を書いて貼り付ければ、子どもたちが勝手に荷物を置く仕組みだ。そして、ポイントは82センチにしたシートの幅。一般用のバットと同じ長さのため、シートを丸めればバットケースに収納できる。

吉村社長は「学童・少年野球のグラウンドに行くと、整理整頓ができずに子どもたちが指導者に怒鳴られながら荷物を並べ直している姿をよく見かけました。子どもたちはストレスを感じていると思っていました」と商品開発の意義を語る。実際にシートを使っている辻監督は「ブルーシートの問題点が解決されました。子どもたちには『荷物置いて』と声をかけるだけです」と話した。

 練習や試合前に、選手も指導者もストレスになっていた荷物の整理。1枚のシートが問題を解決する。(間淳 / Jun Aida)